子会社社長就任、そして上場。山口氏が語るキャリアの創り方 PR TIMES 山口拓己社長(第2話)

「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」をミッションに掲げ、国内シェアNo.1のプレスリリースプラットフォームを運営する株式会社PR TIMES。2016年3月に東証マザーズへ上場し、2018年8月には東証一部への市場変更も果たした同社 代表取締役社長の山口拓己氏に、経営者としての素養や成長事業の創り方について聞いた(全4話)

好きなことを突き詰める

ーー証券会社、コンサルなどを経てベクトルに入社され、現在に至られています。様々な経験が現在の経営に生きている部分はございますか?

私が最初に入社したのは山一證券で、営業を担当していました。

当時は「1丁目から5丁目まで飛び込み訪問して、何度でも営業し続ける」みたいなことを来る日も来る日もやっていました。もちろん訪問したところで最初は断られるのですが、何度も訪問しているうちに影響力の武器でいうところの「返報性の法則」が働いて、話を聞いてもらえるようになり、やがて口座を開設していただける方が現れたりするのです。

そんな営業経験で、いま振り返ると私は相当鍛えられたのかなと思います。

 

ーーPR TIMESを広める上でも、そのような経験が活きたのでしょうか?

実は、PR TIMESでは証券時代とはまったく逆の営業手法をとっています。

PR TIMESの創業当初はフリーミアムモデルを採用し、高機能を使用する場合にのみ3万円、月額契約の場合は8万円という形をとっていました。しかし基本無料なのに、まったくお客様が使ってくれなかった。しかも無料を理由に使う方のなかには、プレスリリースとしての要件を満たさないものもあり、それを許してしまった結果、媒体価値が上がらず、サービスの質全体が落ちてしまいました。

そこで、フリーミアムモデルをやめて有料サービスに切り替えたのですが、PR TIMESで証券時代のようなゴリゴリの営業手法は選択しませんでした。理由はふたつあります。ひとつはド根性営業で事業を伸ばすと、利用価値が低いサービスを間違った顧客に売り込んでしまいやすいと考えました。もうひとつは、社員の内発的モチベーションを毀損しないためです。

そこでアポイントを取るまでの営業プロセスをアウトソースし、社員は企画提案や関係構築の部分にフォーカスしました。サービスに自信があって、顧客のために役立ちたいと思っているなら、アポイントが取れさえすれば、面会以降の工程は楽しいですからね。

自分たちが強みを発揮できることに集中して、他は思い切ってアウトソースすることでチームを少数精鋭に保つ。結果的に、東証一部に上場した今でも正社員は40人強しかいません。

 

あえて異業種に飛び込んでチャンスを掴んだ

ーーPRとはまったくの畑違いから、なぜベクトルに入社されたのでしょうか?

大きな軸として「インターネットで事業をつくりたい」とは考えていたものの、どの産業にするかは決めていませんでした。インターネットそのものがビジネスになる時代は終わっていたので、一つ決めていたのはインターネットがまだ影響を及ぼしていない分野でチャレンジするということです。

そして、アニメやハードウェア業界など、様々な会社を見る中で出会ったのがベクトルの「PR業界」でした。PRとは何かも知らなかったのですが、話を聞いていると業界はかなり属人的な労働集約産業。今でも、FAXを使って案内をして、記者会見を行なっているようなアナログな業界です。

どうやったらインターネットで業界が変わるかのイメージはなかったものの、大きなチャンスが眠っていると感じました。

 

ーーまったくの未経験業種で勇気もいったのではないでしょうか。

アウトサイダーだからこそ、常識にとらわれず、思考停止することなく挑戦できると考えました。

逆に、他会社で私と同じような経験を持つコンサルタント出身者がいるような企業では、入社してすぐにフィットする可能性は高いですが、本当にそれで大きなチャンスを掴めるとは思えませんでした。

一方で、西江さんをはじめとするベクトルの創業メンバーを見ると、私のようなキャリアを持つ人がいなかった。全くフィットしないかもしれないけれど、もしお互い違う者同士が信頼して、スキルを補完し合えればすごく大きいことが実現できるという可能性に賭けました。

急成長を続けていたベクトルにIPO責任者として参画して、3ヵ月後には取締役CFOに就任しました。ただ私の入社直後に業績に急ブレーキがかかります。取締役とはいえ、これまで頑張ってきた社員にとっては新参者の外様です。私が主力事業に何かして良い結果になることは皆無です。だから消去法的に新しい事業を生み出すしかなく、私にとってはIPOのサイドプロジェクトとして立ち上げたのがPR TIMESでした。もし仮にベクトルが2006年当時の計画通りに上場できていたとしたら、或いは私がCFOやIPO責任者という既成概念に縛られていたとしたら、今の自分もPR TIMESもなかったでしょう。

自分の選択軸や経験を大切にしつつも、思い切って未経験の空白地帯に飛び込んでみる。自分がわからないことでもできないことでも取り組んで、新しい経験を得て、常に変化し続ける。それが、私がキャリアで大きなチャンスを掴むことができた要因だと思っています。

 

 

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DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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