2022年7月東証グロース市場に上場 エアークローゼット天沼聰CEOが語る「起業家にとって重要な3素養」とは(第1話)

月額制ファッションレンタルサービス『airCloset』を中心に、サブスクの先駆け的存在とも言える株式会社エアークローゼット。2022年7月には東証グロース市場へのIPOも果たし、急成長を続けている。同社代表取締役社長 兼 CEO 天沼聰(あまぬま さとし)氏に起業家の素養、事業成長のポイントなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた。(全4話)

継続力・信じる力・好奇心

ーー天沼さんが考える「起業家にとって重要な素養」を3つ挙げるとするとなんでしょうか?

この問いは経営者ごとに違い、正解はありません。私自身、経営者になって8年くらい経ちますが、まだまだ正解を探している途中です。

その前提で、3つ挙げるとすると「継続力」「信じる力」「好奇心」です。

天沼聰(あまぬま さとし)/1979年生まれ 英ロンドン大学卒業後、2003年にアビームコンサルティング株式会社に入社し、IT・戦略系のコンサルタントとして約9年間従事。2011年より楽天株式会社 (現 楽天グループ株式会社)にて、UI/UXに特化したWebのグローバルマネージャーを務めた後、2014年に株式会社エアークローゼットを創業。2022年東証グロース市場への上場を果たす。

まず1つめの「継続力」は、グリット力とも言い換えられるでしょう。

起業・経営はうまくいくこともあれば、全くうまく進まないこともたくさんあります。山あり谷ありで精神的にきつい時も多い中で、いかに継続し続けられるか。この力が必要不可欠です。

2つめは「継続力」とも通じる部分ですが、「信じる力」。

まずは人を信じる力。なによりも自社の仲間を信じて、背中を100%預けられること。

加えて自分たちが作る未来やその必要性を信じる力。自分たちの夢やポテンシャルを誰よりも信じることが、結果的に「継続力」に繋がります。

3つめは「好奇心」。

経営にはこれという正解がありません。特に昨今はコロナウイルスの感染症などがいい例で、未来を正確に予測して手を打つという時代ではなく、変化への対応力が問われる時代だと思います。

そんな変化に富む時代に、重要となるのが情報に対してアンテナを張ること。その原動力となるのが「好奇心」です。

新しいことにチャレンジし、変化し続ける源泉としての「好奇心」がより重要性を増していると感じています。

 

“サブスクの先駆者” 続けてこられたワケ

ーーそれらの素養が大切だと思うに至った原体験などがあればお聞かせください。

月額制ファッションレンタルサービス「airCloset」は、日本に全く同様のサービスが存在しない状態の中で暗中模索しながら立ち上げてきました。

なにが正しいのか全く分からない中で事業を続けてきて思うのは、「続けてきたからこそ今がある」ということ。「信じる力」にも通じますが、続けていくことで応援してくださる方が増え、仲間が増え、事業も伸びていきました。

実体験として「継続力」がなくては、起業は成功しないなと強く思います。

「信じる力」に関しても、これまでの道のりを振り返ってみたときに、クライアント様や事業パートナー様、会社の仲間を自分自身が100%信じている時はすごく事業がうまくいっていたし、逆に信じられていない時はうまくいかなかった。

なので「まず自分から信じる」ことをすごく大切に経営しています。

最後の「好奇心」は生まれ持ったもの、そして学生時代の原体験に遡るかもしれません。

私は高校進学時に単身で海外に渡るなど「好奇心」をもとに行動した結果、様々な価値観を知ることができました。

今の会社の組織づくりで中心に据えているのが「一人一人価値観が違って、その全てが正しい」という考え方ですが、この考えを心底正しいと信じられるのも、価値観が違う場所に「好奇心」で飛び込んで生活してみたからこそだと感じています。

その成功体験があるから、今でも何事にも「好奇心」を持って、取り組み続けることができているように思います。

 

ーーサブスク型のビジネス先例が日本に無い中で、なぜ継続し続けられたのでしょうか?

手段よりも目的を大切にしてきたからかもしれません。

創業期から今も変わらず大切にしている目的として「お客様の時間価値を最大化する」というものがあります。

その目的を達成するための手段としてファッションレンタルのサブスクリプションサービスが生まれました。

ビジネスモデルやテクノロジーといった手段ではなく、目的を信じること。これが事業を継続する上で重要なポイントだったのだと思います。

 

ーー御社は3名で共同創業されています。共同創業者間で仲違いしてしまうスタートアップも多い中で、うまく継続してこられた理由があればお聞かせください。

実は最初から「3人で起業する」と決めていました。私は意見を出し合いたいタイプなのですが、2人だと喧嘩してしまうかもしれない。3人なら常にもう1人がバランサーになれるから、バランスが良いと考えました。

これまで3人で続けてこられた理由を挙げると、まずは「価値観の共有」。

私は前々職のコンサルファーム時代の仲間2人を誘って創業しているのですが、その2人を選んだ軸は「価値観が合っている」から。徹底的に価値観を共有しあった仲間だからこそ、少々の意見の違いは乗り越えられると考えました。

もう1つの理由は「3人は横一線ではなく、私が最後は意思決定する」と最初に決めたこと。要は「意思決定者の明確化」です。

価値観が近くても性格はバラバラなので、意思決定の選択肢もたくさん出てきます。それを望んで3人で起業したわけですが、「最終的な判断は私がする」ということだけは最初に話をして共同創業しました。

その代わり、意思決定権者を決めるということは、意思決定する私には決断に至った理由を残り2人が理解するまで徹底的に説明する責任があります。

全員が納得までは出来なくとも、合理的であると理解してもらう。そこまではとことん話し合うと、最初に3人で決めました。

まとめると「価値観の共有」「意思決定者の明確化」「説明責任を果たす」の3つが、複数人での共同創業を継続する上で重要だったと感じています。

 

 

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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