#インタビュー
月額制ファッションレンタルサービス『airCloset』を中心に、サブスクの先駆け的存在とも言える株式会社エアークローゼット。2022年7月には東証グロース市場へのIPOも果たし、急成長を続けている。同社代表取締役社長 兼 CEO 天沼聰(あまぬま さとし)氏に起業家の素養、事業成長のポイントなどについて聞いた。(全4話)
「循環型物流」を支える専門チーム
ーー御社の物流ロジスティクスのノウハウは非常に差別性に繋がっているのではないかと思います。事業の差別化を図るうえで工夫されているポイントがあればお聞かせください。
差別化する、というよりも、とにかくサービスをより良くしていきたい一心でやってきました。
サービスを良くしていく一つの要素として、物流ロジスティクスの要素が大事になることはサービスを考え始めた当初からわかっていました。レンタル型で返却が発生するのはもちろんのこと、返却されたお洋服をクリーニングし、また在庫として戻す独特の循環フローが発生するからです。
サービス開始前にサービスがうまく成長するための体制図を描いたのですが、最初から物流の業務フロー改善をミッションとする「物流チーム」をイメージしていたほどです。
ーー業務を担うのでは無く、改善することをミッションとしているチームなのですね。
例えばクリーニング。
クリーニング自体の品質や業務についてはパートナー企業様がプロフェッショナルでいらっしゃるので信頼をしていますが、『airCloset』との連携を考えた時には改善できる部分が多々あります。
私たちが改善の提案をしていくことで相乗効果が増すと考え、専門チームによってパートナー企業の現場に入り込み、改善活動を続けています。時にはクリーニングの現場に足を運び、実際に汚れ落としも実施しながら改善点を洗い出すこともしたりもします。
結果的として、私たちの「循環型物流」の仕組みは単なるパートナーシップを超え、物流の特許も取得できるほどの独自の形に進化しました。
必要だと思ってずっと続けてきたことが、結果的に差別性に繋がったという形です。
ーーまったく未知の業種の専門家であるパートナー企業に対して改善の提案をするのは難易度が高いように思います。なぜそれが実現できるのでしょうか?
まずは仲間に恵まれた部分が大きいと思います。
物流改善チームは元々コンサル業界でそういった業務改善の提案をたくさんしてきたメンバーが揃っています。ですので、改善視点をたくさん持っている。さらに言うと、コンサルでは改善の提案までしかできないもどかしさがある一方で、私たちのような事業会社であれば実行まで踏み込める。
そういう意味で非常にモチベーション高く、たとえ異業種であろうと改善提案から実行まで実現してくれるメンバーが揃っています。
もう1つのポイントが徹底的なデータ化です。
改善活動をした結果、それが良かったかどうかはデータで判断する。そのために徹底的に様々な角度でデータを取るようにしています。
例えばクリーニング一つとっても奥が深く、汚れの落ち方は水温や叩く強さ、浸す長さなど、様々なパラメーターの掛け算によって結果が変わります。
それらのデータをとって、汚れが落ちきらず再クリーニングする原因が何か、その比率をデータで取っておけば洗い方の改善に繋がったりする。
PDCAを回すために、そのベースとなるデータを持つこと。成功・失敗した原因を可視化することが、異業種の業務改善を実現するうえですごく大事なのかなと思います。
会社設立前に立てた行動指針「9 Hearts」
ーー先ほど「9 Hearts(ナインハーツ)」の話もありましたが、組織作りにおいて大切にされていることをお聞かせください。
「会社の文化、作りたい世界観・ビジョンへの共感」を最優先しています。
例えば私たちには「9 Hearts」という9つの行動指針がありますが、実はこれを作ったのは会社設立前なのです。
「法人格」を文字通りの人格と捉え、「行動に一貫性がない人は信頼されないよな」「だったら人格をしっかり作ろう」と創業メンバー3人で話し合ったのがきっかけでした。
別に正解ではないのですが、私たち経営陣が良いと思うチーム、法人格を表したのが「9 Hearts」です。私たちはこれに共感してくれる仲間を集めたいですし、継続的にこの指針を体現できる組織を作りたい。
ですので採用においては必ず会社のビジョンや「9 Hearts」への共感度合いを確認するようにしていますし、組織においても組織文化について見直すきっかけを意識的に作り出すようにしています。
例えば「ビジョンシェアリングday」。全メンバーを集めビジョンについて考えるだけでなく、そのビジョンの一部分を取り上げ、なぜそれが大事だと思うか議論し合う機会を作っています。
ほかにも「9 Hearts」のひとつに「全力で楽しむ!」があります。この真意は、すべての仕事にはビジョンに近づくための意味があって、その意味をちゃんと咀嚼して納得すれば、絶対どんな仕事も楽しいというものです。「全力で楽しむ!」ために、しっかりビジョンが腹落ちした状態で仕事をしようと伝えるようにしているのです。
組織とは共通の目的を共有した人たちの集まりで、社長である私も含めて組織全員がその目的に貢献するべきです。だからこそ、目的の部分を見直す機会を作ることが大切だと思っています。
ーービジョンを浸透させる上で経営者個人の言動として気をつけているポイントはありますか?
情報の透明性と情報発信です。
創業以来、毎週全社会議をしており、かつトップメッセージとして私自身が冒頭の18分間の時間を使って大切に思っていることを毎週話しています。毎回カウントしていて、この間359回目(取材時)でした。
会社のビジョン、行動指針に沿って会社は動くし、私たちも経営判断する。なのでそこに共感できなければ働きづらいですし、入社しても活躍することは難しいでしょう。
「会社の文化、作りたい世界観・ビジョンへの共感」を体現すべく、経営者として発信し続ける。これが組織作りにおいて最も大切なことだと考えています。
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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