計画最適化ソリューション『Optium(オプティウム)』 株式会社ALGO ARTIS 永田 健太郎社長が語る「起業家の素養」(第1話)

「社会基盤の最適化」を目指し、生産や配船といった極めて複雑な運用計画に特化した計画最適化ソリューション『Optium(オプティウム)』を開発・提供している株式会社 ALGO ARTIS。株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)の中で AI を活用する新規事業としてスタートし、2021年7月にスピンオフし設立された。同社代表取締役社長 永田 健太郎氏に起業家の素養、スピンオフなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの家弓 昌也が聞いた。(全4話)

顧客の利益と価値創出を根幹に

ーー永田社長にとって、起業家として重要な素養とは何でしょうか。

起業家として重要な素養は、ポリシーを持つこと、価値に真っ直ぐ向かうこと、そして正直であることの大きく3つだと考えています。

ビジネスではロジックを大切にしながら日々仕事をしていきますが、それだけでは不十分です。「そもそも何を達成したいのか」その目的を大切にすることがビジネス成功の鍵となると思い、「ポリシーを持つこと」を1点目に挙げました。

スタートアップを始めるときには「なぜこのビジネスを始める必要があるのか」を考えますよね。

その際に重要になるのは、ユニークであること。当たり前ですが、他人の模倣ではいけません。

これまで歩んできたキャリアのバックグラウンドだったり、起業家自身が持つ個性を大切にする。すると結果として、ユニークさだったり、社会として新しいことだったり、それが結果としてブルーオーシャンだったり、大きな価値を見つけることに繋がります。

世の中には頭のいい人がたくさんいて、多くのことは既に考え尽くされています。だからこそ、論理的に考えるだけではユニークなポリシーを持つことはできないと感じます。

永田 健太郎
宇宙物理学で博士号取得後、業務コンサルティング会社(株式会社インクス、現:SOLIZE株式会社)にてコンサルタントとして従事。2009年、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)へ入社し、事業管理、データマイニング、ゲーム事業、海外事業、オートモーティブ事業の立ち上げ等の業務に携わる。2018年、AIを活用した最適化に関するプロジェクトを開始。事業化の後スピンオフし、現在に至る。

 

ーー「価値に真っ直ぐ向かう」「正直である」という素養についても詳しく教えて下さい。

企業の存在意義は「世の中に価値を提供すること」であり、提供した価値の一部を我々が得るというのが商売の基本的なルールですが、これらはしっかりと意識していないと見失ってしまうことも多いです。

そのため、「価値に真っ直ぐ向かう」ことを常に基軸として持つことが重要だと思っています。

また、3点目の「正直である」ことは、見せかけではなく、顧客が実際に価値を得られるかどうかに対して誠実でなければならないということです。

AIやDXは、ブームであることもあり多くの人が「とりあえずやってみたい」という形で始めますが、実際にやってみたときに、それが本当に価値に結びつくかどうかは、顧客自身も見失いがちです。

自社の売上が上がっても顧客が価値を得られないというのは社会として良くないので、商売をする際にはそういった面に正直であることが重要だと思います。

顧客の利益と価値創出を見据え事業を進めることは、どんな起業家にも共通して言える重要な素養かなと思います。

 

ーーそれらの素養は、永田社長のこれまでの人生の中でどのように養われたのでしょうか。

特に重要だと思っている、最初に挙げた「ポリシーを持つこと」についてお話しします。

新規事業に関わる方には共感いただけるかもしれませんが、私自身DeNAの新規事業部門にいた頃に、様々な事業を考えては潰すという経験を積んできました(笑)。

今振り返ると恥ずかしいなと思うものも多いですが、そんな失敗の中で、ビジネスや技術のトレンドに振り回されていると中々うまくいかない、そういう考え方をしていてはどうにもならないと強く感じ、一旦全てを振り切りました。

自分が持っている、論理的に考えられる仮説を全て忘れ、まずはただただ真剣に顧客の話を聞くことに専念したのです。今ではその経験が、私なりのユニークなポリシーを持つ原点になったと感じています。

「3年後が見えない場所に飛び込む」異色の経歴になった理由

ーー大阪大学で博士号を取得され、業務コンサルティング会社でコンサルタントとして活動し、DeNAでは海外事業を担当されるなど、非常にハイレベルかつ珍しいご経歴をお持ちです。

ハイレベルかどうかはわかりませんが、変わった経歴だと思います。

そうなった理由は、キャリアパスをあまり考えず、その時々で自分が面白いと思ったことや、やりたいと思ったことに取り組んできたから。

例えば、理学で博士号を取得した時に選ぶ道として金融や戦略コンサル、もしくはエンジニアが多いと思いますが、就活の中で「リアル産業を現場に近いところで何とかしたい」という想いが芽生えたので、それ以外の道を選びました。

また、博士課程を卒業するまでの間、周りの人々が大手企業に就職することが多かったのですが、先に社会人になった人から「30年後が見えた」という言葉を聞いたんですね。

それを聞いて「怖いな」と思ったんです。

人生を振り返ると、学生時代までに3年後の未来が見えた瞬間はなかったと思います。私にとっては、その不確実性が面白かった。

そのため、就活の時は、「3年後が見えない場所に飛び込む」ことと「リアルの社会を支える仕事に寄与したい」というポリシーを大切にしていました。

その一方で、キャリアパスを特定しないことで、色々なことができるけれど特定の専門性を持たない「器用貧乏」のような状態にもなってしまいました。

しかし、起業するときは少人数で始めることが多いので、何でもやらなければならない状況になります。そのため、「器用貧乏」も意外と役に立ちました(笑)。

これは結果論ですが、DeNAで色々なことを経験させてもらったことが、今の私の活動にも活きていると感じています。

 

ーーDeNAへ転職された後、どのような経緯でALGO ARTISの創業に至ったのでしょうか。

2017年からの最後の4年間で、AIを使った新規事業の立ち上げに取り組みました。それにはかなり無茶な利益目標が設定されていましたが、一方で何をやっても良いという状態にもしてもらえました。

そのため、DeNAの得意領域であるエンタメではなく、前職(株式会社インクス、現:SOLIZE株式会社)に入社した当初からやりたかった「リアル産業を何とかしたい」という想い、そこに立ち戻って試行錯誤しました。

上司から「何でもいい」と言われたので、それを凄く勝手にポジティブに解釈して、思いつくままに自分がやりたいことを始めたのです。

それが、創業のきっかけです。

私のやりたいことに対してあまり何も言われなかったというのは、本当に上司に恵まれてラッキーだったと思います。

(次回に続きます)

 

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家弓 昌也

家弓 昌也

名古屋大学大学院航空宇宙工学修了。三菱重工の総合研究所にて、大型ガスタービンエンジンの研究開発に従事。数億円規模の国家研究プロジェクトを複数リードした後、新機種のタービン翼設計を担当。並行して、社内の新規事業創出ワーキンググループに参加し、事業化に向けた研究の立ち上げを経験。 2022年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。趣味は、国内/海外旅行、漫画、お笑い、サーフィン。

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