#志
ほぼ月刊、鈴木修の『スタートアップメンタリング回想録』 第6回 ”don’ts”は自由を奪う?
鈴木 修
Director
■はじめに
本シリーズでは、ベンチャーキャピタルDIMENSIONの鈴木修が日々行っている出資先スタートアップへのメンタリングを振り返りながら、主に組織や人の成長について思うことを書き連ねていきます。
これが唯一正しいということではなく、多様な見解が生まれていくきっかけづくりになればと思っています。
それでは、今回のメンタリング回想録をどうぞ。
※鈴木修のプロフィールはこちら
■”don’ts”は自由を奪う?(読了時間目安:5分)
全ての組織にはWAYやVALUEなど、社員の思考や行動をあるべき方向にガイドするような言葉が存在し、それは抽象的且つ肯定的な言葉で構成されます。
例えば、わかりやすい言葉の事例としてはこんなところでしょうか。
「挑戦しよう!」
「全力を尽くす」
「仲間を支えよう」
「効率を考える」
このように、組織はWAYやVALUEなど抽象的且つ肯定的な言葉で社員のあるべき思考や行動を示し、社員が目標や状況、自分の仕事の種類に合わせてその言葉を翻訳して自走することを目指します。
ということは、その示した言葉を社員それぞれが自分で翻訳し、やってよいこと(=”dos” )orやってだめなこと(=”don’ts”)を社員が自ら決める、組織はそれを社員に一任する、ということになります。
たしかに社員が自己翻訳して自走することを促すことは大切ですよね。
一方で、抽象的且つ肯定的な言葉の自己翻訳には、当然のことながら間違った自己翻訳も生まれてしまうのも事実。実際に、社員の間違った自己翻訳による間違った自走でマネジメントコストの増大や文化ストレスにつながっている会社は多くあるでしょう。
先ほどの言葉の事例でも社員の間違った自己翻訳が多々発生する可能性があります。この時、例えばマネジャーは心の中で次の()のような声を出していませんか?
■「挑戦しよう!」
→(いや、挑戦の前に当たり前のことをやってよ、、)、(いや、苦手なことにも挑戦してみてよ、、)
■「全力を尽くす」
→(いや、ただ時間を費やさずに効率は考えてね、、)、(いや、体調崩すまでやらないでよ、、)
■「仲間を支えよう」
→(いや、まずは自分がやるべきことをやってよ、、)、(いや、土足で介入しちゃだめだよ、、)
■「効率を考える」
→(いや、背景などちゃんと丁寧に伝えようよ、、)、(いや、効率と殺伐は違うよ、、)
あーわかるわかる、と思うマネジャーはきっと多いですよね。
そう、社員には自己翻訳をしてもらい、正しい方向へ自走してほしいのですが、その前に、自己翻訳うんぬんではなく、組織では”絶対的にやるべきこと(=”dos”) & やってはだめなこと(=”don’ts”)”があります。
その”絶対的にやるべきこと(=”dos”) & やってはだめなこと(=”don’ts”)”を遵守した上で、自己翻訳し自走してほしい、そうしてもらわなければならないのです。
そのことをふまえ、私はDIMENSIONの出資先のスタートアップに対してメンタリングを実施する際にはいつも、 WAYやVALUEとセットで、”dos & don’ts(べし & べからず)”を策定することを推奨(必須寄りの推奨)しています。
特に、”don’ts集(べからず集)”の策定を推奨しています。
■「挑戦しよう!」
→don’ts:やらなければいけないことを後回ししない
→don’ts:やったことがないことや苦手なことから逃げない言い訳しない
■「全力を尽くす」
→don’ts:体調を崩すまでやらない
→don’ts:上長承認を取らずに深夜や休日に稼働しない
■「仲間を支えよう」
→don’ts:自分のことを後回しにしない
→don’ts:相手の声を聞かず土足で踏み込まない
■「効率を考える」
→don’ts:背景や気持ちを排除しない
→don’ts:殺伐とした表情や言動をしない
※上記は、事例としてシンプルに振り切った書き方をしましたが、実際には組織ごとの現実に即した表現のdon’ts集にします。
don’ts集、それは上記のように実はとてもとても基礎的なこと。働く上での当たり前にやってはいけないこと。
いかがでしょう?
こういった当たり前のことを言う(言えずに悶々とする)マネジメントコストはとても大きいものですし、don’tsな行動が組織のいたるところで発生している組織では、社員同士の仲違いが起こり文化ストレスが発生していますよね。
don’ts集はマネジメントコストと文化ストレスを大きく軽減させます。
極端な言い方ですが、don’ts集さえ遵守すれば、社員には目標に向かい、いかようにでも自由に自走してもらって構わないのです。
don’tsは自由を奪うものなのでしょうか?
否。
don’tsは自由を正しく促進させるものであり、
don’tsはWAYやVALUEが正しく活用されるためのガイド役でもあるのです。
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今回の『”don’ts”は自由を奪う?』、いかがでしたでしょうか。
最後になりますが2点ほど。
まず一つ目、リフレーミングやアファメーションは、メンバーの気持ちの状態や成熟の度合いに応じて適切に活用することで十二分に効果が発揮されることは理解していますので、それをまるっと否定するわけではありません。
もう一つ、メンバーだけではなく、自分解釈(もっと言うと自分都合)でマネジメントするマネジャーが表立ってorひっそり存在していることもほとんどの組織で発生しており、これは別の大問題ですね。
この2点についても今後書いてみたいと思います。
本シリーズでは、このコラムにご関心のある方々のご関心のあるテーマについてお伝えできればと思いますので、もし何かテーマのリクエストなどございましたら、こちらまでお気軽にご連絡ください。
それでは、また次回。
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