DIMENSION NOTE スタートアップ/ベンチャー経営のための
ヒントやナレッジを発信

先達に学ぶー第1回 新卒の事業承継ー

「起業ノウハウ」について

はじめまして。国内ベンチャー投資ファンド・DIMENSION(ディメンション)の代表取締役の宮宗(みやそう)と申します。弊社が運営する起業家向けメディアDIMENSION NOTE(ディメンション ノート)に目を通して頂き、ありがとうございます。

私自身2002年からスタートアップへの出資・支援を行うようになり、累計9社の上場/MBOに携わってきました。また19年間で様々な起業家や経営者と仕事をしてきましたが、経営はある事を行えば必ず成果が出るという単純なものではありません。一方、自分よりステージが上で上手く経営推進・事業拡大されている企業や起業家・経営者の方からの「学び」、そしてその「具現化」を継続していれば、成果出しの確度は高められると、数多くの起業家を見てきた専門家として確信しています。

そこで「”経営に真摯に向き合う”方々に参考になる情報をご提供したい」という思いで、2017年にDIMENSION NOTEを立ち上げました。起業家インタビューでは、54名の起業家の皆様にご協力頂きながら記事を配信させて頂きました。その過程で、起業や事業拡大に伴う相談を多く頂くようになりました。

そうしたご相談や私共の出資・支援先とのエピソードの中で集まるナレッジを、出資・上場支援の仕事を通じて理解したポイントや体系的な内容に中心に、新しく「起業ノウハウ」としてDIMENSIONメンバーから定期的に配信していきます。 

「起業ノウハウ」で取上げる内容(例)

・起業
・増資・融資
・ 組織作り
・ 経営推進・事業拡大
・上場

初回は、私の駆け出しの頃の出資・支援先で、東証一部に上場された企業の取り組みをご紹介します。これから会社を大きくされようとしている起業家・事業推進リーダーにとっても、参考になるはずです。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

夢の翻訳機が大ヒット「ソースネクスト社」:新卒入社者が20年目で社長に

スタートアップの起業家は、事業拡大・上場を目指します。その実現だけでも大変なことですが、最も大変なのは「後継者の人選と育成」だと思っています。

近年、スタートアップには優秀な方が入社されるケースが増えた一方、そうした優秀な方が短期間で辞めてしまうシーンも多いように感じています。

そうした中、夢の翻訳機・ポケトークの大ヒットで社名が知られるソースネクスト社の新しい代表取締役社長に、2001年新卒入社の小嶋智彰さんが就任し、創業者の松田憲幸さんが代表取締役会長になる人事が2021年1月27日に発表されました。

同社は1996年設立、2006年12月に東証マザーズに、2008年6月に東証一部に上場されています。私が戦略コンサルタントとして仕事を始めたばかりの2003年に、経営支援で携わった出資先の1社で、その当時からお二人を知る者として大変うれしいニュースでした。

特筆すべきは、新卒入社の小嶋さんが継続的に活躍し続け、創業者の松田さんと新経営体制に移行されたことです。

抜擢人事と文化づくりの効能

なぜ、ソースネクスト社は、新卒入社のスタッフが2代目社長となる、理想的な新経営体制に移行できたのでしょうか。以下は、私がソースネクスト社とのやり取りを通じての所感になりますが、

・抜擢人事
・フラットな文化づくり

に創業者の松田さんと経営陣が注力し続けたことが、ソースネクスト社で優秀な若手の採用・定着・成長に大きく貢献しているように感じています。

松田さんは、最初の就職先で、”若い”という年齢だけで、評価されない、昇格できない事に大きな不満を持っていたそうです。20代でも役員になれる会社を目指し、1996年にソースネクスト社を起業されます。

2001年の新卒入社後にすぐ頭角を現した小嶋さんに、松田さんは海外メジャーとの交渉を一任。小嶋さんも期待に応える形で、交渉をまとめ契約を獲得。事業拡大に大きく貢献し、入社5年目の20代で執行役員、その2年後に取締役に昇進されます。

そうした抜擢人事と並行して、

・「さん」付けでの呼び合いの徹底。年功序列や年配者を気にしての萎縮の抑制
・年齢、性別、国籍にかかわらず成果を出した人が評価される仕組みの導入
・経常利益に応じた報酬分配
・役員会は「お友達内閣」にしない

など、フラットな文化を具現化し社内に示し続けたのも、優秀な方の定着・成長につながっているように感じています。

また小嶋さんのお人柄もあると思いますが、小嶋さんを自分の上司に育てた年上役員の方の存在も大きかった印象です。その方は今もソースネクスト社で役員として活躍されています。

印象的なTVCMと副次的効果

加えて、ソースネクスト社が1999年に、民放の看板番組のスポンサーになってTVCMを打ちだしたことも優秀な人材が集まるきっかけになったようです。

1999年当時は、同社の社員数は30名ほど。ブランド力が無いため、TVCMを打つぐらいでないといけないとの松田さんの強い思いがあったそうです。

今では、大きな資金調達をしたスタートアップがTVCMを打てるようになりましたが、当時は大変珍しい取り組みでした。当時のプレスリリースTVCMの動画は、まだネット上で見ることができます。今見てもインパクトがあります。本CMは、電通からスピンアウトしたばかりのタグボート社が制作。当該社の最初の仕事になったそうです。

3年分の利益を投入したTVCMは大ヒット。本CMはACC(全日本シーエム放送連盟)の銀賞を受賞し、製品も社名も広く知られるようになります。

このTVCMの効果もあり、新卒採用を決めた年に7,000名をこえる履歴書が届きます。そのうちの1人が直近社長になられた小嶋さん。当時の尖ったTVCMをみて、「面白いことができそう」と感じ応募したとのことです。

また小嶋さん以外も優秀な方が多く入社。今のソースネクスト社の役員は、当時の新卒入社の方が何人もいらっしゃるのが特徴です。

人・組織は企業の根幹にあたります。自社の大胆な取り組みや成果を一過性のモノにせず、仕組みとしてどう自社に定着できるかが企業成長を左右します。

ソースネクスト社は、新しい製品・サービスを生み続けると共に、「抜擢人事」や「フラットな文化づくり」に注力し、新卒で入社された方が活躍し入社20年目に2代目社長となる、理想的な経営体制に移行されました。

公器の器として、こうした良い循環をまわしていけるスタートアップが日本でもたくさん生まれる事を強く願っています。また我々も「真摯に経営に向き合う起業家」への出資・支援に取り組むことで、より良いスタートアップが生まれる社会づくりに貢献していきます。

 

※ソースネクスト社の取り組みついてより詳しく知りたい方は、2019年12月発刊のソースネクスト社松田憲幸会長の著書「売れる力」(ダイヤモンド社)を参照くだい

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Cxo Story CxOのインタビューはこちらでお読みいただけます