ほぼ月刊、鈴木修の『スタートアップメンタリング回想録』第2回 フラットな組織は階層のない組織?(前編)

著者 鈴木修

著者 鈴木修

Director

はじめに

鈴木修です、こんにちは。

DIMENSIONの出資先企業のバリューアップ、それを僕のメインミッションの一つとして、日々スタートアップへのメンタリングを行っています。

僕自身、2000年頃からスタートアップ(が飛躍成長しメガベンチャーになっていくプロセスを含めて)の世界に長く生息してきたこともあり、それぞれの出資先スタートアップがそれぞれにこれから遭遇するであろう幾多もの出来事を線形で既視感を持ちながらバリューアップストーリーを描いています。

メンタリングトピックはMVVから戦略から組織から資本政策に関することまで、中長期から直近のことまで、構想を描くことから実務レベルで解決していくことまで、多様です。

また、何か解決すべき決まったアジェンダがあるということだけではなく、スタートアップ経営者やCxO陣のよもやま相談にも乗らせていただいています。

スタートアップが絶え間なく遭遇するいわゆるHard Thingsを乗り越えていくために、対コト、対ヒト、双方に向き合いバリューアップの支援を行っています。

本シリーズでは僕が実際に行ってきた(行っている)メンタリングを回想しながら、主にスタートアップの組織進化についてのエッセンスを書き連ねていきます(どうしても具体な内容は控えなければならないところが多々ありますのでご了承ください)。

シリーズタイトルにあるように、ほぼ毎月、をイメージしていますが、時には月に複数、時には2-3ヶ月の間を置かせていただきながらのシリーズです。

このシリーズは、このエッセンスが唯一正しい、ということではなく、このシリーズをきっかけに多様な見解が生まれていくきっかけづくりを願いつつ書き連ねていくシリーズであり、そうなってくれるととても嬉しいです。

それでは、今回のメンタリング回想録をどうぞ。

 

フラットな組織は階層のない組織?(前編)

「フラットな組織を目指しているので“階層”はつくりたくないんです。」
「“階層”をなくしてひとりひとりの主体性を強めたいんです。」
「自分(経営者)で組織全体を見られているので“階層化”したくないんです。」

メンタリングではこういった声をスタートアップのみなさんからとても多く耳にする。
一時期、ある組織論が流行った頃は特に多かったような。

そしてその度に、
「階層をつくることでどんな問題が発生することを想像しますでしょうかね?」
と聴いてみると、こういった声が。

階層化すると、
「情報伝達の速度が落ちる」
「情報が間違って伝わってしまう」
「指示される側が生まれて主体性がなくなってしまう」
「ボトムアップがしづらくなる」
「メンバーの声が聞こえなくなる」
「経営陣から現場が見えなくなる」
「マネジメント層の属人的な力量に影響を受ける」
など。

たしかにそれ自体は大きな組織課題であり、多くの組織が経験する課題。
(多くの組織、ではなく、全ての組織、と言っても言い過ぎではない)

けれど、そういった組織課題の発生原因は“階層”なのだろうか?

たとえば、
「情報伝達の速度が落ちる」
「情報が間違って伝わってしまう」
という問題について少し考えてみると。

まず、部門やグレードなどに関係なく全社全員に同質均一にすぐに伝えたい情報。
これは仮に階層をつくったとしても、階層を順々にコミュニケーションせずに一気に伝えるべきであり、それはできる(言うまでもなく、チャットやオンラインMTGなどの即時共有手段も多々ある)。

一方で、部門やグレードごとに、メンバーそれぞれに自分ごととして伝わるよう翻訳しながら伝えるべきことはどうだろう。
僕は、組織における情報の多くは、それぞれのマネジャーが自らが率いる部門やグレードごとの特性にあわせて適切に情報の翻訳を行い、それをスピーディーにメンバーに伝達していくことが必須と考えている。
その翻訳伝播をスピーディーに行わないと、部門やグレードによっては、その情報をいわゆるジブンゴト化できないorしづらい状態になって、伝わるべきことが伝わらない。
経営からの情報発信が空振りや暖簾に腕押しするシーンを多々見てきていてそれを見たときはとても気持ちがしんどくなる(もはやこのしんどさへの耐性もついてはいるけれど)、、、そしてその原因は往々にして、先に書いたようなマネジャーが高速翻訳伝播できていない、ということにある。

マネジメントの能力と機能のさせ方。

そう、情報伝達の速度や質に関する問題が発生するのは、“階層化”ではなく“マネジメントの能力と機能のさせ方”に起因する問題ではないだろうか。

もうひとつ、
「指示される側が生まれて主体性がなくなってしまう」
ということについて。

まず、何に対してのどんな主体性が必要なのだろう?
この主体性の解像度をもう少し上げてみる。

マネジャーはチームがある期間で達成すべき目標を決め、メンバーひとりひとりがその目標を理解するようコミュニケーションし、その後は、その達成に向けて刻々と環境や状況が変化する中で、メンバーそれぞれが自らの役割を適切にとらえ自らの力の発揮を考え続け実行し続ける、それに対しマネジャーはあらゆる手段で前進を支援し、チーム全員で目標達成に集中するチームづくりをする。

その「その達成に向けて刻々と環境や状況が変化する中で、メンバーそれぞれが自らの役割を適切にとらえ自らの力の発揮を考え続け実行し続ける」ということをメンバーひとりひとりに主体的に行ってほしい、ということなのではないだろうか。

それでは、メンバーが主体的ではない状態、そこにはどんな要因が?

そもそも目標が何らか間違って理解されている、刻々と変化する状況をキャッチアップできていない、チームの中における自らの役割を認識できていない、役割を認識はできているが力の発揮の仕方が上手じゃない、自らの力の得手不得手や出力値を客観的に把握できていない、成長させなければならない能力があるがそれを理解できていない、達成への執着のばらつきや自分ひとり力を抜いても問題ないであろうというメンタリティ、こういった状態が存在する時ではなだろうか。

(あえて書いておくと、マネジャーがメンバーの話を全く聞かない言わせない、マネジャーが思考の癖的にもしくは感情的に全否定する、マネジャー自身が保身や怠けで対目標にまっすぐにコミットメントしていない、などの論外なマネジャー素養の問題によりメンバーの主体性が失われるという現実があることはとても残念)

さてこの事象、“階層”をなくすことで解決するのだろうか?
やはりこれも、“階層”の問題ではなく“マネジメントの能力と機能のさせ方”に起因する問題であろう。

(これも加えるならば、マネジャーとしての適格性=マネジャーへの登用判断の問題もある)

同様に、
「ボトムアップがしづらくなる」
「メンバーの声が聞こえなくなる」
「経営陣から現場が見えなくなる」
こういった声も、まずは階層うんぬんは置いておいて、その事象を直視しその原因を掘っていくと、実は、“階層化”とは別のところに根本的な課題があることがほとんど。

その根本的な課題の一つに、“マネジメント”に関わることが存在していることがかなり多くある。

と、このままではマネジメントの話になってしまうので、このマネジメントの話についてはまた別の機会に。

さて、話を戻して“フラットな組織と階層”。
次回、「フラットな組織は階層のない組織?(後編)」につづく

 

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