#起業
経営者は全てがぶっつけ本番 起業ノウハウ特別編 DIMENSION 社外取締役 和田洋一編(後編)
「真摯に経営に向き合う起業家」に向き合い、資金面以外にも多面的な経営支援を提供することを特徴とするDIMENSION。今回は起業ノウハウ特別編として、これまで大企業の代表取締役を20年近く、現在はスタートアップや上場企業の取締役・社外取締役としても多くの企業の成長を見てきたDIMENSION社外取締役 兼 投資委員会メンバーのうちの1人である和田洋一に経営者として重要な素養、成長するスタートアップに共通する経営組織の構築方法や、経営指針について話を聞いた。(全2回)
経営者は全てがぶっつけ本番。やることは全てやる。
ーー和田さんは元々、證券会社からキャリアをスタートされており、勉強しながら当時CEOのポジションになられたと推察します。その時は、どういったインプットをされていたのでしょうか?
もしかしたら、取締役のジョブディスクリプションがあって、そこに向かって積み上げて準備する世界観を想像しているかもしれませんが、そんなものはない、というのが私の意見です。
経営は全てがぶっつけ本番です。思いつくことすべて実行します。思いつかないのであれば、社長業は難しいでしょう。思いついてもできないのは、それもまた難しいでしょう。
「思いついたことを全部やる」。これはすべての経営者が持っておくべき心構えだと考えます。
もう一つは、求められたことをやるのではない、ということです。
なぜなら、誰も何も指示してこないからです。
誰かに言われたことをやる機会は、社長ポジションではゼロと言えるでしょう。
私も過去、どうやったら上手く物事が進むか迷うことはありましたが、AさんとBさんから言われていることが違う、どうしよう、などといった社員時代のような悩みはありませんでした。誰かに遠慮することなく、とにかくどうしたら事業を成長させられるか、そのために必要な行動は忖度なく全て実行する。創業者と同じマインドセットを持っていました。
私の周りを見ていても、創業社長とサラリーマン持ち上がり社長とでは、事業家としての類似性はあれどもトップとしての類似性はほとんどありません。
全てがぶっつけ本番な中で、思いついたことを全て実行する、そういった創業者意識が重要です。
最初の人事戦略にも繋がるところですが、創業社長にせよそうでないにせよ基本的には当事者意識を持つ人でなければトップになってはなりません。いかなる場面でも当事者として、自分が事業の主体だと思っている人がやるべきです。
大企業では、社長がただの「偉い部長」に過ぎない場合があります。社長に当事者意識が欠けていても、既に組織体制がしっかりしているため倒産することはないものの、変化に弱く業績も伸びづらいと思います。
和田 洋一 / 1959年生まれ
東京大学法学部卒業。1984年、野村証券入社。2000年、株式会社スクウェア入社。2001年、同社代表取締役社長兼CEOに就任。2003年、エニックスと合併し株式会社スクウェア・エニックス(現・スクウェア・エニックス・ホールディングス)を発足。2003年~2013年、同社代表取締役社長を務める。社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)会長や、経団連の著作権部会長なども歴任。2016年藍綬褒章受章。社外取締役を務める上場企業は、株式会社オープンアップグループ、カバー株式会社、株式会社マイネット、ワンダープラネット株式会社、株式会社クラシコム。
ーー理想の役員層を集めるプロセスで参画の可能性を高める方法や、成長に適したチームを築いていると感じるスタートアップの特徴にはどういったものがありますか?
発信が上手な会社、という共通項があります。ただ、上手な発信のノウハウとなると難しいですね。
例えば、以前社外取締役を務めていた企業の社長は、独自見解をどんどん発信していました。業界内では「彼は次に何をやるのだろう」といつも注目を集めていました。
ただこの例を話しても、彼ほどのブログを書けるか、というとそういった人はごくわずかでしょう。
そのため、一般論としては「上手くやる」としか言えません。
不親切なので補足すると、何事も目的から逆算することが重要です。
自分が発信する情報を誰に届けたくて、そういった人はどんな媒体でどんな情報がほしくてその媒体を見ているのか、それを考え抜くのです。そこまでならできますよね。
もう1つは伸びている産業に身を置いていることです。
例えばスマホゲームが盛り上がり始めた頃は、少々の困難があっても、人材が集まり急成長できました。
最近ではVTuberや生成AIといった領域で挑戦している起業家にとっては、成長に適したチーム作りや、メンバー集めがしやすい環境になっているかと思います。
成長は七難隠します。
スタートアップ経営に向き合う覚悟があるかどうか
ーー和田さんがあらゆる企業を見てきた中で、スタートアップが直面する落とし穴、困難などを乗り越えるためのポイントやコツがあればご教示いただきたいです。
まず認識すべきことは、乗り越えがたい問題は必ず生じる、ということです。
問題が発生した際に、過剰に反応したり、組織崩壊を引き起こしたりする企業を多く見てきました。
しかし、初期段階では、そもそも構造化ができていないので、問題を回避する仕組み、また問題が起きた際に解決する仕組みが整っていません。問題が起こり、拗れるのは当然なのです。
スタートアップがこれらの困難を乗り越えるためには、最初に意思を固めているかどうかがポイントになります。
どうしてもその事業をやりたいという意思や、コツや戦術ではなく心の底からの覚悟がないと、乗り切ることは難しいでしょう。
覚悟を決めて始め、困難に遭った際には、始めるときに誓ったからやるしかない、と思うしかありません。
それができたのであれば、残りはテクニック論で埋められる部分も多いので、色々な人の力を借りながら、外部からのアシストで態勢を整えていくことができます。
ーーそういった「決める」という行動がなかなかできない人もいると思いますが、これまでの人生において、和田さんは「決める」ということに対するハードルをどのように乗り越えてきたのでしょうか?
小さなことからでも、日常的な習慣にしてしまうことです。例えば「5秒ルール」なんてのもありますね。
そもそも自分が面倒な努力をしようかどうか迷っているのであれば、その時点で、既に努力する気があるはずです。であれば悩んでいる時間は無駄であり、とにかく決めて行動を起こせばよいのです。
同時に後悔しないための訓練も大切です。確かに悪かった点については反省する必要はありますが、いつまでも引きずるのではなく、切り替えることも重要です。
決めること、そして後で引きずらないこと、これらは訓練で鍛えることができます。
ーー最後に20~30代の起業を目指す方、経営者や起業家の方々へ向けて和田さんからのアドバイスやメッセージをいただけないでしょうか?
スタートアップの経営には本当に色々なことが起こります。
何があってもやり遂げる覚悟はありますか?それがあるなら、やらないという選択肢はありませんね。
覚悟の上で事業を立ち上げ、推進していくのであれば、それは世の中にとって大変価値のあることです。今、他の人が誰もやっていない、世の中にまだないものを創っていくのですから、大変尊いことです。
全てのスタートアップに頑張っていただきたいですし、それに付随するアシストを私自身も継続的に行っていきたいと考えています。
>前編「経営は「人に始まり人に終わる」 成長するスタートアップに共通するポイントとは」はこちら
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