#起業家の素養
投資家目線での資金調達のリアル 第3回 デューデリジェンスから調達完了まで
はじめに
皆さま、こんにちは。
国内ベンチャー投資ファンド・DIMENSION(ディメンション)のビジネスプロデューサー 古家(ふるや)と申します。
この度は、我々の起業家向けメディア「DIMENSION NOTE」に訪れていただき、ありがとうございます。
検索をすれば大抵のことは知ることができる時代ですが、その最先端をつくるスタートアップ業界の現場事情はなかなか知れないもの。かく言う私も、キャピタリストになる前にスタートアップやVC業界を調べたつもりでしたが、転職してみて1割も知れていなかったことに気づきました。
本コラムでは、投資家目線での考えを交えつつ、リアルな資金調達の解説をします。
特に、初めての起業や資金調達をされる起業家にも分かりやすい内容としているので、こちらを読んで資金調達成功へ1歩前進していただければと思います。
※ ファンドやキャピタリストごとにスタンスや方針は異なります。よって、この内容がどのVCに対しても必ず当てはまるわけではないことはご容赦ください。
前回は、実際にどんな面談が行われているのか、どんなことを準備・理解しておくとよいかを解説させていただきました。
今回は、初回面談後の進め方を解説しますので、知識の足しにして有意義な面談にしていただければ幸いです。
デューデリジェンス ~ 投資委員会まで
初回面談にて前向きに話が進んだ場合、デューデリジェンス(DD)に進みます。
まず、初期的なDDのための資料共有です。
必要に応じてNDA(秘密保持契約)を締結しましょう。ほとんどのVCはNDAのひな形を持っているので、すぐに締結手続きは完了します。
但し、前回ラウンドでNDAの締結をしているからと油断すると、契約の有効期間が定められていることが多いのでお気を付けください。
私がいつもご共有をお願いする資料はこちらです。
1)ピッチ資料
2)損益計算書・貸借対照表の月次推移表 (エクセル_直近2年分)
3)決算書 (PDF_直近2期分)
4)事業計画 (エクセル_IPOまで)
5)KPIの月次実績と計画 (エクセル_過去1年と今後3年分)
6)資本政策表 (エクセル)
7)組織図 (指定なし)
シード期であれば上記資料がまだなくても問題ありません。一方、アーリー期のBtoBビジネスを展開されている場合は既存顧客リストや営業進捗一覧などの追加依頼をさせていただきますが、基本的には社内で利用されているものそのままで大丈夫です。
また、共有方法は起業家側で普段利用しているクラウドに共有用ファイルを作っていただき、アクセス権限を付与いただくのが最も便利かと思います。資料のアップデートも簡単にできます。
上記の資料を基に初期的なDDを行い、社内協議にて前向きに進める場合、投資委員会メンバーとの面談や本格的なDDに移ります。
本格的なDDでは、より詳細な財務資料や定款など細かく資料を共有いただく他、ユーザーへのインタビューなども行います。
また、工場やオフィスの実地踏査、プロダクトをレンタルさせていただいたり、課金して会員となってのユーザー体験も行わせていただいたりします。その上で、Q&Aシートや短時間のオンライン面談を繰り返し、徹底的なDDをさせていただきます。
なお、DIMENSIONでは東証審査部経験を持つ弁護士による上場審査目線での法務DDや、専門機関による知財DDも行っています。
これら法務・知財DDは出資判断の材料という側面より、「事業成長の阻害要因を早期に発見し、解消する方法を調査」する意味合いを強く持っています。
もちろん、これらは出資先スタートアップへすぐにお伝えし、専門家のご紹介までしております。
以上のDDを行わせていただき、投資委員会に至ります。
投資委員会 ~ 入金まで
投資委員会では、細かな出資条件を確定します。
承認後、条件を含めた正式な出資オファー(リード投資家であればタームシート)をご提出します。
起業家は各投資家のタームシートとファンド特性や人、得ることができるネットワークや知見を鑑み、最大限事業成長に寄与する投資家を選定致します。
この際、金額やバリュエーションのみで選ぶことはおすすめしません。ファンドの償還期間、出資する目的(事業シナジー、純粋な投資リターンなど)、ファンドTopの性格や考え方、担当者の特徴など、総合的に見て投資家をお選びください。上場までの長い期間同じ船に乗り、良き相談相手になってくれる投資家かどうかが重要です。
投資家が決まったら出資実行までの手続きに入ります。
一般的にスタートアップの第3者割当増資による資金調達は、普通株式・J-KISS(新株予約権)・優先株式の3種類があります。
簡単な特徴は以下。
- 普通株式:
創業ラウンドやエンジェルラウンドにて資金調達にて用いることはあるが、比較的普通株式による調達は少ない。 - J-KISS:
次回ラウンドに一定の条件のもとで株式に転換する新株予約権。企業価値評価や契約内容の協議を先延ばしにでき、スピーディーに契約できるためシード期に多い。 - 優先株式:
VCからの資金調達において最も一般的。解散・売却時の株式の取り扱いや取締役指名権等、様々な条件を設定できる。
※最近はあまり耳にしませんが、極端に起業家が不利な条項が無いかご注意下さい。お金を払って、専門家に見てもらってもよいと思います。
特に優先株式においては発行元企業、既存投資家、新規投資家全員の合意を取らなければならないことが多く、1カ月以上の時間を要することもあるため注意が必要です。(契約書についてはまた別の機会にご説明いたします。)
また、新株発行に伴い、定款の変更や臨時株主総会の開催が必要になります。既存株主の数や定款の内容にもよりますが、招集通知を発送してから委任状を回収して臨時株主総会を開くまでに1週間ほど要します。
これらの手続きが完了し、払込日に入金が確認できればようやく資金調達は完了です。お疲れ様でした。(登記等の事後手続きもお忘れなく)
おわりに
ここまで3話にわたって資金調達について解説させていただきました。これから資金調達を始めようとしている方にとって、少しでもプラスになっていたら幸いです。
- 前回までの記事(第1回 VCとの出会い方、第2回 VCとの面談)
次回、何について記事にするかはまだ何も考えていません。
これからも起業家にとってプラスになることを書ければと思っていますので、もし何かテーマのリクエストなどございましたら、こちらまでお気軽にご連絡ください。
また、資金調達に限らず、何かご相談ごとがあればFacebookよりいつでもご連絡ください。
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