
#経営戦略
ほぼ月刊、鈴木修の『スタートアップメンタリング回想録』 第6回 ”don’ts”は自由を奪う?

皆さま、こんにちは。
独立系ベンチャー投資ファンドDIMENSIONの加藤と申します。
私は、昨年4月に山陰合同銀行(島根県)からDIMENSIONに出向し、現在ビジネスプロデューサーとして投資先の発掘、出資先のご支援をしています。
こちらの「起業ノウハウ」では、普段起業に役立つ知識や、スタートアップが事業拡大する上で役立つノウハウをお届けしており、私からも何か皆さまのお力になれることはないかと考えた結果、本業であるデットファイナンスについてお伝えさせていただくことなりました。
資金調達のテクニカルな話ではなく、どのようにすれば金融機関との会話をスムーズに進めることができるか、融資担当者の視点でお伝えしたいと思います。
なんだ偉そうにと思われるかもしれませんが、相手の視点に立って物事を進めることで何か気づきがあるかもしれません。本稿が資金調達の一助になれば幸いです。
では早速、下記融資フローに従い、ステップ毎のポイントについてお伝えできればと思います。
※ 金融機関ごとにスタンスや方針は異なります。よって、本内容がどの金融機関に対しても必ず当てはまるわけではないことはご容赦ください。
皆さんは融資を検討する際、どのような基準で金融機関を選ぶでしょうか。
知名度、紹介、距離、預金口座など様々な理由があると思います。
現在融資の相談窓口は、政府系金融機関、都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合、ネット銀行などありますが、創業資金では日本政策金融公庫、大型の資金調達なら都市銀行など、どのような融資を受けたいのかによって相談すべき金融機関は異なります。
まずは融資を受ける目的を定めた上で、相談する金融機関を決めましょう。
では、相談する金融機関が決まり、面談当日、会話をスムーズに進めるために何を気を付けたらよいか、ポイントをご紹介します。
■ポイント① 資金使途と返済原資は明確に
融資において資金使途と返済原資は極めて重要になります。なぜなら、融資によって返済原資が生み出せないようであれば、融資できないからです。
なので、運転資金として借りるにしても、運転資金の発生原因や資金ギャップが今後どうなるかなどの説明が必要になります。
また、資金使途と返済原資によって融資形態が決まります。
例えば、運転資金は、証書貸付という長期で返済をかけていく形で調達されることがありますが、運転資金の性質によっては、返済のない期日一括型や融資当座貸越のような融資枠を設定するような融資形態もあります。
なので、資金使途と返済原資を明確にしておくことで、その目的に合った融資形態で申し込むことができるのです。
■ポイント② できる限り定量化する
金融機関とお付き合いのある方はお気づきかと思いますが、融資担当者は定量的な数字が大好きです。
理由は簡単で、決裁者に対する説明が楽だからです。
一つの稟議書に、支店内だけでも3、4人、本部決裁だと更に3、4人と多くの人が関わるため、数字での説明が手っ取り早いのです。
なので、現在の状況、今後の施策についても、定量化できるとことはできるだけ定量化することで、担当者との会話もスムーズにいくかもしれません。
■ポイント③ 必要書類の準備・試算表は直近分を準備
融資相談時に必要な書類は以下の通りです。これらの資料が準備できていると一定議論ができます。
必要書類のうち、試算表はできるだけ直近のものを提出するようにしてください。前月分があればベストです。直近の試算表が3~4か月前になっていると、バックオフィスの弱さを露呈してしまい、マイナスの印象を与えてしまいます。
また、当然ですが、自社のビジネスモデル、サプライチェーン、強み、今後の計画などはスムーズに答えられるようにしておきましょう。
■必要書類(最低限)
– 決算書一式を直近三期分
– 直近の試算表(直近とその前年同月分)
– 資金繰表
– 事業計画書
– 顧客リスト(金額、期間、時期など記載)
– 設備投資であれば見積書、不動産購入であれば不動産関連書類一式
– 許認可証の写し
審査において最も重要なのが、「格付」です。金融機関は格付によって融資可否、融資条件などを決めています。
では格付とは何か?格付は、取引先企業を正常先~破綻先などにランク付けする仕組みです。金融機関は回収できないリスクに備え、格付のランク毎に引当金を設定しています。格付が良くない先は当然引当金の設定率が高く、業績に直接影響してきます。
なので、かなりシビアに審査することになります。では、どのように審査をしているのでしょうか。審査項目は多岐にわたるので、いくつかポイントをピックアップします。
■ポイント① 不良資産チェック
審査するにあたり、必ず行うこととして不良資産のチェックがあります。BSを正確に把握するために、資産に不良化しているものがないか調査します。
基本的に決算書3期分いただくので、ほとんどの不良資産はすぐにわかります。
なので、万が一不良化しているものがあれば、要因や回収見込みなど事前に説明しておいた方がスムーズだと思います。
■ポイント② 経常収支比率が100%以上かどうか
経常収支比率とは、キャッシュベースでの会社の収支です。
借入金返済や投資による減価償却費などは含みませんので、企業活動による現金収支になります。経常収支比率が100%以上であれば収支がプラスで、100%未満なら収支がマイナスとなります。
本指標は企業の資金繰りに影響するので、例え損益がプラスとなっていても、経常収支比率が100%未満となっていれば気になります。
一過性であればいいのですが、2期連続で100%未満となった場合には、質問される可能性が高いので、原因の究明と対策が必要になります。
■ポイント③ 返済能力
返済能力は、現状のキャッシュフローで有利子負債を何年で返済できるかという考え方があります。
この考え方の場合、有利子負債の償還年数が一定の範囲内であるかどうかがポイントとなります。
設備資金の借入により償還年数が長期となる場合は説明がつきやすいのですが、借入の大半が運転資金なのに償還年数が長期となる場合や赤字が続いている場合などは、改善策や今後の計画の説明が必要です。
融資後、金融機関とどのように付き合えばいいのでしょうか。
財務内容が良く、資金需要のない企業であればいいのですが、スタートアップなど今後更なる資金が必要な企業は、融資後の付き合い方は重要になります。
銀行と付き合う上でのポイントについてご紹介します。
■ポイント① 業況やインシデントはこまめに報告する
金融機関への情報開示は、ぜひ積極的に行ってください。
良い情報はもちろん、悪い情報こそスピーディーかつ正直に報告した方がいいです。トラブルが発生した場合でも包み隠さずに報告することで、金融機関としても対策が考えられますし、会社の信頼も高まります。
よくあるのが、困ったときだけ泣きつくケースです。
融資後ほとんどコミュニケーションをとっていなかったが、経営がうまくいかず、急に融資の相談をされることがあるのですが、付き合い方としてはよくありません。
本当に困ったときだけ融資の相談を行うのではなく、少なくとも1か月に1回はコミュニケーションをとることをお薦めします。
■ポイント② 複数の金融機関と付き合う
可能であれば、複数の金融機関と付き合いましょう。
複数の金融機関と付き合っていると、資金調達の面でリスク分散にもなりますし、競争の原理が働き、各行の担当者が緊張感を持って接するようになります。
また、メイン行に過度に依存することもよくありません。各行一定の融資上限があり、いざ大型の資金調達をしようと思ってもメイン行だけでは賄えない可能性があるからです。また、競争原理が働きづらい環境になるので、融資を有利な条件で引き出せなくなります。
複数の金融機関とうまく付き合い、調達環境を整えていきましょう。
いかがでしたでしょうか。
どの金融機関でも当てはまることではないという前提ですが、融資担当者の視点を少しでも理解していただければ、資金調達時の会話もスムーズになるかと思います。また、ぜひ対策を講じた上で、相談してみてください。
創業融資やステージが進んでいけば融資を絡めた大型調達も必要となってくると思いますので、ぜひ本稿を一つの参考として、心に留めておいていただければ幸いです。
DIMENSIONでは、スタートアップの皆様からのご相談をお待ちしております。
いつでもお気軽に、弊社メンバーまでご連絡下さい。
また、私は今年4月に山陰合同銀行に帰任しますが、引き続き投資業務を行う予定です。(麻布台ヒルズ4Fにおります)資金調達に限らず、何かご相談ごとがあればFacebookよりいつでもご連絡ください。
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