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国立医大生がVCで1年間フルタイムインターンをしてみて 第2回~VCで学んだ4つのこと~

大久保 マリア
DIMENSION Community Director
皆さま、こんにちは。DIMENSIONコミュニティディレクターの大久保と申します。
今回の本記事は特別編として、2025年3月24日に実施したウェビナーイベント「シード・アーリー期スタートアップの人と組織~採用・制度・文化づくりのリアルトーク~」でお話した内容をご紹介します。
DIMENSIONでは、出資先限定で組織・人にまつわるお便り(=お悩みやご質問)にお答えしていく“DIMENSION RADIO”を毎月実施しておりますが、「せっかくなので本内容を出資先に限らず組織・人にお困りの方に届けたい」と考え、先日、初めて公開生放送を実施しました。
ウェビナーイベントでは、ご参加者よりいただいた6問のご質問に弊社取締役の鈴木がお答えし、そのご回答内容を本記事を含め全3回の記事(前編・中編・後編)でご紹介していきます。
それでは早速、本記事(前編)では以下2つのご質問へのご回答内容を掲載します。
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Q. 社員たちに気を遣ってしまい、厳しいことや、トップダウンしたいことをストレートに話せません。「スタンスを経営陣ごとに変える」やり方もあると思いますが、どうしていくべきでしょうか。
Q. どのタイミングでどのレベルの評価制度を作ったらいいのでしょうか。抑えておくべきポイントはありますか?
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以下、イベント当日ラジオパーソナリティーとして参加をしたDIMENSION取締役の鈴木、ビジネスプロデューサーの家弓 、IR/HRの栗山の3名による対談形式でご紹介しますので、自社の組織・人のお悩みに当てはまる部分がございましたら、ぜひご活用いただければ幸いです。
鈴木)厳しいことはなかなか伝えづらいですよね。家弓くんが担当する出資先で、トップダウンでストレートに伝えられている経営者は多い少ないなど傾向はありますか?
家弓)どちらかと言うと、事業成長に必要なことはしっかりトップダウンで伝えている会社さんが多い印象です。ただ、ステージによって異なる印象があり、シード期で少人数の会社さんには、厳しいことを言いづらいと思っている経営者の方もいらっしゃるイメージです。
鈴木)この話題は、我々が出資先にメンタリングする中で、我々からアジェンダとして投げかけることが多い話題の一つですよね。トップダウンをどんな時にしていますか?できていますか?と。
鈴木)ご質問の件にお答えしていきますと、まず、経営陣のパーソナリティータイプ別の役割分け(CEOは優しいから飴担当で、COOは厳しいから鞭で、、)という考え方は、あまりにも属人的でマネジメントやガバナンスが逆に効かなくなりますので避けたほうがよいですね。さらには、社員から、あの人は良い人だよね、、あの人はきついよね、、といったような好き嫌いの雰囲気まで組織に蔓延してしまいますので。
鈴木)そうではなく、ポジションに適した役割・権限・責任によって言動や立ち振る舞いを決めていくのが組織の正しい姿です。ですから、場合によっては、ポジションにあるべき振る舞いを「演じる」必要は一定出てきます。その努力は必要ですよ、頑張りましょう(笑)。まずは、経営陣としてどうあるべきか、もちろんその中で一番重要なのはCEOとしてどうあるべきか、これを考え整理し実行することが大事です。
鈴木)追加で、このご質問の「トップダウンしたいことをストレートに話せません」ということの背景には、スタートアップに「フラットなカルチャー」「ボトムアップな組織」「情報の透明性」「みんなが裁量権を持てる」といったイメージが強いことがあると思うのですが、これって実はとてもリスキーなんですよね。それはスタートアップの幻想と思っても良いと思います。
鈴木)市場は常に変化し、競合も変化し、プロダクトをPSFやPMFさせていくためにPDCAを早く回して変化変化変化していかなければなりません。当初描いた戦略の7割は変わる前提と認識しておいた方がいいですね。この変化変化変化をどれだけ早く生み出せるかが重要で、それが競争力と言っても過言ではありませんから、経営者が朝令暮改を日々連続していくのは実は重要なことで、それができなければなりません。CxO陣は全員、トップダウン力を身につける必要があると私は考えています。
鈴木)そこでポイントになるのが、「フラットな組織」「全員に大きな裁量」というようなことをあまり言い過ぎてしまうと、いざトップダウンや朝令暮改をするときに「え、うちの文化と違くない?」「ちゃんと説明してください」という非生産的な論点が生まれ、結果、変化実行を遅くすることになります。
鈴木)もちろん無意味無謀だったり浅い思いつきでの「朝令暮改」は許されませんが、時には明確な説明ができないひらめきや経験値からの「朝礼暮改」が多々あるのもスタートアップの現実なので、やっぱりスタートアップは「いかにトップダウンができる組織か/朝令暮改できる組織か」という点が大事だと思っています。日ごろから、そういうことが起こり得ることをメンバーに伝えておき、「どんな変化があろうとまずはやってみよう」というメンタリティを作っておくことが重要です。
鈴木)また、トップダウンを納得してもらえるCEOの対話力と信頼づくりも合わせて重要です。そのために注意すべきことはとても基本的なことで、気分で朝令暮改しないこと、朝令暮改をやたらと繰り返さないこと、中途半端な曖昧な意思決定をしないこと、トップダウンとパワーハラスメントを履き違えた伝え方をしないこと、出来うる限りの説明をし尽くすこと、判断が間違ったら言葉で謝罪をすることなど、当たり前の基本を必ず行うことです。
鈴木)最後に、トップダウンや朝令暮改ができる会社作りを、従業員1人目の時から行うことも大切ですよ。新たに入ってくる社員は既存の社員を見て、何が正しいのかやどう動くべきかを知らず知らずのうちに判断していくといったように、文化は人によって継承されていくものです。10人~15人規模まで「フラットなカルチャー」「みんなが裁量権を持てる」と言いながら組織作りをして、そのあと急にガバナンスやヒエラルキーを導入しようとしても、一度つくられた文化を変えることは難しいので、はじめからそういった文化づくりをすることが大切ですね。
栗山)すでにもう10人、30人規模の組織になりこの悩みを抱えている方も多いと思います。そういった方々に何かアドバイスはありますか?
鈴木)それはもう、今日この後にでも、「会社をこういう組織に変えます」「経営者として、こういう進め方に変えます」ということを、それこそストレートに社員に真摯に伝えるしかないですね。トップダウンや朝令暮改がクイックにできない状況は事業や組織の成長をどんどんビハインドさせてしまうので、1日でも早くそういう状況は壊さなければなりません。
鈴木)念のため、こういった内容を伝える際には、「自分はこれまでこういう文化形成をしてきたけど、今後の会社のフェーズには適していないと判断した」と素直に伝えることをオススメします。場合によっては、これまでかなり気分屋だったり曖昧な経営をしてきたのであれば、「経営者としてこれまでの文化づくりは間違っていた」と言うことを素直に伝える必要もあるかもしれません。
鈴木)経営者としてうまく組織づくりができていなかったことを反省し、それを伝えればメンバーは理解してくれますし、と言いますか、社員はすでにそういった経営者問題をわかっているということも多々ありますから隠している意味はなく、それをオープンに話してくれて会社の成長のための変化を伴ったステップアップだと思えば喜ばしいことでもあるので、この話に思い当たる部分がある方は、ぜひ間髪入れずに対応いただきたいなと思います。
栗山)まっすぐに向き合って対応するしかない、ということですね。
鈴木)家弓くんが担当している出資先でも評価制度策定をご支援したスタートアップがありましたよね。その他のスタートアップも含めて、評価制度をつくるタイミングはいつごろが多い印象かな?
家弓)やっぱり、社員が10人20人となってきて、経営者が1人で評価しきれなくなった場合に制度をつくっているケースが多い印象があります。
鈴木)そのフェーズまでは、経営者が全員の評価をしているということですよね。ちなみに、制度を増やしたりルールをつくったり権限移譲したりすることに対して抵抗感を持つ経営者は意外と少なく無いですが、評価制度をつくることへの抵抗がある経営者の方もいらっしゃったりしますか?
家弓)いらっしゃいますね、例えば、シリーズAのタイミングで出資させていただく際に、評価制度が無く、つくることを提案したときに微妙な反応があった経験はあります(笑)。
鈴木)想像がつきます(笑)。まず評価制度について、一般的に言われているのは「社員数が20人前後の規模になったら」、もしくは「シリーズA(その理由の一つには、VC含め金融機関から資金調達をする際に、社内の仕組み化や権限以上も論点となるため)」。これらの一般論はもちろん参考にされると良いとも思いつつ、私は「創業のタイミングからつくってください」とよく言っています。
鈴木)創業して、プロダクトやサービスをつくっていくフェーズ、つまり初期の初期に必ず評価制度はつくった方がいい。なぜなら、人事評価制度は実は事業目標を達成するために最重要な仕組みの1つなんですよね。
鈴木)シンプルに、全社目標は1人1人の目標の合算であり、全社成果は1人1人の成果の合算です。例えば、会社の設立直後の1人の時には、全社目標イコール自分の目標、全社成果イコール自分の成果です。創業した瞬間から、一定の期間を決めて、その間にどんな成果を出すかという目標を決め、定期的に目標達成の進捗確認をしていくこと、これは当たり前に必須で、これは人事評価制度そのものなのです。それを規定化する必要は全くなく、自らルールを決めてメモ帳でやっても良いしSpread SheetsでやってもよいしNotionでやっても良い。
鈴木)もちろん評価制度の粒度はステージに合わせていけばよく、例えば等級を5段階層にすることは社員数が2人の時には絶対に必要ないので(笑)、良く言われる人事制度の三つの柱である「等級、評価、報酬」のうち、まず「評価」だけは1人の時も簡単にでもきちんと作成して運用すべきですね。そこから「評価」を徐々に詳細にしたり、「等級」「報酬」を導入したり、それはステージに合わせて作っていけばいいと思っています。
鈴木)繰り返しになりますが、創業当初から、評価制度を導入する。1人でも2人でも、一定期間で定量であろうと定性であろうとどんなことを実現するのかを決め、それをどう役割分担して誰が何を実現するのかを決め、進捗確認を行なってなんとしてでも実現する、そしてそれを繰り返していく。
鈴木)評価制度=経営の目標と現状の差分をマネジメントするツールなので、難しく考えず最初は「3ヶ月でここまで行くぞ!役割はこれでいくぞ!」と決め、それを毎週レビューしてなぜできなかったのかを考え改善し続けるサイクルをまわし続けること、これは立派な評価制度です。
鈴木)その結果として、事業も成長し組織が大きくなると、全社目標と個人目標のアラインが曖昧になったり、進捗管理がおろそかになったり、評価の目線がずれてきたりするので、徐々に粒度を上げた文言化を行い仕組み化を強めていく。ということで、ご質問へのお答えとしては、1人のタイミングから評価制度はつくりましょう、そして粒度はだんだん上げていきましょう、というのがアドバイスになります。
鈴木)DIMENSIONでは、出資先に「評価制度をどの粒度までつくるべきか、逆につくりすぎないようにするべきか」というアドバイスのご支援もしていますが、評価制度と会社の状況がフィットするかというのはまさに、評価制度をプロダクトととらえ「PCF=プロダクトコーポレートフィット」という考え方ができると思うんですよね。マーケットが変わるのと同様にコーポレートは常に変わるので、会社の変化に合わせてプロダクトである評価制度も常にアップデートし続けていくことが大事です。
鈴木)最後に、「評価制度はありますか?」という質問は「経営の目標と現状の差分マネジメントをちゃんと仕組化できていますか?」ということとニアリーイコールですので、そのように正しく理解していただくと、評価制度づくりは経営者としてすべきすごく当然のことをするだけですから、評価制度づくりに対してネガティブになることはなくなるのでは?と思います。
「シード・アーリー期スタートアップの人と組織~採用・制度・文化づくりのリアルトーク~」、いかがでしたでしょうか。
自社の組織・人のお悩みを外部に相談すること自体が難しく、機会も少ないかと思いますので、是非弊社のウェビナーイベントや本連載を参考にしていただけますと幸いです。
DIMENSIONでは、スタートアップの皆様からのご相談をお待ちしておりますので、いつでもお気軽に、弊社メンバーまでご連絡ください。
中編・後編もどうぞお楽しみに!
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