#レポート
2017年4月に発表されたLINE株式会社のIR資料によると、LINEの月間アクティブユーザー数(国内)は6800万人。なんと日本国民の53%がLINEを利用していることになる。
チャットでのコミュニケーションが当たり前になったのは、いつからだろうか?
強いて上げるとすれば、Facebook Messenger、 LINE、WeChat、Viberがサービスを開始した2011年がチャット普及の始まりと言えるだろう(参考:http://blog.mobilus.co.jp/507/)。
2011年から現在まで、友人や家族とのコミュニケーションはチャットが一般的になってきた。
一方、ビジネスにおいてチャットはどれほど利用されているだろうか?
下記は2017年4月に伊藤忠テクノソリューションズが発表した調査結果だが、なんと調査企業の約7割がチャットを利用していないという結果であった。(売上100億円以上、従業員200名以上の企業に勤務する役職者412名へアンケート)
(引用元:伊藤忠テクノソリューションズ「大手企業のビジネスチャットツール導入実態調査」http://www.ctc-g.co.jp/news/press/20170413a.html)
日常的にSlackやChatworkを利用している読者の方には信じがたいかもしれないが、大手日本企業においてはどうやらこれが実態のようである。
これは単に企業の対応が遅れているからなのか、それともビジネスにおいてチャットは非効率なのだろうか?ビジネスでチャットを利用することが当たり前になってしまった筆者からすると、おそらく前者なのではないかと感じている。
本記事ではいわゆるビジネスチャットツールについて、果たして本当に業務効率改善につながるのか、次の3つの項目について掘り下げていきたい。
・チャット導入のメリットとその効果
・よく利用されているチャットツール一覧
・チャットが切り開く新たな可能性
チャット導入のメリットとその効果
チャット導入による主な効果はコミュニケーションの改善による業務効率UPだと言われる。具体例は他サイトに譲るが、その効用は主に次の2項目にまとめられるだろう。おそらく、多くの人がチャットと聞いて思い浮かぶメリットは“①人とのコミュニケーション”部分の改善であり、“②サービスとのコミュニケーション”については、あまり意識されていないかも知れない。
実は、②の部分でチャットは真価を発揮するのだが、その点については後述する。
では、まず①を目的にチャットを導入した場合、実際に業務効率は改善はされるのだろうか?
この点については、KDDIがChatworkを導入した際に行った次の調査結果を御覧頂きたい。
もちろん、業態や利用ルール等は各社異なるので、一概には言えないが、きちんとチャットが運用できれば、たしかに業務効率は上がるようだ(本調査結果では、メール/会議/電話の時間が53%削減されている)。
(引用:人口が減少する中で「労働生産性」を向上させるには http://www.kddi.com/business/imasarajiji/201607com_tool/)
参考までに補足しておくと、人が1日にメールと会議にかける時間は213分程度なので、仮にチャット導入で50%短縮できるのであれば、約106分の時間(8時間労働であれば約22%)を他の仕事に充てることができる。効果としては十分そうだ。
(参考:一般社団法人日本ビジネスメール協会「ビジネスメール実態調査2016」http://businessmail.or.jp/archives/2016/07/01/5668 NTTデータ研究所「会議の革新とワークスタイル」に関する調査http://www.keieiken.co.jp/aboutus/newsrelease/121005/index2.html)
よく利用されているチャットツール一覧
さて、どうやらチャットの効果はありそうだと思って頂いたところで、次の疑問としては、どのチャットツールを導入すればいいのかという点だろう。
ベンチャー系企業の利用ツール情報が掲載されているWantedly Toolのデータから、各チャットツールの利用企業数を下記にまとめてみたので、参考にして頂きたい。(2017年8月1日時点)
ご覧の通り、Slackの利用が圧倒的だ。(おそらく、ビジネスでチャットを利用していない読者の方も名前は聞いたことがあるのではないだろうか)
このグラフを見ると、“じゃあうちもSlackで良いか”、と思ってしまうかも知れないが、もう少し掘り下げて見てみたい。
一体Slackのどのような点が評価されているのだろうか?
簡単ではあるが、チャット機能として重視されるであろう上位5つのサービスについて、DI独自に評価を行った比較表を作成したので、次の表をご覧頂きたい。
※対象は無料プラン+法人向けの最も安い有料プラン。
※Line, Facebook messenger については、ビジネス向けサービスである、”LINE Works”(2017年2月開始)、Workplace by Facebook(2016年10月開始)も評価対象に加えた。
主要チャットツール機能比較表
もちろんチャットは毎日利用するコミュニケーションツールであるので、UI・UXが非常に重要になってくるのだが、今回はあくまで機能面に絞って比較している点はご承知おき頂きたい。
こうして比較をすると、どうやらSlackは無料でも基本的なチャット機能がある+外部サービスと連携ができる点が、他サービスと異なっており、ユーザーに評価されているポイントではないかと推察される。
まさに上段で述べた、“①人とのコミュニケーション”と“②サービスとのコミュニケーション”の両方を実現できるツールという点である。
そして(序盤でも述べたが)この“②サービスとのコミュニケーション”という点が、チャットを単なるコミュニケーションツールから、業務を統合するプラットフォームに昇華させる、非常に重要なポイントではないかと考えている。
チャットが切り開く新たな可能性
それでは最後に、この②サービスとのコミュニケーションの可能性について、事例を絡めて紹介していきたい。
Slackの外部サービスとの連携は前述の通り、下記大きく2パターンに分かれる。
A)Gmail、Github等の外部既存サービスとの連携
B)オリジナルのBotやプログラム等との連携(要エンジニアスキル)
まずはA)Gmail、Github等の外部既存サービスとの連携についてだが、実は、この既存サービスとの連携は非常に簡単だ。
下記URLからSlackと連携可能なサービス一覧が確認できるので、連携したいサービスを選んで、インストール&設定すればすぐに利用可能になる。
数百のサービスが登録されているので、ぜひサイトをご覧いただきたいが、以下によく利用されているサービスをいくつかあげておく。
Google カレンダー :予定の10分前や、新しい予定が作成された際にチャットで通知
Github :コミットやプルリクエストがあった場合にチャットで通知
Google Drive :URLを張ることで、Slack上で該当ファイルのインポート可能
Twitter :特定のTweetの引用や、特定のアカウントがツイートした際にSlack上に表示
Nuzzel :ニュースアラート。SNSと連携して友達がシェアした記事等を表示
Giphy :キーワードを指定すると、面白いGIFアニメをSlack上に投稿してくれる
最後のGiphyは、あまり業務改善にはつながらないが、コミュニケーションが盛り上がるのでおススメだ。
次にB)オリジナルのBotやプログラム等との連携についてだが、これは工夫次第でどんなことでも可能だ。
仕組みとしては、SlackのAPIを利用して外部の情報(Botの応答、自社サービスの通知等)をSlackに渡すことができるのだが、プログラムを書く必要があるので、ある程度のエンジニアスキルは必要だ。
下記にSlackとの独自連携の記事をご紹介するので、ぜひご覧頂きたい
・トレタ:サービスのKPI表示、勤怠管理、社内メンバーを模倣したBot等
・GMOペパボ:株価の自動通知Bot(非エンジニアの社長が実装)
・Techcrunch:Slackの中からAlexaとチャット
これらをご覧いただくとわかるように、Slackを通じてチャット上で様々なタスクの自動化を行うことが可能となる。
もちろん、Slackではなくてもタスクの自動化は可能だが、頻繁に利用するチャット上にタスクを統合できるという点は非常に魅力的だ。
日本では、ビジネスチャット自体が浸透し始めているという状況なので、“②サービスとのコミュニケーション”が普及するには時間がかかると思われるが、最終的にはコミュニケーションの基本となるチャット上に、情報やサービスが統合されていく形が主流になっていくのではないだろうか。
まとめ
ここまでの議論を踏まえ、改めてビジネスにおけるチャットとは何かと考えたときに、一言で言えば、あらゆる業務の窓口となるプラットフォームのプラットフォームなのではないかと思っている。
外部のプラットフォーム(Gmail等の外部サービス)を統合した、あらゆるビジネスコミュニケーションのプラットフォームという意味だ。
そして、それを可能にしているのは、LINEのようなチャットサービスの普及であり、APIエコノミーの台頭(弊社記事参照)という世の中の流れではないだろうか。
外部サービスの連携という意味では、今のところSlackが頭一つ抜けているが、今後はその他のチャットツールも同じ方向に動いていくだろう。
ぜひ読者の皆様もチャットの導入、またその先にある進化を感じて頂きたい。
DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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