【先輩起業家への質疑会】~「採用・組織づくり」のポイント①〜PR TIMES 山口拓己社長・グッドパッチ土屋尚史社長(第1話)

多面的な経営支援で起業家の事業成長を促すDIMENSIONは、先輩起業家が後輩起業家の経営推進をアシストする体制も構築しています。今回はDIMENSIONのパートナーでもある株式会社PR TIMES山口拓己代表取締役社長と株式会社グッドパッチ土屋尚史代表取締役社長のお二人に登壇いただき、DIMENSION出資先の起業家と実施した質疑会の様子を文字起こしレポート形式でお伝えします。今回のテーマは「採用・組織づくりのポイント」です。 (モデレーター:DIMENSIONビジネスプロデューサー伊藤紀行)

登壇者紹介

(スピーカー)山口拓己氏/PR TIMES代表取締役

1974年生まれ、愛知県出身。東京理科大学を卒業後、山一證券入社。アビームコンサルティングなどを経て2006年3月、PR会社ベクトル入社。取締役CFOに就任し、上場準備責任者としてIPOへ向けて指揮を執る。2009年5月、PR TIMES代表取締役就任。2016年3月、東証マザーズ上場、2018年に東証一部へ市場変更した。2020年1月に株式会社グッドパッチ社外取締役に就任。事業のミッションは「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」。

(スピーカー)土屋尚史氏/株式会社グッドパッチ 代表取締役社長 / CEO

1983年生まれ、長野県出身。2011年9月に株式会社グッドパッチを設立。「デザインの力を証明する」というミッションを掲げ、様々な企業の事業戦略からUI/UXまでを支援し、企業価値の向上に貢献。ベルリン、ミュンヘンにもオフィスを構え、世界で200名以上のデザイナーを抱える。2020年6月、デザイン会社として初の東証マザーズ上場。

(モデレータ)伊藤 紀行/DIMENSION ビジネスプロデューサー

早稲田大学政治経済学部卒業、楽天に勤務後、EdTechベンチャーの東京オフィス立ち上げに参画し、事業の急成長に貢献。その後グロービスの英語MBAプログラム Japan Accountのリーダーとして事業開発に従事。DIMENSIONで志高い起業家・スタートアップへの投資・経営支援に携わる傍ら、週末はビジネススクールの講師も務める。

「少数精鋭部隊」の作り方

伊藤:今回は採用や組織づくりのポイントを、お二人に直接、DIMENSION出資先社長のみなさんから質問していただきます。では早速、最初の質問をお願いします。

質問者:山口社長は少数精鋭の組織を意識していると記事で拝見しました。少数精鋭であればあるほど、特に採用時に人を見極めるのが難しいかと思いますが、注意しているポイントがあれば教えてください。

 

山口:まず少数精鋭なのは、土屋さんの会社のように採用力がないからです(笑)。

採用力のない会社が、人材を見極めようとしてしまうと、ほとんど人が来ないと思っているんです。ですから採用にあたっては、何か条件を決めては採りません。採用時に条件で他社に勝とうとしないことがポイントの一つです。

もう一つのポイントは「仕入れ」のような採用をしないこと。人数を埋めるように採用しても、結局いいことがないんですね。ですから「仕入れ」のような採用をしないことを心がけています。

あと採用時に大切にしているのは、ギャップをきちんと伝えること。

皆さんの会社も個性的だと思いますが、会社が個性的であればあるほど、その会社に完璧に合った人はマーケットにいません。後々、合うようになることを前提で「このぐらいのギャップが現状はあります」と、しっかりお伝えすることを大切にしています。

 

土屋:そういう人が、ブレイクスルーするのはどういうタイミングなのでしょうか。

山口:機会が人を変えますね。彼の場合は面と向かってきちんと話をしたときでしょうか。普段は社員と食事に行かないのですけど、そのときだけは食事に誘って、しっかりと話をしました。

土屋:そこから火がついたってことですか。

山口:そうですね。本当によく働いてくれるようになりました。

土屋:それで仕事に成果が出て、だんだん認められていった。そこまで待てる、山口さんもすごいですね。

 

質問者:初期のメンバーはどのような方だったのでしょう。

土屋:ほぼ素人のような方も多かったですね。ただ、全員に共通していたのは、新しいものが好きな点でした。

グッドパッチは初期のグノシーのUIデザインをやったことがきっかけで業績が上がったのですが、なぜか彼らは、みんな初期の時点でグノシーを知って使っていたのですよ。あの時代にグノシーを使っているって結構、珍しかったのですが、そうした新しいサービスに対する熱量はありました。

結果的に全員辞めましたけど、それぞれ独立してデザイン会社をやっていたり、メルカリに行って初期のストックオプションをもらっていたり、Smart HR のプロダクトマネジャーになった方もいる。そういうメンバーが初期を支えてくれていたという感じですね。

当時はビジョン・ミッション・バリューも全く言語化していなかったんですけど、それでも会社の事業に関係するコアな部分、価値観レベルでは繋がっていた。それがよかったのだと思います。

 

質問者:メンバーはどれぐらいのタイミングから定着し始めたのでしょうか。

土屋:うーん、難しい質問ですね。なぜなら、うちは100人に増えた段階で組織崩壊して、80人ほど辞めていますから(笑)。規模やタイミングでは一概には言えません。

ただそんな中でも長く働いてくれているメンバーがいて、彼らに共通しているのは「苦しいときに逃げなかった」こと。組織崩壊の中でも歯を食いしばって逃げなかった人たちが残っています。

イケイケどんどんのときに波に乗っかろうとして入ってきた人たちは、やはり苦しいときに辞めていきます。「もうやばいですよ」「全然おすすめできません」って言っても「面白そうですね」と入ってくれた方が残っています。

 

伊藤:土屋さんに、組織が崩れたときの対処法についてのご質問もいただいてます。

質問者:私自身が会社員時代からミッション・ビジョンで働いたことが一切なくて、正直、必要性について腹落ちしていない部分があります。なのでうちもいつか組織崩壊するだろうというのがあって(笑)。組織崩壊の前後でミッション・ビジョンに対する捉え方が、どう変化したのかお聞きしたいです。

土屋:ミッションでもビジョンでも理念でもいいのですが、それがない場合、会社の存在意義とか目的はどう言語化するのでしょうか。それを伝えずに、どうやって仲間を引き入れていこうとされてますか?

 

質問者:プロダクトでどんな人たちが便利になるかとか、プロダクトで説得していくような感じですね。

土屋:なるほど。であればプロダクトの利便性とか存在意義みたいなことは言語化できそうですね。

これは受け売りの言葉なんですが、メルカリ創業者の山田進太郞さんが「商売と事業は違う」とおっしゃっていたんですね。

商売っていうのはお金儲け。売上が上がって利益が出れば成り立つので、お金儲けが優先される。一方で事業は、社会にとっての価値を出さないといけない。

経営者がそこをどう捉えているかで会社のあり方が変わると山田さんはおっしゃっていて、「自分は商売をやりたいんじゃなくて、事業をやりたいんだ」と言っていたんですよね。まさにそうだなと思います。

苦しいときに拠りどころとなるのが、その会社や事業の目指すものとか、存在意義だったりする。

うちは100人のときに組織崩壊しましたが、辞めていくメンバーもビジョンとかミッションに泥をかけていく人は誰もいなかった。そこに関してはみんな共感していました。ミッション・ビジョンに関して私が言っていることは、組織崩壊の前と後で全く変わってなくて、一貫性や言行一致みたいなものは貫いています。

やはりトップに立つ者の発言が毎回変わるのは、よくないと思うんですよね。howは状況によって変わるかもしれないけど、芯は変わらないので。ミッション・ビジョンが必要な理由はそういう理由ですし、トップとして人から信頼されるかどうかもそういうところだと思います。

 

組織づくり「抜擢と降格」

質問者:山口さんにうかがいます。PR TIMESは少数精鋭の組織構築でスケールされた会社だと思いますが、それには勝つための仕組みやファクターがあるかと思います。

山口:「勝つ」という言葉が出ましたが、実際にPR TIMESは何で勝っているかというと、組織力でも経営力でもなくて、事業そのもので勝ちにいってるんですね。

私たちの事業はインターネット事業で、プレスリリースを配信するお客様が増えて、それらのプレスリリースを見る人が増えて、メディアの方も使ってくれて、またお客様が来てくれるというネットワーク効果で価値が増える循環を作っています。

その事業を作るためのメンバーの一人として経営者がいて、その中のいくつかの役割の中で社員がいるっていう感じです。

だから組織を強くするというよりも、事業を強くする。組織で勝とうとしていないから、少数精鋭のままなのだと思っています。

ちなみに組織づくりの特徴でいえば人事では抜擢もすれば降格もさせています。かなり多くやっていますね。メンバーにとっては緊張感があると思いますよ。

上場企業だから開示もしています。プレスリリースでも出るので、明確に役員じゃなくなったりとか部長じゃなくなったりとか、そういうのは結構やっています。

 

質問者:降格された方は辞めてしまったりしないのでしょうか。

山口:辞める方は辞めていきます。一方で、それでも残る方はその後、活躍する場合が多いですね。さっき言った取締役もまさにそうです。

全員にいい顔はできません。結果が出ていないのに管理職では、周りに理解されませんから。

ただし、降格人事ではすべて私から直接話をし、自尊心を傷つけないよう最大限の配慮はしています。

 

>>第2話へ続く

著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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