#ビジョン
「いま、『社会(セカイ)』から必要とされている事を」という企業理念を掲げ、顧客企業の「働き方改革と営業改革の両立」の実現を目指す株式会社ダイレクトマーケティングミックス。2020年には株式上場を果たし、更なる拡大に向け躍進している。同社代表執行役社長CEO 小林祐樹氏に起業家の素養、人材を選ばない採用などについて聞いた。(全4話)
ビジョンを持つ・仲間を集める力・やりきる力
ーー小林CEOにとって、起業家として重要な素養を3つ挙げるとすると何でしょうか。
まず1つ目は、ビジョンが絶対に必要ということ。
そして、そのビジョンには社会性や大義名分といった要素が含まれていることが絶対条件だと考えています。
小林 祐樹/1982年生まれ
2005年株式会社光通信入社後、独立。2007年株式会社カスタマーリレーションテレマーケティング設立、2011年同社代表取締役就任。2015年CRTMホールディングス(現株式会社ダイレクトマーケティングミックス)代表取締役社長CEO就任。2014年株式会社アドバンテッジパートナーズ、2017年インテグラル株式会社への二度のバイアウトを経て、2020年10月に企業代表者として史上最年少で東証一部へ直接上場を実現。現在に至る。
私の場合、起業した時はまだビジョンがクリアではありませんでした。
ただ、学歴や育児、介護など、さまざまなハンデを背負っていても、自分に自信があり、自分の力を試したいと思う人が活躍できる場を提供したいとは思っていました。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)だと、どうしても単一的な給料になり、例え自分の力を試したいといったやる気のある方の仕事も単純作業のようなものになりがちです。
そういう単純作業ではなく、しっかり成果に応じて高い報酬を払えるような仕事を提供したい。そして、どんなハンデを背負う人にも活躍できる場を与えられるような会社にしたい、というのは理想として持っていました。
起業家にとって、ビジョンは徐々に明らかになることもありますので、最初から全てがはっきりしている必要はありません。
しかし、成功するためにはビジョンは絶対に必要な要素だと考えます。
創業時は社長自身が“魅力的な商品”となる
ーー起業家に重要な素養、その他は何になりますでしょうか。
2つ目は、「仲間を集める力」が大切だと思います。
起業にあたって、社長のビジョンや想い、またはそれに伴った圧倒的な専門性は必要になります。
だからこそ、前述のような「自分の力を試したい」方を、集められる社長になることが必要で、どんな人でも引き寄せられる人になっていなければいけません。
会社は、初めは人格を持っていない“赤ちゃん”なので、社長自身が魅力的な商品(会社の象徴)になるべきです。それゆえに社長のパーソナリティが仲間集めにとって非常に重要だと思っています。
ーー会社を起業する方々はご自身の能力が非常に高いことが多いですよね。小林CEOもそうだったと思うのですが、どうでしょうか。
全くそんなことはありません(笑)。
ただ、能力といっても様々だと思います。本当に重要な能力は何かというと、3つ目の素養として挙げたい「胆力」、つまり「やりきる力」だと思います。
それがなければ、1番と2番があっても結果は出ません。
3つすべてが重要なコアコンピタンスだと思いますが、3つ目の「やりきる力」があると、2つ目につながり、ビジョンが実現されていく。
なので社長に必要な能力が何かと聞かれたら、「やりきる力」と答えますね。
ーー「やりきる力」が過去のご経験の中で必要になったシーンを教えていただけますか。
創業の頃は、社長が社長業に専念することは難しいので、社長自身が商品や経理財務を含む全てを把握しなければなりません。
会社を始めるときから“会社っぽく”始めようとすると、失敗することが多いです。私もそうでしたが、かっこつけたいんですよね(笑)。
でも、経理部長や管理部長、人事部長、事業部長といった役職が生まれるのは、社長が全部「やろうと思えばできる」からこそ。
「担当がいなかったら自分がやればいい」という姿勢も含めて「やりきる力」と私は言っています。
徐々に役割分担できるようになって社長自身の実務が減っていくことは良いことだと思いますし、私も今となっては全くやっていません。
しかし、創業した初めの期間は社長自身が「自分がやればいい」という姿勢で全部を把握していないと、人も集まらないと思いますし、人もついて来てくれないと思います。
ーー会社によって変わるとは思いますが、その初めの期間というのはどれくらいになりますでしょうか。
ビジネスによりますが、凄く厳しい言い方をすると「黒字になるまで」。事業が確立する前の早い段階から組織階層を先行して作ってしまうことには私は反対です。
スタートアップは華やかなイメージが先行しますが、実際は社長自らなんでも泥臭くやりきった方が良い。
逆に言うと創業初期しかできないことですから、スタートアップを起業する楽しみの一つだと思って「やりきる」ことが大切だと思います。
3人分の仕事を15人で。赤字でも圧倒的な成果を
ーー御社は、既存の通信インフラから始まり、公共、生活インフラ、医療、金融などの領域にも価値を提供し始めました。目先のことをやり続けるだけでなく、隣接領域も戦略的に考えることが重要かと思いますが、その点において必要となるマインドセットの変化などはございますか。
我々は、まずは通信インフラの一つの領域に絞り、その領域でのプレゼンスを圧倒的にすることを目指しました。その際、BPOやコールセンターなどの会社は多くありますので、セールスマーケティングに特化しました。
ただ、徹底したがゆえに通信インフラに特化したイメージの払拭が難しく、異なる領域の顧客開拓は今でも苦戦しています。
通信インフラから新しい領域への移行はまだ完全に成功してはいませんが、通信インフラセクターやWEB/ITセクターに対しては、徐々にプレゼンスを高め、売上も伸びてきています。
それは、クライアントが何を求めているか、どの領域であれ解決すべき問題は大体一緒だからです。売り上げを伸ばしたい、コストを下げたい、人手が足りない、といった悩みはどの領域でも共通しています。
ですので、求められている課題が何か、そしてそれを解決できる適応力のある人材を持つことを強く意識しています。
ーーお話を踏まえると、最初は一つの特徴的なものを作り、その上でそこで培ったスキルを応用し、展開していくイメージでしょうか。
某大手通信キャリア(以下、A社)が我々のファーストカスタマーでした。当時、全国に33支店あり、その中で一番初めに熊本支店が仕事を発注してくださいました。
その時、3席分(3人分)の仕事を発注して頂いたのですが、私たちはその仕事を15人でやったんです。我々は大赤字でしたが、競合他社と比べて圧倒的な成果を出しました。
その後、奈良支店からも仕事を頂いたのですが、その時も大赤字覚悟で人員を配置し、圧倒的な成果を残しました。
その結果、「熊本と奈良の数字が圧倒的に良いけど、なんで?」と口コミでA社さん内で広まったんです。
兵庫で2席、大阪で3席という風に分散して仕事をするのではなく、徹底的に集中したことが大きな金字塔となりました。同じ赤字なら、そのようなインパクトを残すことの方が重要だと考えたのです。
ある種の広告費というか、ただ闇雲に赤字を出すのではなく、集中して何かに取り組んで結果を残すことが重要です。
通信インフラや生活インフラといった領域では、このような戦略を意識してきました。次の展開も同じような戦略でやっていく予定です。
例えば、某大手電子決済サービス事業者(以下、B社)の裏側には実は我々の部隊がいるんです。
その他にも同様の依頼があったのですが一切断って、B社さんを一択で選び、全力で取り組んできました。B社さんも大きく成長しましたし、我々も8割から9割のシェアを持っています。
当時、B社さんを選んだのは伸びるだろうという直感があったわけではありません。関係性が良かったから、つまり人脈があったからでした。
まずは勝ちやすいところで勝ち星をつける、それが重要なことかと思います。
>次の記事「量をこなせるセンスを。」営業の極意とAIとの今後を語る 株式会社ダイレクトマーケティングミックス 小林 祐樹 社長(第2話)
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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