#マーケティング
企業向けの空間シェアリングビジネスの先駆けとして、2005年の創業以来、遊休不動産を保有することなく借り受け、貸会議室・宴会場として展開することで、新たな空間活用ビジネス市場を創出してきた株式会社ティーケーピー。同社代表取締役社長 河野 貴輝氏に起業家の素養、組織作りなどについてDIMENSION代表取締役社長の宮宗 孝光が聞いた。(全4話)
ベクトルを揃える組織作り
ーー組織が大きくなると、どこまで現場に任せるべきかという話が出てきます。何かこだわりはございますか。
現場主義は非常に重要です。それがないと、経営者、経営陣、幹部、現場の社員間で分断が生じてしまいます。
しかし、時間は限られています。その中で、どうやって効率的にサンプリング調査を行い、現場を知るかが重要なポイントです。
ーー河野社長ならではの方法はありますか?
私は、2024年3月の人事異動で「地方支店担当役員」になりました。
社内で一番忙しい役割ではありますが、現場の情報が詳細に回ってくるように意図的にその人事異動を行っています。
ーー徹底した取り組みですね。幹部の一体感を如何に生み出すかというのも重要なポイントだと思いますが、その点はどのように工夫されていますでしょうか?
私が支店長を掌握しているので、全エリアの支店長を2週間に一度は全員東京に集めて定例会をするとともに、1対1の会も設定しています。
毎週月曜日には常務会と執行役員会を開催していて、これもリアルの場で開催しています。
さらには全社員(約1800人)を集めて全国生中継で行う会議も4半期に一度。私から全社員にダイレクトにメッセージを発信し、その後には懇親会も実施しています。
とはいえ、大切なのは「ベクトルを合わせること」であって、細かな現場の意思決定は各支店長に任せています。
経営者は会社全体の「ベクトルを合わせること」に集中するのが大切です。
TKPが意識するM&A戦略
ーー事業戦略を描く上で「多角化」「国際化」に加えて「内製化」を挙げられたのが印象的です。M&Aの戦略などとも紐づく部分があるのでしょうか?
私たちは基本的に外注を受ける側の会社ですから、私のポリシーとしては「絶対に外注はしてはいけない」と思っています。だからこそ「内製化」にこだわっています。
川上、川中、川下とサプライチェーンを分けた時に、我々は川下に強みがあります。TKPをプラットフォームとして年間3~4万社が利用しているからです。
その背後にはさらに何百万人もの従業員がいるわけですから、これらの人々をレバレッジにして様々な事業を展開できる可能性があります。
そこで、川上となりうる事業をM&Aするという選択肢が出てきます。
インターネットがこれだけ進んだ現代では、川中事業のニーズはほとんどないでしょう。
つまり、川上か川下、どちらかを取らなければならないということです。したがって、「内製化」には強くこだわってきました。
ーーM&Aを判断する際に持たれている指針のようなものはありますか?
原理原則は、割高の企業を買うべきではないということです。
その理由は、PMIが非常に難しいからです。
私はM&Aの成功率は全体的に見てほぼゼロに近いと考えています。
だからこそ、PMIがうまくいかなったとしても割高にならない価格でM&Aすること。そして、もし失敗したとしても、本体の事業を危険にさらすようなM&Aは避けること。
基本的にはそれが正しいM&Aの姿だと思います。
ただし、企業が将来を見据えて成長するために、5年後、10年後を見たとき、今M&Aすることが少し割高であっても、絶対にやらなければならないM&Aというものもあるはずです。
国際競争力を高めたり、本業以外にストレッチを効かせる場合など、その会社が置かれている状況によって判断すべきではないでしょうか。
CxO採用の幻想を捨てよ
ーー人材採用において重視されている点を教えてください。
多くの経営者が、高望みをしすぎていると思います。
私はこれまで様々な人を採用してきました。年上の人や経験が自分よりも豊富な人、高給取りの人など。ですが、結局は社長を超えることはできません。
ですから、「素晴らしい人を採用すれば成功する」という幻想は持たない方が良いでしょう。例え自分を超える素養の人を採用したとしても、自分ではその人をコントロールできないことを理解しなければなりません。
だからこそ、私は「タイトル(肩書き)は人を作る」という考えに辿り着きました。
優秀な人を連れてくれば何か良いことがあると思うかもしれませんが、それは幻想でしかありません。私は、何かすごいスペックを持っているからといって採用しようとは思いません。
私が大切にしているのは、自分の想いに共感し、事業を私と一緒に成長させる同志をどう育てるか、またはそういった人をどう採用するかということです。
ーー上場を目指すスタートアップにおいて、「CxO採用」というのが一種の潮流になっているように思います。
それは最悪ですね。私は最近、ベンチャー投資を検討する際に相手のCFOと名乗る人が自分と同じくらいの年齢のケースが多いんです。起業家は25歳なのに、CFOは40歳とか50歳で、キラキラした金融畑のバックグラウンドを持っている。
私は絶対にそういう会社を信じません。なぜなら、会社やCEOがCFOの金儲けのために利用されているケースが多いからです。
起業家とその人が年齢に関係なくリスペクトしあえる仲ならいいと思いますが、自分を利用するような人と一緒に事業をやってはいけません。お金のためだけに来ている人は、お金のためだけに去るでしょう。そのような人を雇っている時点で、その社長には問題があると思います。
CxOという幻想を追いかけるのではなく、信頼できる同志と一緒に仕事をするべきだと思います。
その中で、信頼できる人に重要な部分を担当してもらうことが大切です。
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宮宗 孝光
ビジョンは「正しい起業家と事業の創出」。真摯に経営に向き合う起業家に出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャー投資ファンドDIMENSIONの代表取締役社長。出資先9社の上場、12社のExitを経験。直近の出資・支援先はSHOWROOM、五常・アンド・カンパニー、AnyMind Group 、LegalOn Technologies 、カバーなど。 東京工業大学・大学院を卒業後(飛び級)、シャープ株式会社を経て、2002年からDIにて20年間、大企業とスタートアップの戦略策定、幹部採用、M&A、提携、出資・上場支援に従事。2019年DIMENSIONファンドを立ち上げ、2021年MBO・独立。 2022年、産業革新投資機構・海外機関投資家・11名の上場創業社長などがLP出資する101.5億円のDIMENSION2号ファンドを設立。
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