起業家に必要な3大素養 – 原動力・想像力・仮説思考力 – SHOWROOM 前田裕二社長(第1話)

壁をぶち破るのは原動力の強さ

――起業家にとって大事な3つの素養を挙げるとすれば何でしょうか?

たくさんありますが、あえて3つにまとめるなら、「原動力(モチベーションの源泉)」、「他者への想像力」、そして一つ一つの行動に仮説を持ち行動する「仮説思考の力」ではないでしょうか。

 

――詳しく教えてください。まず原動力というのは?

ベンチャーはキラキラした世界のように見えるかもしれませんが、実際には苦しい局面がかなりの頻度で訪れます。当然、楽しいことやワクワクすることもたくさんありますが、それを上回るチャレンジが連続して降りかかってきます。それを跳ね除けるのにはそれなりの馬力が必要ですが、その源泉があるのとないのとでは、苦境時の立ち上がりが大きく違うということです。

それはもしかしたら「モテたい」とか「将来金持ちになって馬主になりたい」といった身近なわかりやすいことかもしれないし、「社会に対して大きく貢献したい」といったことでもいいと思っています。なんでも構わないので、辛くなったときに寄り掛かれる何かが無いと、やっていけない。SHOWROOMにもこの3年のうちに、チームが崩壊寸前に追い込まれるようなヤバい時期が3、4回はありました。よくある社員の士気調査を行ってみると、スコアは本当にズタボロで、エンジニアとビジネスの間に亀裂が生じて組織が崩壊寸前しかけたこともあります。

そんな壁を乗り越えられたのは、チームメンバーのサポートや愛情も大きかったですが、自分自身を見つめると、やはり自分を突き動かす煮えたぎるような原動力があったからです。

 

前田裕二/1987年東京生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入社。2011年からニューヨークに移り、北米の機関投資家を対象とするエクイティセールス業務に従事。株式市場において数千億〜兆円規模の資金を運用するファンドに対してアドバイザリーを行う。その後、0→1の価値創出を志向して起業を検討。事業立ち上げについて、就職活動時に縁があったDeNAのファウンダー南場氏に相談したことをきっかけに、2013年5月にDeNAに入社。同年11月に仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げる。2015年8月に当該事業をスピンオフ、SHOWROOM株式会社を設立。同月末にソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受け、合弁会社化。現在は、SHOWROOM株式会社・代表取締役社長として、SHOWROOM事業を率いる。

いまも思い出す、小学校時代の「Aさん事件」

――前田さんにとっての原動力は?

幼少期の体験です。8歳で母親が亡くなり、家もなくなり、兄とともに幼馴染の家を転々としたり外で暮らす日々を過ごしました。その頃に見ていた光景やストレスが、いまの自分を動かす原動力の一つになっているのかなと思います。絶対に、課された運命に負けるもんか。むしろこの光景をバネにして、誰より高くまで上り詰めることで、努力で運命さえ変えられることを証明してやる、と。

自分を育ててくれた兄を喜ばせたいという思いから、「学校で良い成績をとれば喜んでくれるのでは?」という仮説を持った僕は、学年トップの成績を残せるまで勉強しました。ただ、どうしても超えられなかった同級生が一人だけいました。それがAさんでした。

Aさんは算数の授業中、まだ授業では一切習っていなかった素数の話を滔々と始めるんですね。なぜその子が素数について知っていたかといえば、単純に、通っている塾ですでに習っていたからです。

それが、なんだか異様に悔しかった。後天的な努力の差で負けるのであれば納得がいくけれど、先天的な条件の違いで知識の差が生まれたり、勝敗が決まるのはおかしいと、幼心に感じました。それは違うだろうと。それが後に自分の中で、「Aさん事件」と語られる大切な思い出になりました。笑

あの時のショック、コンプレックスをいまだに思い出すことがあります。自分より機会に恵まれた人に対して、自分は圧倒的な努力で、自ら機会を創り出して勝っていかないと、過去の逆境を正当化できないまま人生が終わってしまう。だからこそ、完膚なきまでに、圧倒的に成長して勝っていきたい。それが自分の原動力です。

だから、例えば夜の喫茶店で限界まで仕事をしていると、当時の光景が思い出されるんです。ふと眠りたいと思うことがあっても、「ここで休んだらAさんに、あの子に負けてしまうぞ」って。Aさんに、感謝せねばなりませんね。

苦しい局面でもついてきてくれたメンバーを大事にしたい

――組織崩壊の危機も「原動力」で乗り越えられたんでしょうか?

そうですね。それともう一つは、本気でSHOWROOMのみんなと一緒にやりたいんですよ。SHOWROOMの事業において、彼らのスキルが物理的に必要だからやりたいといったことを抜きにして、人間的に、感情的に、本当に一緒にやりたいんです。

例えば、組織崩壊の危機に瀕した時も、メンバーには素直にそれを伝えていました。あるメンバーが辞めかけた際にも、まず何よりエモーショナルな観点で、「自分はこういう価値観で、あなたはこういう価値観。ここまで互いの価値観が共鳴するメンバーって、広い世界の中でも、そうそう出逢えない。だから、僕は、これからも何があっても原則あなたとずっと一緒にやりたい」とストレートに伝えました。加えて、「ロジック観点であなたの価値観から逆算した将来の幸せを考えたとしても、離れるべきではない。理由は三つある。第一に…」と、ハードとソフト両面で懸命に説得したのを覚えています。きっと、何かトラブルがあった時こそ、互いが一人の人間同士として腹の底をぶつけあって、まっすぐ誠実に向き合うのが重要なんだろうと思います。そういった信頼関係を築いていけば、苦しい局面を経ても、メンバーが同じ船に乗り続けてくれる。そんな仲間を、一生大切にしたいと思います。

沸騰しそうなほど熱いモチベーションを保ち続けるための、揺るがない「原動力」はあるか。僕の場合は、それが、「運命に勝ちたい」という気持ちと、仲間の存在だったりします。それを突き詰め、日頃から自分自身に問い続けることが、起業家にとって不可欠な素養だと思います。

 

 

>第2話「仮説思考力は弾き語りで身につけた?」に続く

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著者 小縣 拓馬

著者 小縣 拓馬

起業家向けメディア「ベンチャーナビ」 編集長。玩具会社のタカラトミーを経てDIに参画。ビジネスプロデューサーとして、主に国内ベンチャーへの投資・事業支援・戦略立案を担当。     ~「More than Meets the Eye」 これは玩具会社時代に担当していたトランスフォーマーというシリーズの代表的なコピーです。見た目だけではわからない、物事の本質に焦点を当てること。そんな想いで記事を提供していきたいと思っています。~

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