超高水準「社員1人あたり営業利益」を誇る北の達人コーポレーションの組織づくりとは 木下勝寿社長(第3話)

「北の大地、北海道において高い技術と能力を持ち活躍するプロフェッショナル集団でありたい。」という思いが社名に込められた異色のD2C躍進企業、株式会社北の達人コーポレーション。東証一部上場後も成長を続け、その圧倒的な利益率の高さでも知られている。そんな同社を牽引する代表取締役社長 木下勝寿氏に、起業家にとって重要な素養、利益を生み出す事業の創り方などについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた。(全4話)

組織づくりは社長の仕事

ーー組織づくりについて重要だと思われることがあればお聞かせください。

社長自身が組織づくりを自分の仕事だと認識すること。誰かに任せたいと思っても絶対に逃げられないのが組織づくりです。

特に会社が小さい頃はなんでも仕事ができる人はなかなか入社してこなかったり、ようやく一人前に育ってきたと思った頃に辞めると言われたり。

そういうことがたくさん起こると、社長をやるような人はだいたいの仕事ができる人ですから「一人でやっていたほうが儲かるんじゃないか」という気になってくるんですね。規模を大きくしようと思って人を採用しているのに…と。

私も最初の頃はよく悩んでいました。世の中の会社の大半が家族経営である理由が「組織づくり」であることを初めて理解したのもその頃です。組織づくりは社長の仕事で、しっかり腰をすえて学ばないと壁を乗り越えられないと覚悟を決めました。

そこから本を読んだり、うまくいっている会社にアポイントをとったりしてガムシャラに組織について勉強していきました。

ーーうまくいっている会社・事例を研究して自社に取り入れることを続けられたのですね。

あとは先ほど言ったように小さな組織であることはリスクが大きいので、リスク分散の観点からも早く大きな組織にしたいと思っていましたね。むやみに人を増やすのは良くないですが、同じ人件費なら人数が多い方がいいと考えています。5人の会社で1人辞めるのと、50人の会社で1人辞めるのとでは全くダメージが違いますので。

一方で、同じ仕事量を5人ではなく10人でやると人件費がかさみます。
そうならないために、総合職の1人分の業務をそのまま総合職がやり続けるのではなく、分解して、総合職よりも給与の低いアルバイト2人でできる仕組みを作るのです。
総合職は難易度の高い仕事のみをやる役割に特化し、アルバイトや業務職は比較的代替可能な仕事をメインにするように、すみわけをしています。

海外展開は“まず市場に問う”

ーー台湾にも支社を展開されています。海外展開で大切にされていることについてお聞かせください。

事業の組み立て方に国内と海外であまり差はなく、結局は市場があるかどうかです。

まず進出のタイミング。

台湾市場については、10年ほど前に楽天さんが台湾に進出した時に、一緒に進出した他社さんから話を聞いたところ、「1回の注文に平均4回の問い合わせ電話がかかってきた」というほどECが根付いていない時代でした。

そのタイミングで進出しても、市場の黎明期すぎて事業立ち上げは無理だったでしょう。

我々が進出したのが3から4年前。ECやSNSは広く浸透していて、定期購入の文化はあまり無いが「まとめ買い」の文化はある。タイミングとしては問題ないと判断しました。

次に商品ニーズ。

最初に我々が台湾向けに越境ECで売り出したのは「カイテキオリゴ」という便秘対策の健康食品。日本では非常に売れていたのですが、これが台湾参入当初は全然売れなかった(笑)。

なのに、次に「二十年ほいっぷ」という洗顔フォームを発売してみたら、これが一時期は日本よりも売れるほどの大ヒットを記録。商品ニーズというのは国や地域によってここまで異なるのかと肌身で体感しました。

 

ーー市場を調べるために、国内同様にモニター調査なども細かくされているのでしょうか?

我々のようなEC事業者であれば日本にいながらその国用のページを作り、SNSやGoogleに広告を出すだけで海外進出できます。なので調査を深くやるよりも、まず市場に出してみることのほうが海外展開においては重要だと思います。

実は台湾に物流拠点を作ろうとしていた頃、さきほどの「二十年ほいっぷ」がなぜ売れたのか、現地の人にインタビューしてみたんです。

最初にある女性に「なぜ二十年ほいっぷが売れたと思いますか?」と聞いたら、「台湾ではスキンケア用の洗顔が無いから」と答えました。

日本ではすでにある市場でしたが、たまたま台湾では我々が先駆者だった。そこに「二十年ほいっぷ」が来たことで「洗顔でもスキンケアできる」という驚きとともに売れたのだというわけです。

次に、別の人に商品が売れていることを言わず、「二十年ほいっぷという商品をどう思いますか」と聞いてみました。すると、「台湾ではスキンケア用の洗顔が無いから」売れないと断言されてしまったんです(笑)。

もし先に調査をしてこの人の話を聞いていたら進出をしていなかったでしょう。自分がよくわからない海外のことだと、現地の少数の意見に強く影響を受けてしまいがちだからです。

なので海外展開はまず市場に出してみること。そして実際に買われるかデータを見ることが大切だと思います。

 

 

 

>北の達人コーポレーション代表 木下勝寿(著) 「売上最小化、利益最大化の法則 -利益率29%経営の秘密 」はこちら

 

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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