起業家は「Hot heart」と「Cool head」を両立させよ 北の達人コーポレーション 木下勝寿社長(第1話)

「北の大地、北海道において高い技術と能力を持ち活躍するプロフェッショナル集団でありたい。」という思いが社名に込められた異色のD2C躍進企業、株式会社北の達人コーポレーション。東証一部上場後も成長を続け、その圧倒的な利益率の高さでも知られている。そんな同社を牽引する代表取締役社長 木下勝寿氏に、起業家にとって重要な素養、利益を生み出す事業の創り方などについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた。(全4話)

「成功するまで続ける」起業家に共通する3素養

ーー起業家にとって大切な素養を3つ挙げるとすると何でしょうか?

3つ挙げるとすると「ホットハート(Hot heart)」「クールヘッド(Cool head)」「タフネスマインド(Toughness mind)」です。

まずは1つ目の「ホットハート」。どんなビジネスも最初からは絶対にうまくいきません。うまくいかないからと終わってしまうか、それとも続けられるかどうかは、本当に自分の商品やサービスに惚れ込んでいて誰かに届けたいという「ホットハート」の有無にかかっています。

我々、北の達人コーポレーションも「売れる商品」を作るのではなく「伝えたい商品」を作ることに徹底的にこだわっています。

ビジネスをしていると、どれだけ売れると思っていても実際には売れない場合が多々あるもの。そのときに「これを知ってもらえないと世の中の損失だ」と思えるほど自分たちが「伝えたい商品」であれば、必ず打開策は見いだせるはずなのです。

木下勝寿/1968年生まれ
大学卒業後、株式会社リクルート入社。その後、独立し、2000年に北海道特産品のインターネット販売を開始。2009年、株式会社北の達人コーポレーションに社名変更し代表取締役社長に就任。健康美容の分野へ本格参入し、2012年札幌証券取引所アンビシャス市場に上場(その後東証一部上場)を果たす。著書に「売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密」(2021年、ダイヤモンド社)

「タフネスマインド」に関しても「ホットハート」と通ずる部分がありますが、言い換えると「成功するまでやり続ける心」ということです。

「うまくいきそうだからやる」という考えでは絶対にうまくいきません。当初の想定通りにいかなかったとしても、粘り強くやり続けられること。この「タフネスマインド」の有無を見ている投資家が多いのは、それが事業を成功させる上で最も重要な素養だと理解しているからでしょう。

ただし、多くの起業家は「ホットハート」と「タフネスマインド」は持っているものです。それなのになぜ失敗してしまうのか。その大半の理由は「お金が尽きる」からです。

10回やったら9回は失敗して、最後の1回でうまくいく。そんなことが当たり前なのがビジネスの世界。それなのに多くの起業家は「2から3回で自分は上手くいく」と過信し、2から3回失敗するとゲームオーバーになってしまうようなお金の使い方をしてしまっているのです。

リスクを冷静に想定したうえで、計画的にお金の尽きない戦い方をしていく「クールヘッド」。これを併せ持つことが、経営を「成功するまで続ける」ためには必要不可欠です。

まず「クールヘッド」から始める

ーーこれらの素養が大切だと思われたきっかけがあれば教えてください。

サラリーマンとして働いていた時、上司に600万円ほどコストのかかる販売促進プランを提案したことがありました。

私が2から3年目くらいの若手だったこともあって上司も気前よくOKを出してくれたのですが、プランを実行する過程で周囲の先輩たちのアドバイスをすべて聞き入れてしまい、実行する頃には当初プランと全く違う内容に。「クールヘッド」で考えると絶対にうまくいかなさそうな内容に変わってしまっていたのです。

結果的にプロジェクトは失敗。この経験を通して「クールヘッド」をいかに貫き通せるかが重要だと学びました。

それ以降、私が事業を立ち上げるときにはまず「理論上はこうやったら絶対うまくいく」というシンプルなロジックを「クールヘッド」で考えます。

次に実行していくのですが、その際にイメージ通りに物事が進まなかったからといって安易に当初描いた理論を否定しません。むしろ、その理論を実現するために「ホットハート」「タフネスマインド」を発揮して、粘り強く試行錯誤するのです。

多くの起業家は「ホットハート」が先行して、「クールヘッド」が足りていません。まず最初に理論を描き、それが理論上間違っていない限りは何があってもやり通すという順序が大切だと思います。

 

ーー「リーンスタートアップ」などと言われるように、あまり頭で考えすぎずに製品を出し、市場の反応を見ながらマーケットフィットを目指すという考え方もあるのかなと思います。

私もビジネスモデルは途中で変えても構わないと思います。

しかし変えるとしても、新しいプランが理論上「こうやるべき」というあるべき論に立脚していることが重要です。壁にぶち当たってビジネスプランを変更するとき、多くの起業家は「できること」に合わせて方針を決めてしまうのですが、それではブレてしまいます。

現実に押しつぶされて「できること」に合わせてプランを変えるのではなく、「こうやるべき」という理論を先に考え、その理論を実現するために何ができるのか粘り強く探し続ける。この姿勢が大切なのだと思います。

 

ーー木下さんは「理論」をどのようなステップで考えていかれるのでしょうか?

当然ながら調査なども必要ですが、1番は「計算」です。

私の友人の経営者にも「全部思い通りうまくいったのに儲からなかった」と言う人がいるほど、案外軽視されがちな部分がこの「計算」。

2億円のビジネスも100億円のビジネスも、立ち上げ時に必要なマンパワーはさほど変わりません。限られた資金と時間を投入するとした時に、本当に目の前のことに投入して良いのか?うまくいったとして、いったいどうなるのか?

概算でも良いので事前に「計算」することで、経営判断は変わってくるのかなと思います。

 

 

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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