#インタビュー
「誰でも、何処でも、簡単に、自由に、M&Aが出来る社会を実現する」をビジョンに掲げ、M&A総合プラットフォーム『BATONZ(バトンズ)』を提供する株式会社バトンズ。同社代表取締役CEO 神瀬悠一氏に経営者の素養、スピンオフまでの道のりなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの古家広大が聞いた。(全4話)
スピンオフに重要なのは「信頼関係」
ーー日本M&Aセンターからのスピンオフについて、母体との交渉など、調整が難しかったところはあったでしょうか。
今のバトンズは、日本M&Aセンターホールディングスに株式を30%を持っていただいていて、そのほかの株主はVCとか多様になってきているんですけれども、最初は日本M&Aセンターの100%子会社だったんですよね。
なのでスタートはとにかくガバナンスが強くありました。経費1つ承認をもらわないと使えないとか、何か施策をやるにもお伺いを立ててからでないと動けない、1年目はそんな年でしたね。
ただ、これは別にカーブアウトやMBO、1つの事業部でもそうだと思うんですけど、やっぱり大事になってくるのは「信頼」なんだと私は思っています。
バトンズの経営に対して「あぁ、この子たちはこのまま爆進していくだろうな」という安心感があるかどうか。
私もそういう意味でいうとアカウンタビリティー(説明責任)をちゃんと果たそうと思って、「今はこういう戦略でこういうKPIになってます」と逐一報告したんですよ。
現在バトンズは6期目ですけれども、ちょうど3期の終わりぐらいに「もうお前らに任せるよ」親離れできました。
「ガバナンスうるさいな」って、ついつい一足飛びにそっちへ行きたくなっちゃうんですよね。でもお客様とも株主ともそうですけれど、全ては信頼関係だと思っています。
やはり「経営は信頼できるし透明感もあるしちゃんと良い戦略を描いてるな」っていう信頼がありさえすれば、どんどん意思決定の自由度というのは上がっていくことを、この5年間で感じました。
ーーM&A業界全体の成長を互いに見据えるのであれば、より一層日本M&Aセンターとは密に対話をして関係性を深めていく必要がありそうですね。
そうですね。
良い関係を構築できている要因として一番大きかったのは、日本M&Aセンターホールディングスの経営陣が社会起点で物事を考えてくれていたこと。
バトンズを事業部としておいてホールディングスで成長するよりも、「バトンズは世の中のインフラになってほしい。M&A業界の全体を支えるインフラになってくれ」という彼らの経営方針とか戦略方針も、我々をどんどん羽ばたかせてくれる後押しになったのは間違いないと思います。
ーー従業員の行き来など社内体制の整理はどうされていますか。
ほとんど今、お互い出向とか転籍とかもないのでもう人材の交流もないんです。独立性の高い会社として運営できているのかなと感じる部分でもあります。
我々の強みであるM&Aのノウハウが豊富だというのは、日本M&Aセンターホールディングスのコンテンツとかノウハウの共有を受けていたり、我々プラットフォームが社会のインフラになるためにいろいろ発信いただけるというのはものすごく武器ですね。
それこそ日本M&Aセンターホールディングスは、自分たちで作ったノウハウをプラットフォームを通して世の中に還元しよう、他のM&A会社などの業界全体に還元しようとしているんです。普通は隠そうとするじゃないですか。そういった点が日本M&Aセンターの経営者のすごいなと感じるところですし、やはりリーダー企業だなと思いますね。
ーー外部から抱かれるイメージについてはどうでしたか。
カーブアウトの会社ってなかなか「子会社」のイメージが変わりません。プラスの面とマイナスの面がありましたが、ここが多分一番難しいと思います。
最初は「M&Aセンターの子会社だね」と色々なステークホルダーから思われていたので、仲介会社さんからすると警戒されますよね。ライバル会社である日本M&Aセンターがやっているプラットフォームに我々が加盟して大丈夫なのだろうか、という警戒感はあったと思います。
ただ、圧倒的No.1の会社が作っているプラットホームだから安心安全というものすごくプラスな面もありました。
前者のちょっと慎重になられるということに関しては、日本M&Aセンターもどちらかというと、我々をどんどん羽ばたかせる方針ですし、我々は独立会社としてインフラになるというビジネスモデルを構築しているので、徐々に最近はそういう慎重な意見は無くなってきました。ただ、そのイメージが無くなるまでやっぱり3年ぐらいかかりましたね。
ーーそのイメージをなくすためには何か大きなきっかけというよりも、普段のコミュニケーションの蓄積などが重要なのでしょうか。
それもありますし、我々が実際出しているサービスって情報を吸い上げるようなサービスになっていないんです。
「皆さんのためになるサービスです」という風に我々は提案していてインフラとしてのプロダクトを設計していますし、営業コミュニケーションもしている。
それの積み重ねかなと思います。
“M&Aプラットフォーム”を通して社会課題を解決
ーー最後に、今後の展望についてお伺いできればと思います。
今後のチャレンジとしては、日本の事業承継やM&Aの敷居を下げてもっと普及させていくというところに軸足を置いて、日本の社会課題に役立つようなインフラになることです。
具体的には今の年間1000件ほどの成約を、1万件を優に超えるぐらいのビジネスモデルにしなければいけないというのが直近2~3年のチャレンジだと思っています。
その先の視点でいうと、バトンズは毎月5000人ぐらい新規の会員様に入っていただいているので、経営をやりたい方や既に今、経営者である方といった会員が20万人ほどいるんですね。
今はM&Aだけでソリューションを提供しているんですけども、もっと中小企業の経営者の皆さんの困っている事にソリューションを広げることもやっていきたいなと思っています。
また今後、クロスボーダーでASEANと日本の企業がお互い資本関係になるみたいなM&Aもより増えていくと思うので、そういう展開も一つのチャレンジとして見据えていきたいなというところです。
多くの経営者さんにもっと多くのソリューションを届けるために、我々自身もM&Aをやっていく会社になっていきたいなとも思っているところです。
普段、密に中小企業の経営者とコミュニケーションをしていると、資金繰りや決済の話もそうですし、人材の話とか、多岐にわたるお困り事を目の当たりにします。、弊社としてもっと出来ることがあると思うんですね。
それを我々がゼロからサービスを作るというより、色々な会社と組んでもっといろんなことが出来るんじゃないかなと中長期的には考えています。
ーー今後、色々な会社とアライアンスを組んでどんどん仲間が増えて、やがて大バトンズ連合軍みたいになるかもしれないですね。
それぐらいの未来を目指したいですね。
我々はM&Aのプラットフォーマーですが、M&Aの良い買い手にもならなきゃいけないなと考えているところです。
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古家 広大
早稲田大学卒業後、三井住友信託銀行に入行。 広島にて個人向けFP業務を行った後、大阪にて法人RMを経験。非上場からプライム市場の企業まで担当し、融資や不動産など信託銀行の幅広いソリューション営業に従事。また、ESGやSDGsをはじめ、CGC改訂への対応支援も行い、グローバルで勝ち続ける企業への成長を非財務領域も含めてサポート。 2022年DIMENSIONに参画。LP出資者からの資金調達と国内スタートアップへの出資・上場に向けた経営支援を担う。
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