本物のブランドをつくる唯一の方法とは ライフスタイルアクセント 山田敏夫CEO(第3話)

フランスで知った「本物のブランド」のあり方

――改めまして、御社の事業概要と、なぜその事業を起業されたかを教えていただいてもよいでしょうか。

我々の事業は、アパレル流通で本来なら6つも7つも存在していた中間流通を全部取り払い、アパレル工場とお客様をネットを通して直接繋いでいる「工場直結型ファッションブランド」です。商品はすべてメイドインジャパンで、工場直販でやっています。そのために、500以上の国内工場に直接出向いて交渉し、なかでも一流ブランドの名に恥じない、厳選した50工場と提携しています。

私自身は、もともと熊本の婦人服店で生まれ育ちました。子供の頃は店で手伝いをよくしていたのですが、日本製の高品質の商品を、たとえ高価でも喜んでお客様が買い、長く使ってくださるような光景を日々見ることができる環境で育ちました。

※幼少期の山田CEO(写真左)。実家の婦人服店にて。

この事業をやろうと思ったきっかけは、大学時代にフランスに留学して、グッチのパリ店で働いていたときに「なぜ日本には本物のブランドがないの?」と言われたことです。私はそのときいくつか日本のブランド名を挙げたんですが、「それは全部日本製なのか」と聞かれて困ったんですね。

例えばエルメスは3000人以上の職人がフランス国内にいて、1人の職人がバッグ1個作るのに20時間かかる。週に2個しか作ることが出来ない。それこそが「本物のブランド」だと。

私が学校で学んだような「ブランド」、例えば有名な選手とコラボレーション商品を作ったり、ロゴを中心にデザインを統一してイマジネーションを刷り込む、これは「アメリカ型のブランド」だと彼らは言うんです。

ヨーロッパにはブランドという言葉は元々無くて、ブランドのことをフランス語では「marque(マーク)」と言います。要は「アメリカ型のブランド」に対する痛烈な揶揄なんですね。「マークでしかない」と。

「アメリカは歴史がない国だからそのようなやり方しか出来ない。だけど日本には100年も200年も織りや染めの歴史があるのに、何故アメリカのようにやるのか」

そういった言葉を聞いた時に、「本物のブランド」というのは、現地の素晴らしい技術を使ったものづくりからしか生まれない。日本のアパレルブランドの多くが生産国を人件費が安い国に移す中で、1つくらい、日本の本質的なものづくりから生まれるブランドがあっても良いのではないか。そう思い、この事業を始めました。

「四方よし」の考えを持ち続ける

――御社ならではのブランドを作るにあたって、これだけは大事にしているという心構えはありますか?

作り手、作り手の後継者、使い手、伝え手である自分達。この四者みんなが幸せである=「四方よし」でなくてはいけないということが大前提にあります。

その上で、「ファクトリエを好きでいてくれるロイヤルユーザーが、それをやった時に喜ぶのか?」ということを常に行動のジャッジポイントに置いています。我々はマーケットイン型ではなくてプロダクトアウト型の事業なので、商品を愛好してくれている真のお客様が引き続き喜んでくれるか、というのを凄く大切にしています。

表面上の色使いやデザインといったことよりも、我々が大切にしている根本的な事を守り続けることが重要だと思っています。

――顧客が喜ぶか、「四方よし」かというのを確認する方法はあるんでしょうか?「よかれと思ってやっていたのに、顧客との間に物凄い認識のズレが生じていた」というケースはよく見られるかと思うのですが。

社内にブランドチームというものをつくって、彼らが確認の役割を果たしてくれています。月に1回、コンシェルジュやMD、カスタマー担当も含めて全社員を集めて、朝8時から「それはファクトリエらしいのか」というのを議論するようにしているんです。

たとえば「『ファクトリエ』らしい接客は何か?」とか「『ファクトリエ』5周年にあたって何をやるべきか?」とか。その中で目線が合っていきますし、ちゃんと社員が原点に立ち戻る場所として機能しています。

一番悲しいのは「パッケージやキャッチフレーズはかっこいいけど中身が伴ってない」というパターンですよね。それは本質的ではないのでお客様はついてきてくれません。根本的で本質的なこと、我々で言うと「四方よし」から常に考えていくことで、本物のブランドは作られていくと思います。

 

 

>第4話 「決して志がブレることのない組織の作り方」に続く

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著者 小縣 拓馬

著者 小縣 拓馬

起業家向けメディア「ベンチャーナビ」 編集長。玩具会社のタカラトミーを経てDIに参画。ビジネスプロデューサーとして、主に国内ベンチャーへの投資・事業支援・戦略立案を担当。     ~「More than Meets the Eye」 これは玩具会社時代に担当していたトランスフォーマーというシリーズの代表的なコピーです。見た目だけではわからない、物事の本質に焦点を当てること。そんな想いで記事を提供していきたいと思っています。~

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