「『Anti-bias』他人の言うことを鵜呑みにせず、自分たちが思うやり方を大切にする。」株式会社Finatextホールディングス 林 良太社長(第3話)

「金融を“サービス”として再発明する」というミッションを掲げ、金融サービスを展開するための「クラウドインフラ」と「データ解析基盤」を提供している株式会社Finatextホールディングス。同社代表取締役社長CEO 林 良太氏に、経営者の素養や、組織づくりのポイントなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの家弓 昌也が聞いた。(全4話)

人事は「採用」が9割5分である

ーー自由に動く組織では、自発的に目標を設定することができないメンバーも出てくると思うのですが、工夫すべきポイントはありますか。

私は、人事が注力すべき仕事は9割5分が採用だと思っています。

会社が大きくなると能力不足のメンバーが入り、そういうメンバーを管理するために組織を作らなければならなくなる。これはよくある話だと思います。

私はこれを、上場後に経験しました。ビジネスが急成長し、人を採用していく中である日気づいたんです。

「戦闘力3だと思って採用したものの、実は戦闘力1だった人材」を、戦闘力10のメンバーが頑張って2~3に引き上げようとしている。

「何をしているんだ?」と思いました。そんな時間があったら、戦闘力10の人を20にした方がいいじゃないかと。

そんなことを経験して、「そうか、採用が重要なんだ」と気づきました。

能力の低い人材を育てるために、優秀な人材を使うのは悲劇です。それなら、できる人を更に伸ばす方がずっといいと思います。もちろん、オンボーディングやヘルスチェックとしての人事は必要ですが、採用が何よりも重要だと考えています。

自発的な人というのは、元々自発的なんです。「自発的に動いて下さい」と言っても、そうでない人には難しい。

ですから、採用時にそういった自発性をどう見抜くかが重要なポイントになりますね。

 

社長が先陣を切るしかない

ーー育成というよりはどちらかというと、自発的に全力で働くという「文化」を、林社長が模範になって作られているように感じます。

まさにそうですね。雰囲気づくりが大切なんです。

横山光輝の『三国志』の中で、孫策が「俺が行く!」と言って合戦の先陣を切る場面があるんですよ。

そのとき兵士は「殿を死なすな!」と言ってついていく。私はそれを理想にしています(笑)。そういうリーダーシップの方が面白いと思うんです。

やらされている仕事はダメなんです。社長が先陣を切る。弊社はまだ小さい会社ですから、それ以外で勝つ方法はないと思います。

 

ーー上場してからも、そういった先陣を切る想いを持たれているのは頼もしいですね。

私は、これは当然のことだと思っています。

例えば、御社の宮宗社長とお会いするとしますよね。そうすると、こちらは「社長が相手だ」と思うじゃないですか。これは普通のことだと思います。

宮宗さんを尊敬しているのは、単に社長だからではありません。でも、社長という立場がきっかけにはなりますよね。

対外的に、社長という肩書きは侮れないんです。

例えば採用面接でも、私と現場のメンバーが全く同じことを言ったとしても、社長から言われると重みが違って感じられますよね。営業に行った時も「社長が来てくれた」というだけで印象が大きく変わります。

営業や採用など、対外的な活動に徹底的に活用する。それ以外に、社長という肩書に意味はないと思っています。

 

「みんながこうあるべきだ」と言うことが、全て正しいとは限らない

ーー短期間で組織を急拡大させつつ、上場を達成されましたが、組織をスムーズに拡大させるためのポイントはございますか。

2016年頃、いわゆる「50人の壁」を意識して、マネージャーをどうするかについて議論が出始めました。

そのとき、当時たまたま同僚に勧められた『ティール組織』という本を読んで、「これがまさにうちのやっていること。これで上手く行くのなら、このままで良い」と判断したんです。

ティール組織については賛否両論ありますが、弊社ではうまく機能しています。当時あの本に出会わなければ、マネージャーを導入するような、もっと「一般的に良いとされる」組織形態になっていたかもしれません。

この経験から学んだのは、皆が「こうあるべきだ」と言うことでも、まずはフラットに考えた方が良いということです。

例えば、組織に限らず、証券会社を作った時も同じでした。当時、「証券会社を作るのは無理。ライセンス取得だけでも2年かかる」と言われ、20億円の証券会社の買収を持ちかけられました。

しかし私は諦めず、東証に「証券会社を作りたい」と相談をしに行ったんです。すると「東証にそんなことを相談しにきた人はキミが初めてだよ」と言われました。それもそのはずで、東証は証券会社を作るのに何の関係もないんです(笑)。

でもそんな風にしながら、法律を読み込んで、やり方を教えてもらって、順番に実行していったところ、8ヶ月ほどで証券会社を作ることができたのです。おそらく私が、史上最年少で第一種金融商品取引業を取得した人物でしょう。

話を組織に戻すと、実は弊社は2年くらい前まで人事部がありませんでした。社員との1on1面談、最終フィードバック、給与の通達まで、私自身が半年ごとに全社員分をやっていました。

だから私は、社員のことをかなり詳しく、家族構成に至るまで知っています。

社外の方からは「社長の時間がもったいない」とか「時間効果が悪い」と言われましたが、私がそれを良しと判断して、それで実際に業績が伸びていたのだから、間違った選択ではなかったと思っています。

つまり、他人の言うことを鵜呑みにせず、自分たちが思うようにやるのが一番良いのです。これは弊社のプリンシプルにも「Anti-bias」として言語化している、社内で大切にしている価値観です。

「50人の壁」や「300人の壁」といった概念は、ある程度真実ではあるので、闇雲に無視する必要はありません。

しかし、結局は自分たちに一番合った独自のやり方を作るのが良いんじゃないかと思います。「それっぽく」することに意味はありません。独自のやり方こそが、差別化にもつながるはずだと思っています。

 

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家弓 昌也

家弓 昌也

名古屋大学大学院航空宇宙工学修了。三菱重工の総合研究所にて、大型ガスタービンエンジンの研究開発に従事。数億円規模の国家研究プロジェクトを複数リードした後、新機種のタービン翼設計を担当。並行して、社内の新規事業創出ワーキンググループに参加し、事業化に向けた研究の立ち上げを経験。 2022年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。趣味は、国内/海外旅行、漫画、お笑い、サーフィン。

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