『個のためのインフラになる』株式会社クラウドワークス 吉田 浩一郎社長が「起業家に必要な3つの素養」を語る(第1話)

「個のためのインフラになる」というミッションを掲げ、フリーランス業界No.1のクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」を運営している株式会社クラウドワークス。同社代表取締役社長 兼 CEO 吉田 浩一郎氏に、経営者の素養や、上場後の心構えなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの巻口 賢司が聞いた。(全4話)

社会に対して違和感を持ち、答えの有無に関わらず行動せよ

ーー吉田社長にとって、 起業家として重要な素養は何でしょうか。

1つ目は、「社会に対して何らかの違和感を持っていること」です。

それは、社会に属しながらも、「これはおかしい」「これは不便だ」という強い違和感や怒りや生きづらさ、もしくは社会に適合できないと感じた経験かもしれません。
そういった違和感は、その人の中で簡単には譲れないものとなっています。

既存の人間社会は、違和感よりも同一性を重視する傾向にあります。同じことを行い、共通のルールに従うことに満足している人は、起業という選択をしないでしょう。

ですから、起業家の重要な資質の一つは、「社会に対する強い違和感を持っていること」だと考えています。

 

吉田 浩一郎/1974年生まれ
東京学芸大学卒業。パイオニア、リード エグジビション ジャパンを経て、株式会社ドリコム 執行役員として東証マザーズ上場を経験した後、独立。アジアを中心に海外へ事業展開し、日本と海外を行き来する中でインターネットを活用した時間と場所にこだわらない働き方に着目、2011年11月、株式会社クラウドワークスを創業。クラウドソーシングサービス「クラウドワークス」を立ち上げ、日本最大級のプラットフォームに成長させる。

 

2つ目は、「行動力があること」です。日本の学校教育では、既に答えのある問題に取り組むことが中心となっています。

しかし、起業家は基本的に答えのない課題に対してアクションを起こすことが求められます。答えの有無や、納得できるかどうかに関わらず、行動を起こせることが重要な資質となります。

3つ目は、「復活可能なリスクを取ること」です。

復活可能なリスクとは、たとえ会社が失敗しても再チャレンジできる範囲のリスクを指します。過去の例を見ると、失敗後も周囲との関係性を維持しながら再起できる人と、致命的な失敗や迷惑をかけてしまい次のチャレンジが難しくなった人がいます。

つまり、復活可能なリスクは積極的に取りながらも、復活不可能なリスクは避けるという一線を常に意識することが大切だと考えています。

 

ピントが合わない事業ばかりしていた1回目の起業

ーー吉田社長ご自身が起業に至るまでの原体験はなんでしょうか。

起業の理由は色々ありますが、一番大きかったのは神戸の進学校での経験です。

私立の中高一貫校に入学したのですが、6年間、学業面では全く振るわず、180〜190人中で常に下から10番以内という成績でした。

ところが、学校では落ちこぼれだった私が、コミックマーケットで自作の漫画を出品したら30分で完売したのです。

この経験から、「人は場所が変われば認められる」ことがあるのだと気づきました。

勉強はできなくても、ボウリングで240点を出したり、ビリヤードでプロを目指すための研究をしたり、格闘ゲームでは勝ち続けて100円で遊び続けられるようになったり。

要するに、コミックマーケットでの経験も含めて、勉強以外で認められる方法を必死に探し続けた経験が、私の起業のきっかけの一つになったと思います。

 

ーードリコム上場後に独立を選ばれてから、複数の事業に挑戦されて、成功や失敗など様々なご経験をされたと思います。クラウドワークスは吉田社長にとって2度目の起業でしたが、過去の経験から得られた経営に対するお考えや学びについて、お聞かせいただけますでしょうか。

ドリコムから独立後の1回目の起業の時は、会社を登記をしただけで、何をするのか決まっておらず、会社名と社長という肩書があるだけの状態でした。

ドリコムの時もその前の会社の時も、誰かが事業やサービスを作っていて、私は営業をしていただけ。自分で何かを作らなければいけないのに、何を作れば良いのか分からない状態からのスタートでした。

そういった意味では、今から考えると、とてもピントの合っていない事業ばかりに手を出していたと思います。

例えば、単に上海でワイン消費が伸びているという理由だけで、上海でワインの流通ビジネスを立ち上げようとして数百万円を投資し、失敗しました。今考えると、上海でのビジネス経験もなく、中国人の知り合いもおらず、ワインビジネスも輸出入も未経験という、とても難しい挑戦でした。

また、「成長市場に行けば何とかなる」というような安易な考えで、ドバイの建設ラッシュに手を出したこともありました(笑)。

このように、何の関連性もない状態で次々と事業に手を出し、とにかく焦点が定まっていなかったのです。

 

 

ーーアイデアを考えることはできても、実際にドバイまで足を運ぶような行動力は誰もが持っているわけではないと思います。簡単なようで実はとても難しいと思うのですが、そういった行動力は、吉田社長がサラリーマン時代から持っていた特徴だったのでしょうか。

確かにそうですね。

幼稚園の卒業アルバムに、将来の夢は「考古学者」と書いてあるのですが、昔から一貫して解明されていないものに興味がありました。

宇宙の成り立ちや、恐竜はなぜ絶滅したのか、ストーンヘンジやピラミッドはどうやって建てられたのか。4〜5歳のときから今に至るまで、私にとっての基本的な原動力は、解明されていないものを解明することでした。

この好奇心については、脳の可塑性が関係していると思います。

脳の可塑性、つまり脳が変化する力は、10代でピークを迎えて、そこから衰えていくんですよね。そのため、ほとんどの精神疾患は10代20代に発症する確率が極めて高いんです。

脳は変容するので、10代20代という多感な時期は、様々な外部の刺激を簡単に100パーセント受け止めてしまい、自分が壊れてしまうほどまでに自分を変えられる、それが脳の可塑性なんです。

年を重ねるごとに脳の可塑性は低下し、心は安定する一方で、新しいものが受け入れにくくなっていきます。

客観的に今から考えると、当時は脳の可塑性が維持されていて、新しいものや見たことのないものに対してひたすら興味があるという状態でした。良く言えば好奇心旺盛、悪く言えば散漫な状態で、「上海でワイン、いいですね」という感じで、とりあえず飛び込んでいったのだと思います。

一番極端だったのは、マレーシアで国を作らないかという話があったときです。

マレーシアの中部にイポーという地域があるのですが、高速道路が通るので、周辺を10億円ほどで開発して国にしないかという話がありました。

知人に紹介された初対面の華僑と、クアラルンプールからレンタカーに乗り、二人でイポーまで行って、いよいよ「国を作る」エリアに入っていったんです。

自動車でガタガタと山道を進んでいくと、前にも後ろにも人と車がいなくなって、山道へどんどん入っていく。正直「ここで殺されるんじゃないか」と感じました。

藪だらけの山頂に着いて、本当に何もない場所で、「ここがお前の国だ」と言われて。もう「やばいな」と思い、とにかく生きて帰ることだけを考えていました(笑)。

今から考えると、よくそんなことをやっていたなと。そんな経験を経て今ここにいるので、相当面白い道のりだったなと思います。

 

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巻口 賢司

巻口 賢司

早稲田大学政治経済学部卒業後、日本マイクロソフトに法人営業として入社。国内の大手企業におけるデジタル化の促進に携わる。その後、ウォルト・ディズニー・カンパニーにて、スタジオ部門での映画の配給・マーケティングからコーポレート戦略部での新規事業開発など、幅広い業務に従事。2023年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。日台ハーフ・日英バイリンガルというバックグラウンドを活かし、グローバルな目線でのスタートアップ支援を志す。

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