『@cosme』を運営する株式会社アイスタイル。吉松 徹郎代表取締役会長 CEOが「起業家に必要な3つの素養」を語る(第1話)

「Beautyの世界をアップデートしながら、多くの人を幸せにしよう」というミッションを掲げ、リアル店舗「@cosme STORE」やECサイト「@cosme SHOPPING」等、ビューティ領域でネットとリアルを効果的に組み合わせた垂直型の事業を展開する株式会社アイスタイル。同社代表取締役会長 CEO 吉松 徹郎氏に、起業家の素養や、大手企業との提携時の心構えなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの巻口 賢司が聞いた。(全4話)

ビジョンを描く力・巻き込む力・鈍感力

ーー吉松さんにとって、 起業家として重要な素養は何でしょうか。

1つ目は、「ビジョンを描く力」です。ここには、「何をやりたいか」だけでなく、「コンセプトを作ること」も含まれます。

10年後、20年後と世の中が変化していく中で、私たちの事業が何を目指すのかを社内外に明確に伝えていく必要があります。このとき重要なのは、会社の「売上」や「規模」はビジョンではなく、あくまでも途中経過を示すKPIでしかないということです。

そのため、何を成し遂げていくのか、そのビジョンの解像度を上げていくことが非常に重要です。

ビジョンの描き方は、ユーザーとしての内発的な思いから始まることもあれば、世の中の課題から始まることもあり、アプローチの方法は様々でいいと思います。

もし起業家に重要な素養を1つ挙げるとすると、この未来を見据え、ビジョンを描く力が最も重要だと考えています。

 

吉松 徹郎/1972年生まれ
東京理科大学基礎工学部卒業後、アクセンチュア株式会社入社。
1999年7月に有限会社アイスタイル(現:株式会社アイスタイル)を設立し、代表取締役社長に就任。同年12月、コスメ・美容の総合サイト「@cosme」をオープン。
2012年、東証一部上場。2022年9月より代表取締役会長に就任。現在はアジアを中心にグローバルにビジネスを展開。
公益社団法人 経済同友会幹事を務めるほか、公益社団法人アイスタイル芸術スポーツ振興財団を設立し、理事長として現代アートの制作・展示への助成支援やスポーツイベント開催活動への助成支援を行うなど、活動の幅を広げている。
「第6回ニュービジネスプランコンテスト」優秀賞(1999年)、ICS「第14回 ポーター賞」(2014年)、「EY Entrepreneur Of The Year Japan 2018」 Growth部門 特別賞(2018年)など、受賞歴多数。

 

2つ目は、「巻き込む力」です。

当たり前ですが、事業は1人ではできません。社内外を問わず、他者との関係を築き、協力を得られる力が不可欠です。

3つ目は「鈍感力」で、これは私の座右の銘である「折れない心」にも通じます。

世の中が刻々と変化する中で厳しい時期を迎えたり、周りから様々な意見を言われることもありますが、それらに過度に囚われず、楽観的に、前向きな姿勢を保つことが大切です。

実際、私は会社の存続や自分の描く目標の実現を疑ったことはありません。

周囲からは「鈍感だ」と評されることもありますが、どんな状況でも前を向き続けられることが非常に重要だと実感しています。

 

ーー今お話された素養は、経営者として実際に事業を営まれていく過程で身につけられたのでしょうか。それとも、吉松さんの元々の性格や経験から備わっていたのでしょうか。

前者だと思いますね。

私の家族は全員サラリーマンで、周りに起業家もいませんでした。私の時代は、ベンチャーを立ち上げる人もほとんどおらず、今のようなエコシステムもなく、ベンチャーキャピタルという言葉すら聞いたことがないような時代でした。

学生時代は理科大の単なるオタクだったので、正直自分がこうなるとは夢にも思っていませんでした(笑)

特に起業の準備や心構えもなく、ただ「インターネットの台頭により、世の中が変わるだろう」という思いで事業を始めました。

振り返ってみれば、ビジョンを描く力や人を巻き込んでいく力というのは、自然と身についていったのだと思います。

 

純粋に「自分が成長できる場」として、ベンチャーを選んだ。

ーー吉松さんは新卒でコンサルティングファームに入社後、起業・独立の道を選ばれました。当時の想いや経験を振り返って、起業を志すことになったきっかけについてお聞かせください。

現在は、大学卒業時に将来の選択肢として起業を考えたり、準備をしたりする人が多いと思います。しかし、私たちの時代にはそういった選択肢はほとんどありませんでした。

当時は「良い企業に就職する」のが一般的な進路でしたので、起業という考えは全く持っていませんでした。

ただ唯一あったのは、「自分がどう成長していきたいか」という強い思いだけでした。

そのため、社会人1年目に、一般的な企業よりもハードな環境だった当時のアクセンチュアを選びました。10年後に同期100人のうち残るのは10人もいないと言われるような会社でしたが、そんな環境にワクワクして入社しました。

入社から3年が経ち、就職活動を共にした仲間が突然会社を辞めるという話を聞き、

友人を訪ねてみて初めてベンチャーという選択肢を知りました。

その時、社会人になってから30歳までの6〜7年間について考えたのです。

「コンサルティングファームで6〜7年過ごすか、それとも3〜4年ほどコンサルティングを経験したあとに残りの3〜4年でベンチャー企業を立ち上げるか、30歳時点でのマーケットバリューはどちらが高いだろうか。」

こう考えた時に、自分でベンチャーを始める方が面白いと思い、起業を決意しました。

世の中を変えたいとか、IPOを目指したいというよりも、純粋に自分が成長できる場としてベンチャーを選んだことが、私の起業の最大のきっかけでした。

正直なところ、30歳になったら他の会社に戻ることも選択肢の一つかなと、始める前は考えていました。そのくらい気負わない気持ちで始めたのです。

 

ーー当時、吉松さんご自身にとっても化粧品(コスメ)は一つの商材に過ぎず、深い知見があったわけではなかったかと思います。化粧品の可能性を感じ取り、この業界で挑戦しようと決意されたきっかけは何だったのでしょうか。

当時、Amazonが本屋から事業を広げていたこともあり、「Amazonにとっての本」に最も近い何かを探していました。

再販制度があり、紙とインクのようにあまり原価がかからず、さらに多くの業種と企業が存在する業界を探したところ、化粧品がまさにそれだったのです。

私は共同創業者の山田と「@cosme」を始めましたが、山田が化粧品業界で働いていて、業界に詳しかったこともあり、構想はどんどん膨らみました。

これは運命的なものを感じましたし、大きな可能性を感じましたね。

特に当時はまだインターネット業界に参入者が少なく、「化粧品について調べているのは自分くらいしかいない」という感覚があったので、これは大きなチャンスだと確信しました。

 

ーーその中でビッグドメイン(cosme.net)の発見や、山田さんのメルマガの購読者数の伸びという流れが重なったということなのでしょうか。

本当にタイミングが重なりましたね。化粧品業界に出会ったことと、ドメインが空いていたこと。これらが重なっていなければ、もしかしたら起業していなかったかもしれません。

今なら500人程度のフォロワーは珍しくありませんが、山田のメルマガの会員数の伸びを見て、当時、その数字の持つ可能性に気づくことができました。

25年前に戻っても、あの数字の重要性に気づいた私たちの判断は正しかったと言えると思います。あの時のワクワク感は今でも鮮明に覚えています。

 

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