「プロダクトアウトだけでなく、常に”マーケットを意識”する」デジタルグリッド株式会社 豊田 祐介社長(第2話)

「エネルギーの民主化を実現する」というミッションを掲げ、東京大学研究室から誕生したデジタルグリッド技術の普及に向けて、電気を使う企業が主体的に電力を調達する取引プラットフォームを提供するデジタルグリッド株式会社。2025年4月に東証グロース市場に上場した同社 代表取締役社長 豊田 祐介氏に、経営者に必要な素養や、電力業界及び再生可能エネルギーの今後について、DIMENSIONビジネスプロデューサーの古家 広大が聞いた。(全4話)

代表として最初の仕事は“整理解雇”

ーースタートアップの起業家には、ある事業を広めることを目的に会社を立ち上げる方もいれば、会社を経営することに夢を持って起業される方もいらっしゃいます。豊田社長はいかがでしたか。

明確に前者です。大学院を修了後、ゴールドマン・サックスに入社してからも、ずっと「デジタルグリッドに携わりたい」と思っていました。

デジタルグリッドの事業をやりたいという想いがあり、世の中にそういった会社が存在しないのであれば、先生と共に会社を設立して世の中に広げていきたいと考えた、という流れです。

 

ーーメンバーから代表へ役職が変わる場合、他のメンバーとのコミュニケーションなど躓きやすいポイントがあるかと思います。豊田社長の代表就任においてはいかがでしたか。

資金が足りない状況だったので、私が代表へ就任して最初に行った仕事は、社員の整理解雇でした。

整理解雇の実施を決めた理由は、当時は資金を調達できるか不確定であったことに加え、解雇された方は少なくとも失業保険を受け取ることが出来るからです。

失業保険は国の制度であるため支払いが保証されますが、一方で会社に残っていただいた場合に資金調達が失敗すると、給与の支払いができず、社員の方々に更に大きな負担をかけてしまう可能性がありました。

そのため、社員には弊社から完全に離れて失業保険を受け取るか、業務委託で続けていただくか、という選択をしていただきました。

そんな状況下で、14人中12人の方が業務委託で残ってくださりました。

元々デジタルグリッドに期待していただいたことが100%は叶えられない状況にしてしまったことに責任を感じつつも、「多くの方が残ってくれた」という事実は私にとって本当にありがたかったです。

 

ーー多くの方が残られたということは、やはりメンバーの方々も、「この事業なら、豊田社長なら、描く未来を実現できるだろう」ときっと思われていたんですね。

当時の皆さんのお気持ちは分かりませんが、電力を民主化したり、分散化された電源を自由にやり取りできるような社会に希望を持ってくれていた方々は多かったのではないかと思いますね。

 

プロダクトアウトだけでなく、常に”マーケットを意識”する。

ーー御社は電力取引プラットフォームを起点として、再生可能エネルギーの調達支援や、蓄電池事業への大型投資など事業の拡大を目指されています。こうした事業の多角化を進めるにあたって重視していることをお聞かせください。

私は「今後、世の中に必要となるか」というマクロトレンドを重要視しています。

日中の電気が使われずに捨てられてしまっていたり、太陽光に依存してしまうエリアが出てきているということから、「昼間に余った電気を夜間にタイムシフトする役割」が必要になるだろうと考え、現在、蓄電池事業への100億円の投資を進めています。

再生可能エネルギー事業についても、卒FITと呼ばれる「FIT(固定価格買取制度)の期間終了」によって、「作った電気を、制度に頼らずに売りたい人々」が増えるだろうと思い、再エネプラットフォームを始めました。

 

 

「強烈にやりたい未来」は今も変わらずありますが、バランス感覚が大切だと思っています。

1年や数ヶ月先のことばかり注力していてはベンチャーらしさは無いけれど、10年先のことをやるにはディープテックの世界に足を踏み入れないと難しい。

その間を取るように、私は3年〜5年できちんとマネタイズができるかどうか、「マーケットトレンドの風が吹いているか」を考えることが大切だと思っています。

私達は2019年に作ったものを2022年にローンチし、事業が大きく伸びました。

これは私達が意図したというよりは、長く赤字の状況が続いている中で、2022年に「風が吹いた」ために起こった出来事だったのです。

どれほど優秀なチームメンバーがいてビジネスにコミットしていても、そこに「マーケットがなければ伸びない」ということを痛感しました。

現在もプロダクトアウトを考えることは多いですが、平行して常にマーケットも意識するようにしています。

 

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古家 広大

古家 広大

早稲田大学卒業後、三井住友信託銀行に入行。 広島にて個人向けFP業務を行った後、大阪にて法人RMを経験。非上場からプライム市場の企業まで担当し、融資や不動産など信託銀行の幅広いソリューション営業に従事。また、ESGやSDGsをはじめ、CGC改訂への対応支援も行い、グローバルで勝ち続ける企業への成長を非財務領域も含めてサポート。 2022年DIMENSIONに参画。LP出資者からの資金調達と国内スタートアップへの出資・上場に向けた経営支援を担う。

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