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2000年の創業以来、大企業向けの新規事業創出・産業プロデュースを数多く手がけてきた株式会社ドリームインキュベータ(以下、DI)。今回は、DI在籍中にDIMENSIONファンドを立ち上げ、2021年にMBO・スピンアウトを経て独立した宮宗と、DI代表取締役社長の三宅孝之氏による特別対談を企画。前半では「事業を大きく育てる」ポイントやスタートアップとの向き合い方について、後半ではDIMENSIONキャピタリストの黄が、MBO・スピンアウトの舞台裏について話を聞いた。(全4話)
宮宗 孝光(以下、宮宗):今回はドリームインキュベータ(以下、DI)の代表取締役社長の三宅さんにお時間をいただきまして、ありがとうございます。
我々DIMENSIONはもともとDIからMBO・スピンアウトした背景を持つのですが、オフィスへ伺うのは5年ぶりとなりました。三宅さんとは時々お会いしてはいるんですけどね。
今日は、事業創造や産業プロデュースといった「事業を大きく育てる」というテーマについてお伺いできればと思います。我々はベンチャーキャピタルなので、大企業の視点はもちろんのこと、スタートアップがどうやって大企業とコラボレーションすると良いのか、逆に大企業から学べることは何か。終盤ではMBOやスピンアウトについてもぜひお聞きできればと思います。よろしくお願いいたします。
三宅 孝之(以下、三宅):どうぞよろしくお願いします。

三宅 孝之/1970年生まれ
京都大学工学部卒業、京都大学大学院工学研究科修了(工学修士)
通商産業省(現 経済産業省)、A.T. カーニー株式会社を経て、DIに参加。2021年に代表取締役社長に就任。

宮宗 孝光/1974年生まれ
東京工業大学・大学院を卒業後(飛び級)、シャープ株式会社を経て、2002年からDIにて20年間、大企業とスタートアップの戦略策定、幹部採用、M&A、提携、出資・上場支援に従事。2019年にDIMENSIONファンドを立ち上げ、2021年MBO・独立。
宮宗:三宅さんは20年以上、大企業のコンサルティングをされていて、新規事業の立ち上げや事業創出を数多く手がけていらっしゃいます。うまくいった例も、うまくいかなかった例もある中で、うまくいったときの共通点やポイントがあるのではないかと思っています。大企業から新規事業、あるいは大きな産業をどう創っていくのか、そのポイントを伺えますか。
三宅:私たちは大企業向けに新規事業を作るコンサルティングを昔からやっているのですが、始めた当初はまったくうまくいきませんでした。何回か失敗して、これは作り方自体を変えなければいけないと思い、ぐるぐる考えた末にたどり着いたのが、今日お話しする内容です。
大前提として、10億円や100億円の事業というのは、スタートアップであれば十分大きい規模でも、大企業にとっては「小さいビジネス」と呼ばれてしまうんですね。
宮宗:確かに、大企業では小さいと言われてしまいますよね。
三宅:仮に100億円でも、新規事業としてはものすごく大変なはずなのに、大企業からすると「見えない」「作っても無駄だ」と言われてしまう。私たちが支援しているお客様の多くは売上規模で1兆円以上です。
一方で、既存の業界の中でいろいろな新規事業を作ろうとしても、ほとんどの領域はすでに成熟していて、やれることはやり尽くされている。だから、まったく違う考え方をしないといけません。
私たちはそれを「ビジネスプロデュース」として5つのポイントにまとめています。

三宅:まず1つ目は、業界をまたがる領域です。
たとえばヘルスケアと自動車、通信と小売りなど、業界を2つ以上、できれば3つ以上またげると、より新しいチャンスが生まれます。日本企業は戦後、業界を決めて成長してきたので、業界単位ですごく最適化されているんですね。
宮宗:縦割りで最適化されている、ということですよね。
三宅:はい。海外以上に業界の壁が高い。業界の中では最適化されているんですが、他の業界のことはまったく知らないということが結構ある。そこを混ぜると、いろんなことが起こり始めます。
自分の業界以外のところで仲間づくりをする、という発想が大切です。
2つ目は、ルールを変えること。
私はもともと経済産業省にいたので、法律やルールを変えるということを普通にやっていました。大企業のコンサルティングにおいても、ルールを変えられればものすごくインパクトがあります。
これを新規事業側から見ると、ルールが変わる瞬間には大企業にとっても一気に大きなビジネスができることがあるわけです。
3つ目が、社会課題へのコミットです。
少子高齢化、環境問題、インフラ老朽化……世の中には社会課題がたくさんあります。これを解決しようとするのはとても難しいですが、解決できたときのインパクトは大きい。
私たちは昔から「社会課題の大きさは、潜在的なビジネス規模の大きさだ」とよく言っています。
宮宗:なるほど。
三宅:社会課題にコミットすると、実は仲間づくりもしやすいんです。
大企業同士だと特にそうで、「一緒にこの大変な社会課題に取り組もう」という話になりやすいし、「その社会課題を解決するためにこの法律を変えましょう」ということもやりやすい。1つ目・2つ目のポイントにレバレッジが効くという意味でも、社会課題へのコミットはとても大切です。
それをやろうとするときに重要になるのが、4つ目のポイント「俯瞰」です。世の中全体がどうなっていて、どのような社会課題が存在していて、どんなプレイヤーが産業をどう変えなければいけないか、という視点が必要になります。
そして最後の5つ目が、ビジネスモデル設計。自社だけでなく、関わる人全員がWinになるような設計が必要です。
この5つが全部できれば、3000億円規模の市場・事業規模のものが生まれてくる。大企業はここを狙わなければいけないと思っています。

宮宗:普通、企業活動というのは最終的に自社がどう儲かるかという発想になりがちですが、三宅さんの考え方はそうではない。最初の「仲間づくり」も、自社のためというより、社会課題へのコミットがあってこそ、既存の法律を変えるという話にもつながっていく。
誰と組むかがすごく大事だと思うのですが、仲間づくりで押さえておいた方がいいポイントはありますか。
三宅:いろいろあるとは思いますが、社会課題に対してどの企業も困っている、という前提があります。特に大企業の中でも視座の高いエース級の人たちは、そこに共感してくれることが多い。
まず共感できる人を見つけること。そして、企業活動である以上、彼らにとってのメリットもきちんと設計してあげることが大切です。
宮宗:そのような人材の探し方のようなものはあるのでしょうか。どこに行くとそういうエース級の人と出会えるのか、気になります。
三宅:これは私たちが「わらしべ長者」と呼んでいるやり方ですが、いきなり大きなところを狙うのではなく、まず近しいところ、仲の良いところに行って「こうこうなんだけど、どう思いますか」と話してみる。そして「これをやるにあたって、誰か話を聞いた方がいい人がいれば紹介してください」とお願いする。
それをどんどん繰り返していくと、コンセプトが膨らんでいきます。途中でコンセプト自体が変わることもありますし、注目すべき社会課題そのものが変わることもありますが、それでいいと思っています。

宮宗:スタートアップだと「諦めない」ということがよく言われますが、大企業の場合、担当の方が諦めずにやり続けられるかどうかも大切ですよね。その後押しをしているのが三宅さんたちDIなのかなと思うのですが、諦めないためのポイントはありますか。
三宅:1つの企業だけで諦めずにやり続けるのは難しいこともありますが、スタートアップと違って大企業には体力があるので、時間軸を長く取ることができます。テーマが多少変わっても、また設計し直すこともできる。間口を広めに取って、いくつかの社会課題を持ちながら新規事業に取り組む。「この新規事業で」と決め打ちするのではなく、いくつか並行して仲間づくりをしながら、どこかでつながるかもしれないことをやっていく、という感じが理想的です。
宮宗:制度やルールの部分も、大企業とスタートアップの距離を感じやすいところだと思います。法律や政策を変えたことがない人がほとんどだと思うのですが、最初の一歩として何に取り組むといいですか。
三宅:いきなり法律を変えることを目的にしなくていいと思います。ただ、「制度や規制があるからできない」という発想はまずやめること。
私たちも社内のミーティングで「法律でこのルールがあるのでできません」というセリフは許していません。「それなら変えればいいじゃん」と。
変えてもいいんだという前提で設計していくと、結局「そんなに大きく変えなくていいじゃん」という発想にたどり着くこともある。
ルールや法律そのものよりも、ルールが思考を妨げてしまうことの方が良くない。まずは「変えてもいいんだ」と思って考えてみる。そこから始めてもらえるといいと思います。
宮宗:発想の転換というお話がありましたが、三宅さんのご著書では「妄想」という言葉も使われていますよね。構想の第一歩として、どこから具体的に落とし込んでいけばいいのでしょうか。
三宅:私の中では「構想」と「妄想」は定義が違います。世の中の愚痴のようなことを日々飲みの場とかで言っているじゃないですか。あれが「妄想」。
ただし、それを言って忘れるのではなく、次の日に「あれってどういうことなんだろう」「誰が関わっているんだろう」と書き出してみる。それをいろんな人に聞きに行き、ディスカッションしていくと、「なんだ、そうじゃなかったのか」という気づきを通じて、妄想がどんどん進化していく。
さっきの「わらしべ長者」を経ながら、実現可能なものになったときに、それを「構想」と私は呼んでいます。
宮宗:居酒屋談義でいいんだと、最初は。
三宅:はい。まずはそれでいいので、次のステップをやってもらうことかなと思います。
強みの活かし方についても同じです。大企業であれば、自社の中に必ず何らかの強みがあります。重要なのは、それを外部の課題や他社の資産と結びつけることです。とにかく外に行って聞いてみる、調べてみる、勉強する。
社会課題について書かれた本を10冊くらい読むと、いろんな人がいろんなことを言っていて、それを俯瞰してつなげていくと、構想に近づきます。
あとは、大企業の場合、結局は上司の了解を得られるかが大きいので、「上司の上司を探してきて」とよく言っています。部長であれば、その上の役員が何を考えているかを把握して、「これをこう言うといいですよ」と伝えると、部長が味方になってくれる。
会社全体としては、お客様に言ってもらう、何ならお客様の先のお客様に言ってもらう、というように、少し遠いところから環境を作っていくのも良いやり方です。
>第2話 10/13(火)配信予定
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