起業家に必要な「3つの素養」—ビジョン構築力・グリット力・自己内省力— アカツキ 塩田元規CEO(第1話)

出発点は「夢」を描く力

――起業家にとって重要な素養を3つ挙げるとすると何でしょうか?

1つ目は「ビジョン構築力」。つまり「夢」を描く力です。

2つ目は「グリット力」。やりきる力です。

3つ目は「自己内省力」。自分の内側を変えていく力です。

つまるところ、起業家のすることとは「夢」を描き、それに向かってひたすら「やりきり」、「自分を省みながら」成長していくということにつきると思います。

 

塩田 元規(しおた げんき) 株式会社アカツキ・代表取締役CEO/1983年島根県出雲市生まれ。
横浜国立大学電子情報工学科を経て、一橋大学大学院MBAコースを卒業。2008年に株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、広告事業本部ディレクター等を経験。2010年、株式会社アカツキを設立。モバイルゲームで次々とヒット作を創出し、2016年3月に東証マザーズ上場、2017年9月には東証一部への市場変更を果たす。

 

――では、その3つの素養について、重要だと思われる理由をそれぞれお聞かせください。

うまくいく起業家というのは、周囲に応援されているものです。では、人が共感したり応援するために何が必要かというと、ピュアに描かれた「夢」だと考えています。

1つ目の「ビジョン構築力」は、社員や社外メンバーが拠り所とするための出発点となるものであり、起業家には必要不可欠な素養です。

2つ目の「グリット力」、いわゆる「やりきる力」が必要なのは、起業家は幾度も困難にぶつかります。どんな困難にぶつかっても、諦めてしまっては成功できません。逆にいうと、諦めなければ、成長してどんな困難も乗り越えることができます。頭の良さやスキルよりも、逃げずに「やりきる力」が起業家には重要です。

 

困難こそが起業家の人生を彩る

――「やりきる」ためには、やはりビジョンが重要になってくるのでしょうか?

そうですね。「ビジョン」がないと困難にぶつかった時にやめてしまいます。そのため、重要なのは、「うまくいくこと」ではなくて「やりたいこと」から事業をスタートすることです。

ただし、ここで気をつけなくてはいけないのが、「ビジョンは途中で変えても良い」ということ。真面目な起業家ほど、最初に描いたビジョンの字面に固執してしまう傾向があります。こだわるべきはビジョンの字面ではなくて、何故それを成し遂げたいのかという理由の部分。その理由が深ければ深いほど、周りの人が共感するし、自分自身が諦めない源泉にもなります。

 

―― 一見、乗り越えられないような大きな困難にぶつかったとき、どのような気持ちで挑むことが大切でしょうか?

起業家にとって困難は、その先に待つ感動のためのスパイスであり、その先には素晴らしい世界が待っている、と保証してあげるのが起業家の役割でもあります。

例えば、ゼロから信頼をつくりあげて初めてお客様を獲得したとき。資金繰りを乗り越えて初めて社員を雇ったとき。困難であればあるほど、その先に得る感動は大きく、忘れられない体験になります。

困難があるからこそ人生は楽しいし、乗り越えた体験が、起業家の人生を彩ると思っています。

 

「グリット力」と「自己内省力」の両立

――3つ目の「自己内省力」についてはいかがでしょうか?

「自己内省力」とは、何か課題が起きた時に、原因を自分の外側に探すのではなく、自分の内側に探す力です。

これは起業家というよりも、世の人みんなに言えることですが、「過去」と「他人」は変えられないけれど、「未来」と「自分」は変えられます。なので、どんなピンチでも、原因を自分の中に見出すことが重要です。

例えば誰かが辞めてしまった時に、「あのメンバーが悪い」と言っていると、必ず同じ課題が将来繰り返されます。そうではなくて、「これは組織・経営者の課題があるのではないか」と、自分自身を省みれば、変革のチャンスに変えられるわけです。

このように、すべての課題は自分からスタートする、という意識で世の中を見ることができれば経営者は楽しくなるし、ひいては周りのメンバーも楽しくなります。

 

――自らの変化を恐れない姿勢は、先ほどの「ビジョンは変えてもいい」という言葉と通ずる部分がありますね。

起業家は頑なな人が多い気がします。自分が正しいと信じたやり方を何がなんでも貫き通さないといけない、と考えがちです。

その頑固さも大事なことなのですが、「グリット力」と「自己内省力」は両立されてはじめて機能するものです。もし、自分の信じるやり方が間違っていると判断したときには、すぐに変化させるのも重要な素養です。

まずは「ビジョン構築力」でゴールを定める。ビジョンに描いたゴールにたどり着くための道のりは、つねに「自己内省」を繰り返して成長させながら、その時々で正しいと信じた道を「やりきる」こと。

これが成功する起業家にとって重要な素養だと思います。

※本記事は配信日現在の内容です

 

>第2話「起業時から向き合い続ける、答えなき問い」に続く

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アカツキ 塩田元規CEO 著書 「ハートドリブン 目に見えないものを大切にする力」発売中

 

DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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