#人事・組織
『途上国から世界に通用するブランドをつくる』というビジョンのもと、バングラデシュをはじめとしたアジア6か国でのものづくり、そして国内外38店舗を展開する株式会社マザーハウス。2006年の創業以来、代表の山口絵理子氏とともに同社を牽引してきた山崎大祐 代表取締役副社長に、経営者の素養、世界で通用する事業作りについて聞いた(全6話)
「死なない程度にたくさん怪我をしろ」
ーー「ゼロからイチ」を作るために経営者として意識していることをお聞かせください。
マザーハウスでは「0を1にする人」「1を10にする人」「10を100にする人」といった呼び方でそれぞれの事業フェーズごとに明確に戦略や役割分担を変えています。
「0を1にする人」というのは、ある意味ホームランバッターみたいなもの。当たれば大きいけれど、三振もたくさんする。それでも我々のように「自分たちのやりたいこと」をベースに事業をゼロイチで立ち上げるからには、三振覚悟で思いっきり振りに行かないといけません。
このときに私が意識的に発信しているのは「死なない程度にたくさん怪我をしろ」ということ。三振して、怪我してはじめて気づくことがたくさんありますし、チャレンジの絶対量が重要です。一方で、致命傷になってしまっては意味がありません。
例えばマザーハウスが入谷に初出店した際には、一般的には2,000万円くらい開店費用としてかかるところを、店の本質を失わない形で一番ローコストな開店方法を考え、結果的に200万円で店を作りました。
2,000万円で1回失敗するなら、200万円で10回失敗した方がいい。そうやって「0を1にする」際は致命傷にならない程度の失敗数を増やすようにすること。これは経営者としての判断が重要な部分だと思います。
マザーハウスを作り上げた創業者間の役割分担
ーーゼロイチフェーズでは三振するリスクを想定しながらも、打席にたくさん立つことを許容する度量が経営者には必要ということですね。
これは役割分担もあると思います。マザーハウスの場合は山口が「0を1にする」のが得意で、私は「1を10にする」のが得意です。でも間違えてはいけないのが、私がゼロイチに全く関与しないわけではないということです。
ゼロイチフェースにおける私の役割は、その事業が10にも100にも成長しうるかどうかの「1の見極め」です。「0を1にする人」に向き合い続け、「1」を見つけた瞬間に資本を引っ張ってきて投下する。つまり「1を10にする人」は、「0を1にする人」のグレートサポーターにならなくてはいけないのです。
この点は創業当時からすごく意識していて、成否が読めないことでも「やってみたらいいじゃん」というスタンスを大切にしてきました。山口がバングラデシュに行くと言った時にも、全員が無理だと反対する中で「面白いじゃん」と言ったのは私だけだったそうです。
今でも新規商品開発のことを山口と常に議論していますし、山口が横で商品をデザインしながら私が事業計画を整理するということもしょっちゅうあります。
「0から1」を生み出せるかどうかが会社の未来を作る上で必要不可欠だからこそ、「0を1にする人」のグレートサポーターであり続けることが私の使命だと思っています。
ーー事業フェーズに応じて、役割分担を明確に分けられているのが印象的です。
もうひとつ役割分担のあり方として「人・組織と向き合う人」「ビジョン・バリューに向き合う人」「お金に向き合う人」という分け方があります。言い換えるとヒト・モノ・カネですね。
マザーハウスの場合、山口は徹底的に「ビジョン・バリューに向き合う人」。ものづくりの過程でもちろん工場の職人さんと向き合ってはいますが、究極的には「モノ」をとことん突き詰める人間です。逆に私は「ヒト」「カネ」の部分を見ています。
この役割分担のあり方はメンバーや事業によって異なるとは思いますが、適材適所を常に意識することは創業期のベンチャーにとっても重要だと思います。
>第4話「自分たちの未来を信じ切れ。経営者に求められる覚悟とは」に続く
>第2話「人生を変える出会いを引き寄せる「たった1つ」の方法」に戻る
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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