#インタビュー
IDaaS(Identity as a Serviceの略称)を中心とするクラウドセキュリティサービスである「HENNGE One」を提供するHENNGE株式会社。1996年創業の老舗ながら、2019年に東証マザーズ上場を果たし、近年の働き方改革を追い風に急伸を続けているSaaS企業だ。同社の代表取締役社長兼CTOを務める小椋一宏氏に、起業家の素養や成長事業の創り方などについて聞いた。(全4話)
ダイバーシティをコアに組織をつくる
ーー先ほど「失敗を100回する」とおっしゃいましたが、失敗には責任も恐れも伴います。この失敗を許容する文化をどのようにして社内に浸透させているのでしょうか。
コアなエンジンになるのが「ダイバーシティ」だと考えています。
新しいことに挑戦し続ける、失敗し続けるために必要なことは、みんながちょっとずつ違うことをし続けること。横並び型の組織では新しいことや意味ある失敗は生まれません。
我々の場合、コアな価値観である「テクノロジーの解放」という経営理念、“EAT UNRIPE FRUITS AND MAKE MISTAKES EARLY.”という考え方、いつか世界中に我々のSaaSを届ける、という大きな方向性は共有しているものの、ほかの細かい手段はどんな方法でもいいと考えています。
組織がダイバース(多様)だと、違うことが当たり前。食べるものも言葉も労働観も違いますので、結果的に変化に寛容で、チャレンジする人を応援する文化が生まれます。誰かが毎日挑戦しては失敗して、会社全体も変化し続けるサイクルが作られるのです。
この「ダイバーシティ」がコアエンジンとして機能すると発見してからは、ひたすらダイバシティを推進する方向で組織作りをしています。社名をHENNGE(変化)に変えたのも、その文化がコアであることを浸透させるための手段なのです。
ーーどのようにしてダイバーシティがコアだと発見されたのでしょうか。
創業時から失敗を許容する文化を大切にしてきたつもりではありましたが、海外のメンバーを受け入れ(現在では2割程度が海外出身)はじめて、実は自分たちが一様な会社だったと気づいた側面があります。
いまもまだダイバースな会社になりきれているとは思っていませんが、ダイバーシティが必ず未来を切り開く力になると信じています。
ーー多様な人材を採用する際に、どのようなポイントを大切にされていますか?
社員が多様になることを推進するにつれ、「何が共通すべき点なのか」を考えるようになりました。
そこで策定したのが、HENNGEが大切にしている企業文化や価値観を体現する行動指針“HENNGE WAY”です。これを共有している人材である限り、多様であればあるほど良いという前提で採用を行なっています。
また、“HENNGE WAY”も変化し続ける前提で作成しています。あえて“HENNGE WAY 2019”などと年号をつけることで、「2019ってなんだか古いよね」と思わせる仕掛けも作っているのです。
このようにして「ダイバーシティ」をコアに据える組織作りに、いまも挑戦している真っ只中です。
ーー今後のHENNGEが目指す展望をお聞かせください。
究極的に目指すのは「我々が変化(へんげ)し続けることで、社会全体が変化し続ける」ことだと思っています。
これをミクロ視点で見ると、我々が変化し続けることで、その変化のパワーをお客様に届けたい。
今であればSaaSを使ったワークスタイルにお客様が移行することで、より会社がダイナミックに変化していく力が得られる。私たちが「テクノロジーを解放する」ことで、お客様に変化する力が生まれると信じています。
もう少しマクロな視点で見ると、我々が「変化する組織の見本」になりたいと思っています。
例えば日本社会というスコープを見てみると、少子高齢化が進んでいて、労働生産性の低下が問題視されています。企業は違う経営スタイルに変わることができなければ、日本は沈没する方向に進んでしまうでしょう。
私たちはその流れを変えたい。
20世紀の日本は、新しい人がどんどん生まれて労働資本が充実していて、為替レートは弱く、労働集約型ビジネスで生み出した製品を輸出すれば外貨が獲得できてハッピーな時代でした。
21世紀では人は減り、為替は強い。当然ながら同じ戦略は通用しません。
もっと多様性の中からイノベーションを生み出し、労働生産性を上げ、新しい価値を作り出さなければいけませんが、この方向に変わるための「見本」が日本にはいない状態です。
我々は社員の1/4が外国人で、SaaSをとことん使いこなして生産性を上げ、まだ規模は小さいながらも上場企業にまでなることができました。
会社をもっと成長させることで社会に対する影響力を大きくし、「HENNGEを見本にしたらいい」と思われるような存在になりたいと考えています。
また、スコープを世界に広げると、日本が世界最先端の高齢化社会として直面している課題に、将来的には同じように周りの国々も直面するでしょう。
そのときに我々が先端事例として「変わり続ける」パワーを届けるお手本になれれば、より大きな社会的意義も作り出せるんじゃないか思っています。
そのために「テクノロジーの解放」という理念に基づき、これからもお客様にSaaSを使ったワークスタイル変革を届けていきたいと考えています。
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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