#起業家の素養
「Switch to The RICH. クリエイティブで、世界を豊かに。」をミッションに掲げ、動画マーケティングをサポートする『リチカ クラウドスタジオ』を提供する株式会社リチカ。2021年にはDIMENSIONを含め約8億円の資金調達も実施し、躍進を続けている。同社代表取締役社長 兼 Co-CEO松尾幸治氏に起業家の素養、組織づくりなどについて聞いた。(全4話)
「自分たちが欲しい」から「シェアNo.1」へ
ーー創業初期は受託事業をやりながら、あるタイミングでプロダクト事業に転換されました。その転機やプロダクトづくりのポイントをお聞かせください。
私たちの場合、「自分たちが困っていたこと」を解決するプロダクトを出したのがスタートです。
映像制作の仕事が増えていく一方で、SNS配信のニーズは細分化し、1本CMを作るのに数百万円予算がいただけていたものが「数十万円しか出せません、一週間で」というお話が増えてきた。
この現象を見たときに「広告制作業は二極化する」と思いました。すごくハイエンドなコンテンツと、ひたすらPDCAを回して消費されるコンテンツに分かれていくだろうと。
そして、後者の消費されるコンテンツを労働集約で続けてしまうと、ただの儲からないビジネスになってしまいます。これはシステムで解決した方が良い、というとこからプロダクトを作ったんです。
今から考えるとMVP(Minimum Viable Product)は本当にひどくて、2ヶ月で作ったためログイン画面すらない(笑)。
それでもありがたいことにリリースがバズって、一週間で200件くらいお問合せがあり、自分たちと同じ課題を抱えている人が多くいることを感じた瞬間でした。
ーーそこから事業としてグロースしていく上で、ポイントだったことをお聞かせください。
PMF(Product Market Fit)までの道のりは険しかったです。
初期はテレビ局の人達のお問い合わせが多かったんです。そしてログイン画面も無いような(笑)プロダクトなのに、3ヶ月契約、月10万円とか出してくれるわけです。3ヶ月で30社、月商300万円くらいになったので「おーっ!」とメンバーで大喜びしました。
しかし喜んだのもつかの間、プロダクトのクオリティが足りないからと、3ヶ月でほとんどのお客様がチャーン(解約)していってしまいました。
そんな中で、たまたまご契約いただいた代理店の方が「これ、実はWeb広告で便利なんだ」と言うお声を頂きました。なぜかと聞いたら「Web広告は1〜2週間で賞味期限が切れるから、作り続けないといけないし検証し続けないといけない。けれど、テレビCMほどクオリティが高い必要は無い」と。
そこからヒアリングを重ね、リリース半年後の時点で一気に広告代理店向けサービスに舵を切り、プロダクトを作っていきました。デジタル広告専用、というのを打ち出してからPMFし、一気にグロースすることができました。
おかげさまで、デジタル広告に特化した「運用型クリエイティブクラウド」としてシェアNo.1、累計2,000社以上をご支援させていただいています。
資本政策=仲間集め
ーーべンチャーキャピタルとの付き合い方で意識されたことは何でしょうか。
エクイティでの資金調達はよく「体の一部を渡す」と例えられますが、スタートアップにとっては本当にそれくらい重要であり、かつ後戻りができないイベントです。
なので私は資金調達を仲間集めの一つだととらえています。
私たちのサービスに共感いただいた方々はお客様、事業や働きがいに共感いただいた方は働いてるメンバーや従業員。その中で、投資家は会社の中長期的な事業価値、成長性に共感いただいている方々です。
採用と同じくらい、いかにカルチャーフィットするか、中長期的な考え方が合う方かどうか、お話しさせていただく中で意識しながら投資家選びをしました。
ーーエクイティファイナンスをすると意思決定したポイントがなにかあったのでしょうか。
2つあります。
1つめは、前職で1000人の社長と話していた当時から、会社を所有するのではなく、パブリックカンパニーとして社会の公器に育てて続けていく、というものに憧れを抱いていました。会社を大きくさせていくのであれば、どんな形であれイグジットを目指すことが必須条件でした。
2つめは、タイミング的に受託モデルからプロダクトモデルでスケールが目指せそうだったこと。ステークホルダの方々に損をさせずに事業を伸ばすことができそうだと思えたタイミングだったので、アクセルを踏むことを決断できました。
とはいえ、後戻りができない決断であることはわかっていたので躊躇もありました。最後の決め手になったのはエンジェル投資家の方々に「20代で一回失敗しても、人生長いんだからやり直しがきく、やってみたらいい」という一声に押してもらったこと。
投資家として良い仲間に出会えたことが、決断の決めてになったという側面はあります。
ーーまさに仲間として、投資家に後押しされたのですね。
そうですね。
株に関しての考え方って、世代やスタイルによって異なると思います。「株式比率は何%以上ないと駄目だ」という方々もいれば「スケール&スピード重視でどんどん調達」という方もいる。
その中で、「失敗してもまた次がある」とか、「一生社長をやるのではなく、どんどん新しいことにチャレンジする」という先輩起業家の考え方に触れたからこそ、今の私があります。
答えは様々で良いと思いますが、これも「コンフォートゾーンから離れる」ことで至った自分なりの結論だったのかなと思います。
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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