#M&A
「well-working 労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」をミッションに掲げ、クラウド人事労務ソフトSmartHRを提供している株式会社SmartHR。同社代表取締役CEO 芹澤 雅人氏に経営者の素養、組織づくりのこだわりなどについて聞いた。(全4話)
経営も「アジャイル的思考」が求められる
ーー芹澤さんにとって経営者に重要な素養を3つ挙げるとしたら何でしょうか。
1つ目は「アジャイル的思考」を持つこと。
ウェブアプリケーションは毎日のように機能をアップデートできるスピード感を強みとしています。そのため、数年がかりで計画してプロダクトを作っていくような業種とは、ものを作っていくプロセスが全く違います。
また、ウェブ業界は世の中の移り変わりがもの凄く激しく、数ヶ月先のことも予測しにくいです。そういった状況の中では、機敏に計画を立て、振り返り、柔軟に計画を変えていくイテレーション(アジャイル開発における工程)を組織としていかに高められるかの勝負になります。
なので、ソフトウェアスタートアップの経営者は、そこに適した考え方や組織構造を作っていくことが重要だと思っています。
2つ目は「カルチャーデザインへの関心」。
これはスタートアップ企業全般に言えますが、スピード感を作るためには組織を高いレベルで束ねる必要があり、そのベースになっているのがカルチャーです。
「うちの会社のカルチャーはこういう風にしていきたい」という思いと、それを組織設計に反映していける素養が重要だと思います。
3つ目は「積極的な権限委譲」。
スタートアップ企業では日々色々なことが起こりますが、それを特定の人だけで対処しようとするのではなく、社内全員で解決していくという考え方が重要です。そのためには経営者がきちんと権限委譲していくことが求められます。
芹澤 雅人(せりざわ まさと)/1988年生まれ
2016年SmartHRに入社。2017年にVPoEに就任、開発業務のほか、エンジニアチームのビルディングとマネジメントを担当する。2019年以降、CTOとしてプロダクト開発・運用に関わるチーム全体の最適化やビジネスサイドとの要望調整も担う。2020年取締役に就任した後、2022年1月株式会社SmartHR代表取締役CEOに就任。現在に至る。
ーー「アジャイル的思考」で特に重要視されている取り組みや施策はございますか。
組織の透明性、情報をとにかくオープンにすることを大切にしています。
当社は給与や評価にかかわるような人事系の情報と、関係する他社の機密情報以外は全てオープンにしています。
具体的にいえば、「SlackはあまりDMを使わない」とか「議事録をドキュメントとして公開する」とか。特定の人にしかアクセスできない情報は極力無いようにするというのがベースとしてあります。
また、ビジネスサイドとプロダクトサイド、ともに沢山交流する機会を多く設計しています。そういった濃度が高いコミュニケーションが俊敏さを担保していると思いますね。
社内にも好影響を与えた「社長交代」
ーー「権限委譲」をする際のポイントはありますか。
間違いなく一つ言えるのは「委譲先の人が育つまで待っていたら、一生移譲できない」ということ。
役割がその人を成長させることもありますし、きっとやり遂げてくれると見極めて信じて任せる。考え方が後手にならないことがポイントだと思っています。
前CEOの宮田さんも大胆に任せるタイプで、結果として私もCEOを任せてもらえています。
CEOの交代に関しては社内でも印象的だと感じている人が多く、「そこまで大胆に権限委譲する会社なのか」とポジティブに受け取られているなと感じます。
経営陣が自らメンバーを信じ、権限委譲していくという所はすごく意識しています。
ーーこの人だったら権限委譲してもいいと思わせる人ってどんな方なのでしょうか。
明確なのは「パッション」だと思います。
私は面接の時にハードスキルよりも、どちらかというとパッションやグリッドさ、何のためにこの人は仕事をしたいと思ってるのとか、根底にある部分を聞くようにしています。
結局「パッション」があればハードスキルは後から付いてくると思っていて、諦めずにやり遂げることが何よりも重要。Whyの形は人それぞれでいいけれど、そこに納得感がある方が良いなと思います。
ーー芹澤さんのパッションはどこにあるのでしょうか。
私はSmartHRという会社に対する好奇心がとても強いんです。
プロダクトも会社もものすごいスピードで成長していて、未踏の領域を突き進んでいる。そこにすごく興味があります。
もちろん社会の「働く」を支えていく側面もすごく面白いと思っています。SmartHRが提供するソフトウェアは世の中の仕事のあり方を変えていけると信じています。業務の効率化に加えて従業員のエンゲージメントも高めていくことで、日本人の働くことに対する価値観や働き方をアップデートできるんじゃないか。そういった好奇心が原動力になっています。
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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