
#ファイナンス
学生でも分かる資金調達・資本政策のポイントー第12回 エクイティ調達④ 出資スキームの種類・トレンドー

こんにちは。DIMENSIONファンドの伊藤紀行です。
前回の最後では、課題発見のよくあるパターンについてみてきました。
70名超の起業家の事例を調べていくと、多種多様な方法で課題を発見し起業へと結びつけていることがわかります。
その中でもよくあるパターンとして、
1自分自身が感じた課題を元に、起業する
2得意領域の課題で、起業する
3海外の事例を研究、日本にはまだ解決策のない課題で、起業する
などがあります。現実にはこれらの組み合わせであるケースが多かったり、そのほかにもパターンがあったりしますが、まずはこのような汎用的なパターンを、今回から紹介するケーススタディも参考にしながら押さえていきましょう!
また、本コラムの内容は’23年4月発売の「スタートアップ――起業の実践論」をベースに記述されています。全体版は、同書をご参照ください!
‘23年4月発売 「スタートアップ――起業の実践論」
「弁護士ドットコム」は誰でも法律相談が手軽にできる日本最大級のポータルサイトです。アンダーソン・毛利法律事務所出身の元榮さんが2005年に創業し、2014年に東証マザーズ(当時)に上場を果たされています。事業領域は初期の弁護士ポータルサイトから、税理士相談のポータルサイトや電子契約サービスなど、事業領域を急速に拡大しています。弁護士の元榮さんが弁護士ポータルサイトを創業したという意味で、次ケースと同じく、得意領域での創業としても捉えられます。しかし、本ケースが特徴的なのは、元榮さんが自分自身の課題を解決しようと試みた点にある。それでは課題発見のストーリーを一緒に見ていきましょう。
元榮さんがたどった課題発見のプロセスは以下のようになっています。
1不運な物損事故に遭遇、弁護士が身近でない社会課題に直面する
2引っ越し比較サイトから、事業の着想を得る
3それらの体験と関心を組み合わせ、事業化を計画
4課題解決を実現すべく、誰よりも早く行動に移す
5アイデアを積極的に周りに話し、仲間を集める
元榮さんに起業のアイデアが生まれたのは自身が弁護士であったことが大きな要因といえます。そもそも元榮さんはなぜ弁護士を目指したのでしょうか。きっかけは学生時代に物損事故に遭ったことだと語られています。
「自分ではどうしようもない事態に陥ったときに、弁護士に助けられました。この弁護士さんの姿を見て、「こんなに困っている人の力になれる仕事ってすごいな」と素直に感心し、興味を持つようになったのです」
ひとつの事故をきっかけに弁護士を志したという元榮さんだが、きっかけを活かせるかどうかは日頃の自分の過ごし方次第、という面があります。常に好奇心をもって世の中を眺め、自分がやりたいことを素直に感じとることが大切なのではないでしょうか。
元榮さんに起業のアイデアが降りてきたのは、引越し業者を比較するウェブサイトのサービスを見つけて利用していたときでした。同じ比較の仕組みを弁護士にも応用できないかと発想したのが、弁護士ドットコムの原型です。そして、前述の物損事故に遭ったときに弁護士を探し相談することが大変だったことを思い出し、実際にこの事業アイデアの先に課題があるのではないかと考えたといいます。
「こうした自分自身が困りはてた経験から、弁護士とかかわったことのない多くの人は、『いざ』というときに解決の糸口をつかめずに困っているのではないかと考えたんです」
元榮さんの場合、引っ越し比較サイトへの関心と、弁護士を探すのに苦労した経験の掛け合わせにより、弁護士ドットコムのサービスは産み出されています。自分自身の体験と関心が重なる奇跡的な瞬間です。それでは、このようなきっかけをつかむことができるようになるには、なにが必要でしょうか。
たとえば、以下3つの思考力が重要になってくるかと思うが、いかがでしょうか。
1解決のための問いを立てる思考
2事象を応用・組み合わせるアナロジー思考(類推する力)
3主観的な事象をマクロ視点で捉え直す俯瞰思考
解決のための問いを立てる力とは、生活の中の問題に対しWHY?/HOW?を問い続けることです。
目の前の問題が「なぜ存在するのか?」「どうすれば解決できるのか?」「別のアプローチはないか?」「組み合わせて変えられないか?」「なぜ今できていないのか?」と連続的に問いを立て続けると、自ずと行き止まりにぶつかります。
それを何度も繰り返すと、解決の糸口が見えてくる可能性が格段に高まります。出勤中でも、家の掃除中でもいい。頭の体操として習慣化しておくと、ある瞬間、自分だけの課題と事業アイデアの発見につながるかもしれません。
(後編へつづく)
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