「初期の要件定義にどれだけ盛り込めるか」が生命線 株式会社トレジャー・ファクトリー 野坂英吾社長(第3話)

全国に200店舗以上展開する総合リユースショップ「トレジャーファクトリー」を運営する株式会社トレジャー・ファクトリー。2007年、東証マザーズ上場。2022年、東証一部から東証プライムに市場変更。タイや台湾にも店舗を持つ。同社代表取締役社長 野坂 英吾氏に起業家の素養、海外展開のポイントなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの巻口賢司が聞いた。(全4話)

ビジョンに向かって、0.5歩でも0.2歩でも前進しているか

ーー野坂社長は大学の卒業と同時に起業されましたが、創業当初のメンバー集めや組織作りにおいて大切にされたことがあれば教えてください。

立ち上がったばかりの会社にとっては「ビジョンを語ること」が非常に重要です。

どういう会社になりたいか、将来像を語ることは大事なことだと思います。私も1店舗しかない創業当初から「10年で店舗数を30店舗に増やし、上場を目指す」と公言しておりました。

その結果、将来の可能性にかけ、今のコアメンバーが同じ船に乗ってきてくれました。

また、「掲げたビジョンに少しでも近づいているかどうか」も重要です。ビジョンを掲げていても、前進感がなければ、集まった人たちは散ってしまいますから。

もちろん、中長期的なビジョンを一気に実現することは難しいですが、0.5歩でも、0.2歩でも前進していることをチーム全体に示すことが重要だと思います。

ただし、ビジョンだけでなく、現実から少し背伸びした組織や目標を掲げ、その実現に向けて一歩ずつ前進することも大切です。

 

ーー組織を大きくしていく中で、成功をチーム全体で祝いながらも、常に上を目指すという姿勢を貫く上で、目標設定において意識された点や試み、マインドセットなどがあれば教えてください。

目標を120%に設定するよりも、100%に設定し、それを必ず達成することが重要だと考えています。

そのため、自分自身にも、組織風土にも、「達成習慣」を作ることに力を注いできました。

目標は100%に設定しますが、それを達成したら「よかったね」というだけでなく、「100%ができる組織なら、103%や105%をどうすれば達成できるのか」を考え、100%を達成できたら次は110%を目指す、という風土を作り上げることにこだわってきました。

組織に見合った人材が集まる

ーー強いチームを作るために、未上場の企業での幹部採用において重視すべきポイントは何でしょうか。

経営者のスタイルにより方法論はさまざまですが、私は「組織に見合った人材しか来ない」と考えています。

逆に言うと、組織が成長すれば自然と優秀な人が集まるということ。後から優秀な方が続々と入社された時に企業の成長を感じます。

そのため、今無いものを嘆くよりは、今いる人材が活躍できる環境を整え、成長させることが企業成長を目指すうえで大切だと考えています。

「1ヶ月で170名と個別面談」拡大フェーズでのギアチェンジとは

ーーリアル店舗の事業が拡大フェーズに入ると、各拠点の組織と在庫管理が重要になると思います。この2点について、具体的な施策や工夫があれば教えていただけますでしょうか。

企業は徐々に成長していきますが、その成長は段階的ですので、各ステージでギアチェンジが必要になります。

例えば、社員数が300名以下の頃は、半期に1回、全社員と個別面談を行っていました。今まで最大で月に170名と個別面談をしたこともあります。

しかし、300人を超えると時間が許されず、経営者としての仕事の仕方も変わり、権限移譲をしていくようになりました。

また、規模拡大に伴った在庫管理としては、システム投資にこだわってきました。

弊社では自社でPOSシステム(単品管理をする仕組み)を開発・運用しております。

常に新しい技術を取り入れながら、数値の見える化にこだわっていくこと。それが弊社の強固な管理方法や分析方法に活かされていると感じています。

 

ーーギアチェンジについて、具体的にはどのようなタイミングで必要だとわかるのでしょうか。

「同じ手法では対応できない」と感じた時に、次のステージに進むための新たなマネジメントやコミュニケーション手法が必要になると思っています。

そのため、次のステージでどのような工夫をするかを常に考え、チューニングしながら、組織内の情報の伝わり方や見え方を確認しています。

 

ーー規模が大きくなるにつれ、一体感を維持するのも難しくなるのではないかと思います。従業員全体とのベクトルを合わせる秘訣などはありますか。

社員が30名の頃は、仕事の後にスーパー銭湯に行き、朝まで語り合うことも多かったです。

しかし、時代によってマネジメント方法も変わりますし、規模が大きくなるとそのようなことは難しくなります。

そのため、今では社内報を出したり、月に1度、10分程度の配信を行うなどの工夫をしています。

配信は、広報チームにも手伝ってもらっており、10分程の配信準備に約3時間かけています。社内サイトへアップするための編集作業を入れたらもっとかかっています。

「初期の要件定義にどれだけ盛り込めるか」が生命線

ーー在庫のビジネスでは定点観測のため、初期のシステム投資がかなり重要かと思います。しかし、経営資源が少ない中で数100万円のシステム投資をすると決断するのは、なかなか難しいですよね。御社は、最初の経営資源がない中、どのような工夫をされていたのでしょうか。

結局、外部に作ってもらわなければいけないのですが、その作ってもらうものの「要件定義力」が重要だと思います。

起きることを想像し、それを初期の要件定義の中に盛り込めるかどうか。それが生命線のように感じます。

これはセンスというより、能力の分かれ目だと思います。

開発した後での軌道修正は誰にでもある程度はできることですが、これをスタートアップが繰り返していては資金的に持ちません。

やったことがないことをどうにか想像して、それを盛り込みながら要件定義の中に組み入れること。

完全に先回りすることは不可能ですが、この精度の高さによって、初動でスムーズに進めるか否かの差が大きくなります。

また、外部委託の際に、企業が委託先の言いなりになってしまっては、どこでもやっている当たり前のものしか出来上がらないですよね。

自社の強みをきちんと輝かせるための要件定義をしっかりとお願いして、それにかかる費用と効果のバランスを見定めて取り組むことがポイントだと思います。

 

第4話「100か国以上の海外展開を目指す」へ続く

 

 

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巻口 賢司

巻口 賢司

早稲田大学政治経済学部卒業後、日本マイクロソフトに法人営業として入社。国内の大手企業におけるデジタル化の促進に携わる。その後、ウォルト・ディズニー・カンパニーにて、スタジオ部門での映画の配給・マーケティングからコーポレート戦略部での新規事業開発など、幅広い業務に従事。2023年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。日台ハーフ・日英バイリンガルというバックグラウンドを活かし、グローバルな目線でのスタートアップ支援を志す。

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