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「すべての経済活動を、デジタル化する。」というミッションを掲げ、複数事業・プロダクトを同時並行的に展開する「コンパウンド・スタートアップ」としての挑戦を続けている株式会社LayerX。同社代表取締役CEO 福島 良典氏に、起業家の素養や、組織づくりのポイントなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの古家 広大が聞いた。(全4話)
ーー御社は年間100名以上の採用をされていますが、このような急速な組織拡大は、スタートアップにとって決して容易なことではないと思います。これまでのご経験から、組織運営のポイントをお聞かせいただけますでしょうか。
採用に関して最も重視しているのは、スキルよりもカルチャーフィットです。
採用時には、LayerXの価値観や価値基準に照らし合わせ、「この人なら同じ価値基準で働けそうだ」「スキルではなく価値観の観点でこの人と一緒に働きたい」と感じられるかどうかを大切にしています。
また、採用面だけでなく、入社後もカルチャーを意識する機会が多くあります。
一般的な企業がMVPを表彰する月次の締め会があると思いますが、LayerXの場合、MVPは半期に1回で、毎月行っているのは「カルチャーを体現した人を讃えること」です。
単なる数字の成果ではなく、私たちのカルチャーブックに記載されている規範となる行動を実践してくれた事例を紹介するセッションを設けています。
そういった取り組みを褒め称え、全員で共有する。それを、毎月の締め会で「ラシトピ(羅針盤トピック)」と呼んでいます。これは羅針盤という当社のカルチャーブックに沿った行動をしている人を称賛するという取り組みです。
このようなカルチャーを大切にする取り組みが効果的でした。
逆にいうと、数字だけで判断するのは避けています。「今月の売上トップは誰々」とか「最もコードを書いたのは誰々」といった評価は、一見正しいように見えて、大抵は間違っている。
その数字をどのように達成したのかという部分に、おそらくその会社で働く強烈な理由があると考えています。それこそがカルチャーだと思うんです。
カルチャーの浸透について、様々な経営者から「どうやって浸透させるんですか?」という相談を受けますが、まず採用の入り口でカルチャーマッチを確認すること、そして社員がカルチャーを意識する機会を意図的に設計できているかが重要だと感じています。
急激な組織拡大において最も崩れやすいのはカルチャーの部分です。そのため、小規模なうちから習慣化しておくことが大切です。規模が大きくなってから無理にMVVを盛り上げようとしても、なかなか組織は動きません。
カルチャーへの投資という考え方は早い段階から組織に根付かせることが必須だと考えています。
ーー反対に、組織づくりについて振り返ったときに、こうしておけば良かったと感じることはありますか。
「採用基準の統一」ですね。
急成長する組織では、最初はCEOが全ての最終面接を行い、その後、組織の拡大に伴ってCOO、さらには部長や各部のVPが最終面接を担当するようになると思います。
この過程で、全員が完全に同じ基準で評価することが難しくなります。
このズレの部分を言語化することは難しく、面接を委譲していく過程で評価基準がぶれる可能性があります。
例えば、「スピードを重視します」と言っても、何をもって「速い」とし、何をもって「遅い」とするのか、人によって基準が大きく異なります。
虹の色を7色に見る人もいれば20色に見る人もいるように、同じものを見ても、その人のバックグラウンドや価値観によって判断基準は自然と異なってきます。
この基準を統一するための工夫は行ってきましたが、より効果的な方法があったはずです。現在はHRチームが主導して新しい仕組みづくりを行っています。
ーー採用基準を統一するために、これまでどのような工夫をされてきたのでしょうか。
例えば構造化面接があります。構造化面接とは、応募者全員に一貫した同じ質問をし、明確な基準に従って回答を評価する面接です。
加えて、面接官のスキル改善も行っています。候補者の許可を得て面接の動画を一部録画し、人事がランダムにレビューし、面接官にフィードバックするということを行っています。
また、ATSのようなツールを使用して、評価者による評価や評価項目を構造化して記録し、その時点の評価と入社後のパフォーマンスを比較して、誰の見極めが正確だったかを検証しています。
また現在取り組もうとしているのが、具体的な仕事に近いワークサンプルの実施です。
例えば営業職であれば、営業プロセスの中にその人の人格が表れます。エンジニアチームではコードサンプルや課題に取り組んでもらっていましたが、ビジネス職ではあまりそういった課題を設けていませんでした。
候補者の負担というトレードオフはありますが、ミスマッチは候補者にも会社にも不利益をもたらします。そういう意味で、ワークサンプルにもっと時間を投資すべきだったと考えています。
もう一つは、LayerXらしい取り組みでいくとAIの活用です。
面接の評価や会話内容をAIに分析させ、サブ的に活用することで、評価基準の統一化が図れるのではないかと考えています。
ーーつまり、セカンドオピニオン的な使い方ですね。
そうですね。AIは非常に客観的です。
人間はどうしてもバイアスの影響を受け、好き嫌いが判断に表れてしまいます。
「出身地が同じですね」「気が合いそうです」といった具合に。大学や学部が同じだったり、学んでいた内容が似ていたり。
そういった共通点を見つけると、つい嬉しくなってしまうものです。
人間特有の「共通点を見つけて親近感を持つ」という能力は、コミュニケーションの面では重要である一方、客観的な評価という観点では妨げになることもあります。
AIは客観的評価が得意なので、両方の視点があることが理想的だと考えています。
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古家 広大
早稲田大学卒業後、三井住友信託銀行に入行。 広島にて個人向けFP業務を行った後、大阪にて法人RMを経験。非上場からプライム市場の企業まで担当し、融資や不動産など信託銀行の幅広いソリューション営業に従事。また、ESGやSDGsをはじめ、CGC改訂への対応支援も行い、グローバルで勝ち続ける企業への成長を非財務領域も含めてサポート。 2022年DIMENSIONに参画。LP出資者からの資金調達と国内スタートアップへの出資・上場に向けた経営支援を担う。
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