成功する起業家に共通する事業立ち上げの「思考法」 WAmazing 加藤史子CEO(第2話)

"日本中を楽しみ尽くす、Amazingな人生に" のビジョンのもと、訪日外国人旅行者向けサービス「WAmazing」を提供するWAmazing株式会社。空港で無料のSIMカードを貸与する斬新なビジネスモデルで注目を集め、端末機の設置は国内20空港を突破した。急成長を続ける同社の代表取締役CEOの加藤史子氏に、起業家の素養や事業立ち上げのポイントなどについて聞いた。(全6話)

「恐れ」の正体を明らかにすれば行動できる

――起業家にとって重要な素養(第1話リンク)の3つ目である「行動力」についてお聞かせください。

起業において価値があるのはアイディアではなく実行、エグゼキューションです。

考えているだけでは何事も始まりませんが、一歩踏み出す「行動力」があれば良くも悪くも結果は出ます。結果が悪かったとしても次のアクションにつながりますよね。

恋愛に例えると、好きな人に対してずっと片思いで遠くから見ていれば一生失恋することはありませんが、成就することもないでしょう。一方で告白してしまえば、なにかしらの結果は出ます。もしフラれたら、次の好きな人を見つければいい。

もちろん無策に行動するだけではダメですが、多少計画が荒くとも「行動力」を持って実行できる人。恋愛でいうとどんどんと告白できるような人が起業家に向いていると思います。

 

 

――どうすればその「行動力」が身につくのでしょうか?

大切なのは行動することに対する「恐れ」の正体を具体化すること。

例えば、告白してフラれるのが怖くて片思いし続けている人がいるとして、「フラれたら次の人に行けばいい」とシミュレーションができれば告白できますよね。

要は行動ができないのは「行動力」がないからではなく、行動したことによって出る結果に対する無意識的な「恐れ」が心の中にあるからなんです。その「恐れ」の正体を可能な限り具体化して、失敗しても大したことがないとわかれば、誰でも行動することができます。

 

――誰でも「行動力」は努力次第で身につけることができるのですね。

そうですね。これはドリル訓練のようなもので、常に意識していれば自然と身につくと思います。

実は東洋でも西洋でも、神話の中で出てくるお化け退治といった類の話には「お化けの名前を言い当てると、そのお化けは退散する」というストーリーが多いんです。これは本質的に「正体が分かっているものは怖くない」ということを教えてくれます。

行動を止めている「恐れ」の名前を言い当てられたら、その「恐れ」は退散するので、誰でも行動できるようになりますよ。

 

事業の本質を抽象化して組み合わせる

――加藤さんは前職のリクルート時代から次々とゼロイチで新規事業を立ち上げられています。ゼロイチを生み出すのも、何か思考のポイントが存在しているのでしょうか?

新しく見えるような仕掛けでも、厳密にはゼロから生まれているわけではなくて、これまであったものの新しい組み合わせで生まれています。

私は一般的には別々だと思われている事業から本質となる要素を抜き出し、抽象化して組み合わせるという思考法が得意で、これが新しい事業を生み出すコツだと考えています。

例えば、前職のリクルートで「雪マジ!19」という、19歳であれば全国190以上のスキー場で何回リフトに乗っても無料という企画をした時もそうでした。衰退するスキー産業をどうやって立て直すか必死で考えているときに、ふと横目に見えたのが急成長中のソーシャルゲームサービス。

スキー場とソーシャルゲームは一見関係なさそうに見えますが、抽象化して考えると本質的にはレジャーという意味では同じですよね。ではなぜこんなにも勢いが違うんだろうと比較した時に、ソーシャルゲームは隙間時間でできて、最初は無料だけどハマったらお金が発生するフリーミアムモデル。一方でスキー場は最初から数万円かかって、行ったら行ったで最初のうちは寒いし怖いし痛い。(笑)でもそんな修行期間を超えると、とても楽しいレジャーです。

こうして考えると、スキー場はコミュニケーションスタイルが悪いんだなということが見えてきます。要は、始めるためのコストが高すぎる。そうであれば、スキー場にフリーミアムモデルを適用してみてはどうだろう、と考えて「雪マジ!19」は誕生しました。

このように事業の本質となる要素を抽象化して組み合わせる、という思考法は常に癖がついていますし、WAmazingのビジネスモデルも同じ思考法で生まれました。

さらに言うと、この思考法はシリアルアントレプレナーと言われる連続起業家も、みな共通していると思います。例えば「俺のイタリアン」の創業者である坂本考さんは「ブックオフ」の創業者でもありますよね。一見、飲食業界と古本業界では全く違うように見えますが、彼の事業に共通しているのは「業界の既成概念を取り払って、ユーザーにとっての価値を考える」ということ。

事業の本質を抽象化して、自分の対峙している業界に当てはめて具象化する。この思考法が成功する新規事業を生み出すポイントだと思っています。

 

 

>第3話「訪日外国人向け事業を通して「日本に恩返し」したい」に続く

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DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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