#インタビュー
「未来のための遺伝子解析を」を掲げ、日本最初の個人向け大規模遺伝子解析サービスを提供する株式会社ジーンクエスト。日本人の遺伝情報に特化した研究情報をもとに信頼性の高いデータを提供している。同社代表取締役の高橋祥子氏に、起業家にとって重要な素養、遺伝子解析の未来などについて聞いた。(全4話)
「生命科学」に対する絶対的な信頼
――起業家にとって重要な素養を3つ挙げるとすれば何とお考えでしょうか?
「エモーションとロジック」を両方強く持ち合わせていること。そして「楽観的」であること。最後に「時間軸の認識」ができること。
この3つが起業家に重要な素養なのかなと思います。
高橋祥子(たかはし しょうこ)/1988年大阪生まれ。2013年6月、東京大学大学院博士課程在籍中に株式会社ジーンクエストを設立。2015年3月博士課程修了。2017年10月にユーグレナグループに参画、2018年4月に株式会社ユーグレナの執行役員に就任。
――「エモーションとロジック」を両方持ち合わせていることが大切な理由をお聞かせください。
大企業の新規事業は「ロジック」で周囲を説得しながら立案されますが、起業家の場合、周囲の理解が得られないことでも、周囲を巻き込んでいく必要があります。私も起業当初は「ゲノムなんかやって何になるんだ」「遺伝子の意味がわからない」とよく言われていました。
周囲に反対されても推し進める原動力は、起業家自身の原体験や感情です。この「エモーション」に素直に耳を傾け、事業を推し進めるのは起業家ならではの特徴ではないでしょうか。
一方で、主観的な「エモーション」だけでは事業は成功しません。「エモーション」を「ロジック」で客観的に見定めることも必要です。
なので自分の「エモーション」を感じることができて、なおかつ「ロジック」で冷静に見ることができる。そんな人が起業家に向いていると思います。
――2つ目の「楽観的」であることが重要だと思われた理由もお聞かせください。
起業すると問題ばかり起こります。何百回否定されても、何百回困難につき当たっても、それに絶望せず乗り越えていくためには「楽観的」であることが必要です。
私の場合は「生命科学のポテンシャルに対する絶対的な信頼」が「楽観的」な考えにつながっています。
自分たちのやっていることは「生命科学の進歩」に寄与している。そして「生命科学の進歩」は必ず人類の進歩にもつながる、と信じているからこそ「楽観的」になれるのです。
「意志“ある”楽観」が未来を変える
――「楽観的」という言葉の中には、「未来は変えられる」という自信のようなものも感じました。
「楽観」には2種類あって、1つ目は「意志“なき”楽観」。
とあるテレビ番組で観た「渋谷の若者に未来のイメージを聞く」というインタビューで、意外と楽観的な意見が多かったのが印象的だったのですが、同時にすごく違和感も感じました。
この違和感の正体は、彼らの楽観は「このままいくとこうなるけれど、まぁそれでも別にいいよね」という諦めのような感覚だということ。つまり「意志“なき”楽観」です。
逆に、「意志“ある”楽観」というのが、起業家に求められるものです。
「このままいくとこうなるけれど、自分たちが頑張れば未来はこう変えられる」という意志。未来は自らの手でより良いものにできるという自信こそが起業家が持つべき「意志“ある”楽観」です。
――起業家の素養3つ目として挙げられた「時間軸の認識」についてもお教えください。
もう少し噛み砕いて言うと「どの時間軸で物事を見ているかを認識すること」が大切だということです。
例えば、今やっている仕事を短期的な時間軸だけで見ると「つらい」「大変」と感じたとしても、長期的な成果と紐づけて考えられれば大変ではなくなる場合があります。
これは周囲からの意見を聞く時も同様です。その人の意見が「短期的な時間軸」のものか、「長期的な時間軸」のものかを冷静に見極めることができれば、効果的に自身に取り込むことができるでしょう。
これは「楽観的」になることにもつながってきますが、「長期的な時間軸」の意識を持ち続け、自分の未来を信じ抜くこと。これが起業家に求められる素養だと思います。
■読者のみなさまへのメッセージ
>第2話「学生起業から身につけた起業家としての思考法」に続く
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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