#インタビュー
「民間版の世界銀行」を目指す五常・アンド・カンパニー株式会社。2014年7月創業から急成長を遂げ、2019年9月末時点で顧客数47万人、グループ従業員数も2,700名を超え、DIMENSIONも含めた投資家から42.2億円のシリーズC資金調達も発表した。そんな同社・代表取締役の慎泰俊氏に起業家の素養、ビジョンなどについて聞いた(全6話)
「人を見る目」を養う
ーーM&Aも積極的に実施されています。M&Aを成功させる上で気をつけていることをお聞かせください。
まず買収前のデューデリジェンスでは経営陣の精査にすごく時間をかけています。あとはエコノミクス、つまり我々が株主から期待されているリターンを達成する上で、割に合うのかきっちり見ています。
各国での展開にも通じますが、マクロの状況と経営者のクオリティが事業の成否のほとんどを決めます。この見極めがM&Aを成功させる上でもほとんどの部分を占めていると思います。
ーー具体的に、経営陣のどこを見ていらっしゃいますか?
第一印象を大切にしています。私は人物鑑賞が好きで、人がスピーチしている時でも内容よりその人の立ち居振る舞いに関心がいってしまうタイプです。実は、人生で「この人はきっといい人だ」という第一印象を外したことがありません。
美術作品なども同じだと思うのですが、とにかくたくさん作品を見ていれば、初めて見た作品のなんとなくの価値がわかるようになりますよね。時価総額だけで会社の価値が決まる訳ではありませんが、創業社長で時価総額1兆円を達成した人の第一印象はものすごいものがありますし、10兆円企業となると化け物じみています。
どれだけたくさんの人、特にリーダーたる人を見てきたかどうかが、第一印象の打率を高めてくれているのだと思います。
加えてもう少し具体的なことを言うと「言動が首尾一貫」しているか、「お金の使い方」「自分よりも立場が弱い人に対する振る舞い」の3つをかなり見るようにしています。この3つには人格が分かりやすく表れると思っているからです。
普段から人を見ることに関心を持つことが、結果的に経営者の見極めにも役立っていると思います。
自らの無知を知り、謙虚に学び続ける
ーー多国展開する上で、買収後のPMIについてもお聞かせください。
まずは自分たちの国の常識を押しつけないこと。日本の常識が世界の非常識であり、インドの常識もまた世界の非常識。要は、各国によってローカルルールがあるので、それを尊重することを大切にしています。
先進国出身の人にありがちなのが、途上国にいった時にその国のことを馬鹿にした態度をとってしまうことです。それでは現地の方々の信用を得ることはできません。
弊社の場合、現地主導で自立的に経営してもらうことを大切にしています。リーダーはあくまで現地であり、本社はあくまでサポート役という関係性です。
ーー様々な国のローカルルールをそれぞれ理解する上で大切にしていることはありますか?
実際に足を運んで、顔を合わせてコミュニケーションをとることが基本です。その上で、簡単に理解した気になって決めつけないことを大切にしています。
ガンジーがインドに20年以上ぶりに帰国した際に、彼の師匠が「インドを20年以上離れていた人間は、インドについて意見を言ってはならない」という言葉をかけたと言われています。
私もその通りだと思っていて、たかだか数年いたくらいでは真にその国のことを理解できるものではありません。
例えばミャンマーのロヒンギャで起こった大虐殺は、国際世論からはかなり批判されているものですが、ミャンマーに住む人たちに話を聞くと、誰もが「ロヒンギャの人々が悪い」と話してきます。
これを「洗脳されている」と決めつけるのは簡単ですが、現実はそんな単純な話ではありません。教育から政治、宗教、歴史まで、その国の様々なシステムが絡み合って起こっているのです。
それだけ1つの国を理解するというのは本当に大変なので、簡単に理解した気にならないこと「自らの無知を知り、謙虚に学び続ける姿勢」が多国展開を進めるうえでは特に大切だと思います。
>第5話「「首尾一貫」「真善美」をリーダーが体現し続ける」に続く
>第3話「世界史に残るレベルの大きなビジョンを描く方法」に戻る
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DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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