AI通訳機『POCKETALK』が描く、アメリカ進出と今後の成長戦略 ポケトーク松田憲幸CEO(第4話)

「言葉の壁をなくす」をミッションに掲げ、AI通訳機『POCKETALK』シリーズを販売するポケトーク株式会社。22年11月にはDIMENSIONを含め16億円の資金調達も実施し、世界的に躍進を続けている。同社代表取締役社長 兼 CEO松田憲幸(まつだのりゆき)氏に起業家の素養、事業成長の心得などについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた。(全4話)

あえて日本語が話せない人をリーダーに据える

ーーシリコンバレーに10年以上住まれ、アメリカでの事業展開も本格化されています。海外で事業展開していく上での組織構築の勘所を教えてください。

僕はアメリカで事業をやるためには、アメリカ人に任せるのが大原則だと思っています。

日本の企業の場合、アメリカのヘッドが日本人ということが多いと思うのですが、それでは難しい。アメリカ人がアメリカ人をマネジメントできる組織にしないといけません。

 

ーーどのような方を現地のリーダーに選ばれていますか?

あえて一つ言うと「日本語が話せない人」です。

日本語が話せるという事は日本に滞在したことがあったりする方だと思うのですが、これって、もちろん一部の例外を除きますが、アメリカの一流人材の主流からは大きく外れていると思うのです。

アメリカのビジネスを知り尽くしている事が一番重要だとしたときに、一流人材は日本語を勉強するくらいならもっと他の勉強をしているでしょっていう。

あえて強烈な例えとして挙げましたが、それくらいの自国認識を持たないとアメリカでは戦えません。

 

アメリカでは”No. 1”が通用しない

ーーアメリカでのマーケティングにおいて、日本と異なる部分はどんな点でしょうか?

日本は有名になろうと思ったら、テレビCMをバンバン打てばいいといったような法則があります。どんな無名な会社でも、100億円あれば有名になれる。

でもアメリカだと、100億円あったら有名になれるかというと、なれるとは限りません。

テレビCMといってもアメリカの全局は買えないし、メディアも多岐に渡っていて「ここ打てば絶対有名になる」という法則が無いのです。

もう一つ大きく異なるのは、広告を信じるか否かの感覚。

例えば日本人は広告を信じやすいのでよく「No. 1」という表現を使うと思うのですが、アメリカ人は「No. 1」って書いてあると怪しいと思うらしいです。

これは日本とアメリカの文化の違いだと思うのですが、総じて一般的に言われるマス広告が効きにくいのがアメリカです。

なのでアメリカではPRファームとの地道なリレーションから、うまく伸ばせる施策を見つけていくことが重要です。ニュートラルな媒体に褒めてもらって納得性を高めていく。

日本のような狭い国土の国ではPRよりもCMのようなマス広告の方が即効性はよいので選ばれがちですが、そこの感覚値はアメリカとは大きく異なるように思います。

 

アメリカ流・ネットワーキング術

ーーアメリカ・シリコンバレーに渡り10年、松田さんが現地での繋がりを築くために意識されている点があれば教えてください。

私の場合、基本的にランチはとにかく誰かを誘って食べることをひたすらやり続けました。あと、家にどんどん人を呼んでパーティーをしました。どちらもお金がかかりますけどね(笑)。

ネットワークを広げようと思ったら、とにかく行動する。この基本は日本と変わらない。

一つあるとすると、「またの機会にお会いできれば嬉しいです」のように曖昧なことを日本人は書きがちですが、それっていつどこで会うの?となります。

 

ーーいつどこで会いましょうというのを明確に書く?

どこで、というのがもう感覚が違っていて。どこで、は絶対「相手のオフィス」なんです。

アメリカって広いから距離が離れているので、わざわざ来てくれるなら話しぐらいは聞いてあげてもいいかなとなるんですよ。遠路来てくれる人を拒むほどの勇気もないですからね(笑)。

なのでアポイントメントの時に”at your office”って書くだけで、会える確率はまったく違います。これはアメリカならではのtipsかもしれません。

 

製品を生み出し続け、世界を変えていく

ーーでは最後に、世界展開も強化されている貴社の今後のチャレンジを教えてください。

ポケトークに関しては、私は「アメリカ人が英語を全くできない日本人と普通に会話ができる世界」を本気で作りたいと思っています。

ですので、ひたすらそれを目指していきます。

これは英語と日本語に限らず全言語という意味なのですが、そうすると世界はすごく変わるだろうと思っています。

ポケトーク以外でも、今までにない製品をどんどん生み出していきたい。しかも一個じゃなくて生み出し続ける、そして世界をいい方向に変えていく。

それで人類がもっと進化すればいいなと思っています。

ほかに挙げると、日本って全体的に古い体質があるので、そこを変えていきたいというのもあります。例えば会社の女性比率が低いのもそうだし、年功序列の問題もそうです。

もちろんメーカーとして製品を生み出し続ける事はマストなんですけど、それ以外にも国際基準に照らした場合に、日本だけが普通でない事が多いと思っていて、そこを変えていきたいなと思います。

 

ーー松田さん自身もシリコンバレーに渡り、チャレンジし続けておられます。

そうですね、まだまだやりたいことの1%しかやれていないという感覚です。

これから100倍にしていくために、グローバルな製品を生み出せるような会社や体制、そういったチームを作っていくことが非常にエキサイティングです。

シリコンバレーにいると、ものすごいスピードで育って大きくなっていく事業をたくさん目の当たりにします。

そういうことにチャレンジするということ自体が面白いと思いますし、グローバルなプロダクト、グローバルな企業を目指していきたいと思っています。

 

 

 

>前のページ「8年間、社員全員に手書きの手紙!?ポケトーク松田憲幸CEOの組織づくり術(第3話)

>ポケトークの採用情報はこちら

>ポケトークの公式HPはこちら

>>DIMENSION NOTEのLINETwitter  始めました。定期購読されたい方はぜひご登録ください。

著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

Others 関連記事

DIMENSION NOTEについてのご意見・ご感想や
資金調達等のご相談がありましたらこちらからご連絡ください

E-MAIL MAGAZINE 起業家の皆様のお役に立つ情報を定期配信中、ぜひご登録ください!*は必須項目です。

This site is protected by reCAPTCHA
and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.