8年間、社員全員に手書きの手紙!?ポケトーク松田憲幸CEOの組織づくり術(第3話)

「言葉の壁をなくす」をミッションに掲げ、AI通訳機『POCKETALK』シリーズを販売するポケトーク株式会社。22年11月にはDIMENSIONを含め16億円の資金調達も実施し、世界的に躍進を続けている。同社代表取締役社長 兼 CEO松田憲幸(まつだのりゆき)氏に起業家の素養、事業成長の心得などについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた。(全4話)

ゼロイチが明確な、高い目標を掲げよ

ーー採用への間接的効果も見込んでクリエイティブに投資すべきだということでしょうか。

いや、むしろそれが最大の効果と言っても過言ではありません。

あの「特打」のCMには相当お金を使いましたが、結果的に一番の効果は「特打」の利益ではなく、あのCMを見て入ってきてくれた世代の人材です。

2001年に入社した小嶋が今の社長ですし、現CTOの川竹もCAOの田岡も‥あのCMを打ってなかったら誰も入社してないんじゃないでしょうか(笑)。

将来の幹部を採用できるぐらいの力がCMにはあるし、だからこそクリエイティブをケチってダサいCMを作ってしまっては会社自体のイメージも損なってしまう。

大々的にマーケティングをやると決めたからには、商品だけではなく会社のブランドを作る、くらいの覚悟は必要不可欠だと思います。

 

ーー組織作りについてお聞かせください。組織が拡大していく中で、組織の一体感を維持するために意識されていることはなんでしょうか。

目標が明確であることです。

なぜかと言うと、実は我々(ソースネクスト社)もそれを失ったことがあるからです。

それは東証一部上場を果たした直後のこと。それまでは「東証一部上場」というわかりやすい目標を言い続けていたのですが、目標を達成してしまってから明確な目標を指し示すことができなかったのです。

リーマンショックの影響もありましたが、一部上場後の業績の失速具合は非常にひどかった。私自身、目標を明確にできなかった反省があります。

 

ーー高い目標を示し続けないといけない、ということでしょうか。

私はそう思います。それも曖昧な目標じゃダメです。

例えば「IPOする」とか「東証一部上場する」ってYESかNOで答えられるので分かりやすいですよね。つまりゼロかイチがわかりやすい目標が、「目標が明確」ということです。

最近までソースネクストでは「時価総額1000億」という目標を掲げ、それを達成してからは「時価総額1兆円」という目標を掲げています。

そして社員たちには、目標にどのような意味があるのかも示しています。「時価総額1兆円」になった時、あなたの資産はこうなりますという情報を全員に配りました。

もちろんお金だけが価値ではありませんが、お金がいらないって人はあまりいないので、嬉しいことですよね。しかもすごく分かりやすい。

みんなが聞いてワクワクする、明確な目標があることが組織づくりの大前提だと思っています。

 

社員全員に誕生日会で手書きメッセージ

ーーほかに何か意識されていたことはありますか?

経営者と社員との距離は、組織が大きくなるにつれてどうしても離れていくものです。ですので、組織が大きくなるほど経営者の求心力を保つ工夫が求められます。

私の場合は、誕生日会を毎月ずっと開いて、社員一人一人に手書きのメッセージを贈るということを8年くらいずっとやっていました。

そのメッセージを通して、会社の向かっている目標、個人への期待を明確にしてあげる。例えば「あなたは執行役員を目指してください」などです。

ここでポイントは「悪いことは絶対書かない」ことです。「あなたはここを改善してください」って誕生日にメッセージ貰っても誰も嬉しくない(笑)。

誕生日おめでとうございますということと、「あなたのここにすごく助けられました」とか「ここが良かったので、今後はこういうのに期待しています」と書いてあれば、目指す方向も分かるし、期待されているのが分かって嬉しいですよね。

経営者が意識しないといけないのは、部下は思っている以上に自分と話すのが難しいし、一挙手一投足に影響されるということ。

例えば「おはようございます」って言ったのに社長が何の反応も無かったら不安になりますよね。何かやらかしたかな‥って。社長からすると、実際はただぼーっとしていただけだったとしても(笑)。

私はそういう些細な怠慢から求心力というのは落ちていくと思っているので、地道ではありますが手書きのメッセージで思いを伝えることを続けてきました。

 

ーー社員全員へ手書きメッセージとなると、相当時間もかかることだったかと思います。それほど効果も感じられていたのですね。

私はそう思っています。

ここ10年間、私はシリコンバレーに住んでいましたが、手書きのメッセージを社長を退任して止めるまでの8年間行い、毎月誕生日会のために日本に帰ってきていました。

全員に手書きのメッセージを書くというのをやっていたので、距離感・求心力としては保てたのかなと思います。

手法は色々あるとは思いますが、経営者として、会社にとって一番大切な人と向き合う努力を続けることは、時間を割いてでも優先すべきことなのかなと思います。

 

 

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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