悲願の「日本発SaaS・グローバル成長」へ。株式会社ユーザベース 稲垣 裕介Co-CEOが語る今後の展望(第4話)

経済情報プラットフォーム「SPEEDA」、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」などを生み「誰もがビジネスを楽しめる世界」を目指す株式会社ユーザベース 。創業から15年を迎えた同社代表取締役 Co-CEO/CTO 稲垣 裕介氏に起業家の素養、事業シナジーなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤 紀行が聞いた。(全4話)

ミッションバリュー経営の先駆け

ーー御社は組織づくりにおいて、よくロールモデルとして挙げられるかと思います。組織づくりについて意識されていることをお教えください。

15年前、ミッションバリュー経営がスタートアップで一般的ではなかった時代、私たちの会社はそれを取り入れる例の一つとしてよく取り上げられました。

しかし、今ではそれが普通になっており、世の中が変わった、良いことだと思っています。

言葉の力は強力です。

私たちは会社規模が大きくなる中で、言語化しないことによる伝わらない苦労をしましたし、逆にバリューを言語化したことでそれが強く伝わりすぎて、閉塞感を生んでしまうことも経験しました。

なのでバリューは守らなければいけないものではなく、迷った時や苦しい時に立ち返るものであると伝えて、言葉の力を緩和しようとしたりしたこともありました。

グローバルで働く時、前提条件が異なる方々と一緒に働く時に”31の約束”を作りました。今は34に増えています。

言葉を伝えるための方法としてイヤーブックを作り、その年に感じたThe 7 Valuesのエピソードを書くこともしたりしていました。

言葉が「日常的に使われる」ことも重要で、日常的に使われるために簡単な言葉、短くて言いやすい言葉を選び抜くこともポイントです。

カッコよすぎたり長すぎるものではなく、自分たちが日々使える言葉を中心に置くことが重要だと思います。

 

ーー創業初期からビジョン、バリューなどを決めた方が良いのでしょうか?

事業ミッションは最初から必要です。変化があっても良いのですが、自分たちが何のために集まったチームなのか、それを明文化することは必要だと思います。

ただ、バリューに関しては必ずしも初めから必要なわけではないと思います。例えば私が自分で新しい会社を作るとしたら2周目なので何かしらのアイデアが最初からあるかもしれません。

でも、新しい領域でまだ分からないことが多い中、新しいチームで初めて作業をする中で、いきなりバリューを作るのは難しいと思います。

なので、最初はバリューがなくても良いのかもしれません。ただ、バリューの基礎となるコミュニケーションが先に立つべきだと思います。

例えば私や梅田、新野が最初に一緒に共同経営していたときにも、大喧嘩することもありました。その最初の頃に梅田から言われた言葉があります。それは、「感情的にならずに進もう」というものでした。

何気ない一言だったかもしれませんが、そういったコミュニケーションの中で生まれるルールが大切で、それがあるだけで冷静に話し合うことができると思います。それがきちんと揃ってくると、「バリュー」になるのだと思います。

目指すのは「能力の平準化」ではなく「個性の最大化」

ーー最後に、今後のチャレンジをお伺いできますか。

私たちは、事業の垂直立ち上げは非常に強い会社だと自負をしていまして、10億ぐらいの規模の事業はかなりの確度で作れています。そして優れた経営チームを持ち、マルチブランドの中で一定のシナジーを生み出しながら前進できています。

その一方で、これまで個々の最適化に重点を置いていたため、グループ全体としてのシナジーには課題もあります。もっと生産的に自分たちのチームのできることを、利益率を高めながら増やすことができるはずです。

ポイントは「能力の平準化」ではなく「個性の最大化」。

同じような作業をみんなができるようになる土台を作るのではなく、誰でもできる作業を最大限システム化し、個々の労力を軽減させて、それ以上先の属人性が高い領域をもっと全員が集中して、高いバリューで出せるように変化させるべきだと考えています。

現在、私たちはまだまだ労働集約的な仕事も、個々の能力を活かして乗り越えてしまっている。

ある意味勤勉で、目の前のお客さんのためにできることをやっているけれど、ここにもっと強い横軸を持たないと、最終的にはお客さんのためにならないことをやってしまっているので、システム導入などの手段を用いて仕組みを整えていかなければならないと思っています。

そして、私たちの強みである「さまざまな事業を立ち上げる力」を活かしながら、次の段階へとスケールさせられる組織に変わることが現在の最大のチャレンジです。

これができると、次のステップが見えてくると思います。

各々の事業が弱い状態にあるとシナジーを生み出すことが難しいと我々は経験的に感じています。一方だけが強いと、その売上に頼り始めたり、強い製品を前提にした機能開発に走り始める傾向があるからです。

最初に「NewsPicks」を立ち上げた時も、実は最初「SPEEDA News」という名前でした。結果、みんな「SPEEDA」を前提とした事業モデルを考え始めるんです。

もちろん、機能に関する話だけであれば良いのですが、「NewsPicks」の目指すのはそうではなく、BtoCの世界に新しいビジネスパーソンに対する経済情報の価値を創出することです。別のチームで別の製品を作っていたわけですから、それは間違いだということで、名前を変えました。

そうして「自分たちのブランドに対する価値をどう創り出すか」と視点が変わり、「NewsPicks」が成長した今だからこそ「SPEEDA」と「NewsPicks」をどうシナジーさせるかという、大きな可能性があるフェーズに来ることができたと思っています。

「SPEEDA」や「INITIAL」、「FORCAS」、「NewsPicks」、新しく「AlphaDrive」のコンサル価値なども組み合わせながらトータルで目指している価値を明確に言語化し、実際にプロダクト連携も開発して強い“一つの事業”として発展させられる可能性を持っています。

これが達成できればお客様への貢献価値も、当然ながら売上も上がっていく。さらにスケールする仕組みもできていれば利益率も上げられる。

私たちが集まっている目的をぶらさない前提で、この構造転換を追いかけています。

 

ーーグローバルへの挑戦はいかがでしょうか?

過去のNewsPicks事業のグローバル展開失敗と同じ轍は踏まないという前提で、グローバルへの挑戦は絶対にやらなければならないと考えています。

同じ轍を踏まないためには、日本の主力事業が強い状態でキャッシュを回せないといけません。前回はキャッシュを生み出していない中で100億円近い額で「Quartz」を買収し、それが失敗するとPLも含めた大きなダメージがありました。

なので挑戦の順番を間違えてはいけないと思っています。

日本市場の可能性はまだまだありますが、その先には私たちもそうですし、日本勢としても悲願のSaaSソフトウェア領域でのグローバル挑戦が必ずあるべきだと思っています。

我々にはカーライルのチームもありますので、以前よりもグローバルへアクセスはしやすいですし、一緒に新たな挑戦をしていくことはできると思っています。

 

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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