「金融機関との細かな報連相」株式会社GENDAが多額の資金調達に成功した要因とは/申 真衣社長(第2話)

「世界中の人々の人生をより楽しく」というAspiration(アスピレーション=大志)を掲げている、株式会社GENDA。M&Aでの「連続的な非連続な成長」を成長戦略とし、創業以来、アミューズメント施設運営を中心とした数多くのM&Aを通じて、事業の拡大やリソース最適化による効率的な経営を実現している。同社代表取締役社長 申 真衣氏に起業までの経緯、資金調達のポイントなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの古家 広大が聞いた。(全4話)

借入によるM&A資金の調達

ーー御社は上場前から多くのM&Aを成功させ、事業を拡大されてきましたが、M&Aのポイントを教えていただけますか。

M&Aが成功した要因は大きく2つ挙げられます。

一つは、創業時から早い段階でソーシングが出来ていたことです。

今ではM&Aに積極的な企業と認識されており、多くの案件紹介をいただけるようになりましたが、創業当初の会社が未熟な段階でも片岡の人脈のおかげもあり、当時からM&Aの話をいただけていたことが当社にとって大きかったと思います。

もう一つの要因は、資金調達です。

スタートアップがM&Aを行うには、誰が資金を出すのかという問題があります。

私たちは創業した1日目から、借入による調達が非常に重要だと考えていました。

私たちの場合、未上場のフェーズでもエクイティによる資金調達を何度か行いましたが、大きなM&Aについてはそのほとんどを借入により調達してきました。これは株式のリターン最大化という意味で非常に重要です。

資金を調達できた理由については、金融機関との細かな報連相を必要以上の粒度で行ったことが挙げられます。

また、基本的には「借りられるだけ借りる」というスタンスで、創業から2年半で既に5行以上の金融機関と借入の取引があり、返済の履歴もありました。

私自身も創業間もない頃は毎週金融機関の担当者に電話をかけるなど、丁寧なコミュニケーションを心がけていました。

 

ーー私(古家)も前職は銀行員で、融資も担当していましたが、タイムリーに細かな情報を伝えてもらえていると審査部への交渉がスムーズでした。社長や財務担当者が密なコミュニケーションをすることによって、借入での資金調達を進めていたんですね。

そうですね。

当然ながら、融資を受けられる機関とそうでない機関が存在しますので、多くの金融機関との面談を積極的に行いました。

ゲームセンターやスタートアップに対する姿勢は、銀行によって異なります。

加えてコロナウイルスの流行が始まり、人々の動きが制限される中で、ゲームセンターのビジネスが厳しい期間でもありました。

それでも、金融機関の方々と密接に、丁寧で継続的な会話を維持し続けたことが大切だったと感じています。

現在でも、預金を少しでも置いておくなど、銀行との関係深耕を意識しつつ、約50行の金融機関と良好なお取引をさせていただいています。

 

「GENDAグループ全体で世界一を目指している」ことを体感していただく

ーー御社はM&Aを起点に事業を大きく成長させていますが、企業文化などを統合する際の重要な要素を教えていただけますか。

当社は、大きくターンアラウンドをすることが前提のM&Aはしていません。

元々の会社の良いところを伸ばしていくことと、GENDAグループとして提供できる価値をグループインした企業でも発揮できるようにすること。そして、「世界一のエンタメ企業を目指している」という大きなビジョン達成にグループの一員として参加していることを体感してもらえるようにすることが重要だと考えています。

ですが、過去を振り返ると、2020年に行った株式会社セガ エンタテインメント(以下、セガ エンタ社)のM&AとPMIについては向き合い方が異なっていたなと思います。

セガ エンタ社は、当時のGENDAよりも従業員数や売上が圧倒的に大きな事業体でしたので、私たちが適応するというスタンスで進めました。

片岡は元々ゲームセンターの経営を行っていたので、現場を熟知しています。従業員約1000名に直筆で書いたお手紙を送ったり、1年かけて全国の店舗に片岡自らが訪れるというコミュニケーションで統合を進める努力をしました。

ゲームセンターという大きな事業が出来てからは、オペレーションを統合していくことで規模の経済が取れますので、売上や利益を伸ばすことが仕組みとしてうまく機能しているように感じてます。

 

ーーセガ エンタ社がこれまでに洗練させてきた良い部分を、他の比較的小さな規模の会社にも伝播させて全体で大きな一つの事業にしていったということですね。

そうですね。

また、片岡はイオンファンタジーのゲームセンター運営の経験がありますので、例えば、ショッピングセンター内の店舗作りでは、前職での知見を活用し、よりファミリー向けにするという方針を立てています。

さらに、現在の株式会社GENDA GiGO Entertainmentの社長である二宮は株式会社バンダイナムコアミューズメント出身で、アミューズメント業界に精通しています。二宮の経験や知見も取り入れ、ベストプラクティスを探りながら進めています。

今までのいいところは残しながら、GENDAに集まったプロフェッショナル人材の知見や経験も活かし、今後もより楽しんでいただけるようなアミューズメント施設を作り上げていきたいと思います。

 

1株あたりの利益を伸ばすようなM&Aを

ーー御社は2023年7月に上場された後も積極的にM&Aを行い、「連続的な非連続な成長」を進めています。会社の中長期的な成長という観点を含めて、どのような点を重視してM&Aを行っているのでしょうか。

当社はエンターテイメント領域で「連続的な非連続な成長」を進めております。

M&Aの成立にはご縁によるものが大きいと思っておりますが、自社のM&Aを推進するチームではソーシングの件数を目標に置いており、昨年は目標の2倍の数を達成しました。

また会社の中長期的な成長、という観点では、まず株主からの信任が必要だと思っています。

それはつまり、株価の引き上げが必要ということですが、会社が株価をコントロールすることはできません。我々にできることは1株あたりの利益をしっかりと上げていくことです。

M&Aを行う際に、株式価値が希薄化するような資金調達によってPLを拡大することもできると思いますが、そうではなく、1株あたりの利益を伸ばすようなM&Aを行っていく。それを株主の皆様に理解していただき、実行することで信任を得たいと思います。

その結果、より長期的な戦略に対する合意を得ることができるのだと考えています。

 

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古家 広大

古家 広大

早稲田大学卒業後、三井住友信託銀行に入行。 広島にて個人向けFP業務を行った後、大阪にて法人RMを経験。非上場からプライム市場の企業まで担当し、融資や不動産など信託銀行の幅広いソリューション営業に従事。また、ESGやSDGsをはじめ、CGC改訂への対応支援も行い、グローバルで勝ち続ける企業への成長を非財務領域も含めてサポート。 2022年DIMENSIONに参画。LP出資者からの資金調達と国内スタートアップへの出資・上場に向けた経営支援を担う。

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