
#インタビュー
「Beautyの世界をアップデートしながら、多くの人を幸せにしよう」というミッションを掲げ、リアル店舗「@cosme STORE」やECサイト「@cosme SHOPPING」等、ビューティ領域でネットとリアルを効果的に組み合わせた垂直型の事業を展開する株式会社アイスタイル。同社代表取締役会長 CEO 吉松 徹郎氏に、起業家の素養や、大手企業との提携時の心構えなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの巻口 賢司が聞いた。(全4話)
ーー御社は美容総合サイト「@cosme」を中心として、ECだけでなく30店舗以上の直営店舗も保有されており、オムニチャネルで展開されています。直近では、オンライン完結型のD2Cブランドが増えている中で、御社にとっての物理的な店舗スペースを持つことの重要性について教えていただけますでしょうか。
私たちが店舗を展開していることは、今では「ネットとリアルの融合」として当たり前のように捉えられていますが、当時は猛反対されました。
インターネットビジネスは、いかにアセットを軽くし、少人数で効率的に運営してファンを増やしていくかが鍵だと考えられていた中で、リアル店舗への展開には強い反対の声がありました。
ただ、根底にあった考えはシンプルで、「ユーザーはネットだけでモノを買うのだろうか?」という疑問でした。
結局、eコマースが化粧品マーケットの50%以上を占めるのであれば、ネット中心の戦略でも良かったかもしれません。しかし、もし70%がリアル店舗経由での販売であれば、リアルを展開しない手はありません。
私は当時から、化粧品はリアル店舗での販売が70%程度は残ると考えていたので、これを無視すべきでないと主張し続けていました。
ビジネスは、最初の立ち上げが重要です。
「ネットビジネスがやりたい」と言って最大30%程度の市場だけを見るのか、化粧品業界のユーザーの行動に合わせてビジネスを展開していくのか。
私たちはユーザーの行動に合わせて事業シナリオを考えていたので、最初から事業計画書にはリアル展開を記載していました。
これが実現できたことが、やはり大きな転換点となりましたね。
ーー御社のサイトで人気のあるコスメ商品が、実際の店舗やドラッグストアではあまり売れていない、といった店舗側の声も吉松さんはしっかりと把握されていて、そのギャップが自社で店舗展開する決断に繋がったと伺いました。
その通りです。
実際に進めていくほど、ネットの流通とリアルの流通の違いの大きさに驚きました。
価格も取り扱う商材も異なる中で、いかにユーザーの方々に同じ商品と出会い、検討できる場を提供するかということを徹底的に考えました。
ーー一度株主総会で否決された中で、ご自身で店舗を立ち上げられたと伺いました。こちらのお話についてもお聞かせください。
私が最初に設立したのは資本金300万円の有限会社でした。当時、株式会社は1,000万円の資本金が必要で、26歳の私には1,000万円も用意できませんでした。
そのため、会社設立時から資本の半分以上は外部の出資者が占めることになり、私の株式保有比率は徐々に下がっていきました。
資本政策を考えるときに「創業者の上場前の株式保有率は10%で十分だ」と教えられた世代です。当初は株式保有率が下がることを抵抗感なく受け入れていました。
しかし実際には保有率が下がると、銀行からの借入れが困難になったり、経営責任の所在が不明確だと指摘されたり、株主からさまざまな要求が出てきました。
そこで私は、「いつでも社長を辞める覚悟がある」と常に表明していました。
「私が辞めて、社長を交代することになっても、最大株主としてしっかり見させていただきます」
このように対峙できたのは、この事業について最も深く考え抜いているのは自分だという自信があったからです。リアル店舗の展開の件も同様です。
取締役会で否定されても、「他から資金を集めてでも実現する」と。株主からの否決と、自分が必要だと確信していることは別物だと考えていました。
周囲から否定されても、いかに自分のビジョンを実現するか。必要なら別の投資家を見つけて新会社を立ち上げる。
つまり、株主集め、資金調達、人材採用は、すべてビジョン実現のための手段の一つとして捉えていたということです。
ーー多くの起業家にとって、2つ目の事業展開は悩むポイントかと思いますが、吉松さんの「リアル店舗の展開」への意思決定プロセスについて、詳しくお聞かせいただけないでしょうか。
店舗展開は長年の願いでしたが、私自身店舗を運営した経験がなく、店舗運営のプロフェッショナルとの出会いが不可欠でした。
2006年頃に、偶然にも化粧品専門店の経営者の方との出会いがあり、店舗展開の話をしていただきました。
当時、「このチャンスを絶対に逃してはいけない」という強い思いで意思決定をしました。次のタイミングがいつ来るかわからない。そういう意味で、見逃せないチャンスには非常に敏感にアンテナを立てています。
また、「@cosme TOKYO」の原宿店も同様です。
ビルまるごと1棟を使った出店の話が上がったときも、実は10年近く原宿で出店場所を探し続けていたこともあり、全力で機会を掴みにいきました。
なぜなら、私は「原宿でなければ成功しない」と確信していたからです。
渋谷、新宿、池袋など、山手線の主要駅にはすでにデパートがありました。デパートがない駅で、なおかつ人通りの多い場所となると、原宿しかありません。
当時は「原宿は若者の街で、化粧品を買いに来る場所ではない」「表参道にもブティックがある」と言われましたが、私は「ここしかない」と確信していました。
候補にあがったビルの規模や必要投資は想定以上でしたが、このチャンスを逃せば次はないと考え、出店を決断しました。
このように、オムニチャネル戦略においては、何をするかといった戦略よりも、いつ実行するか、誰と組むかが極めて重要です。この歯車が合わなければ、事業は前に進まないと私は考えています。
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