#インタビュー
「エネルギーの民主化を実現する」というミッションを掲げ、東京大学研究室から誕生したデジタルグリッド技術の普及に向けて、電気を使う企業が主体的に電力を調達する取引プラットフォームを提供するデジタルグリッド株式会社。2025年4月に東証グロース市場に上場した同社 代表取締役社長 豊田 祐介氏に、経営者に必要な素養や、電力業界及び再生可能エネルギーの今後について、DIMENSIONビジネスプロデューサーの古家 広大が聞いた。(全4話)
ーー御社は、多くの大手企業と資本業務提携を行ってこられました。大手企業との提携を進めるためのポイントを教えてください。
まず、提携会社の数を増やすためには、「最初の数社」がポイントになると考えています。
提携会社数が10社、20社を超えてくると噂が噂を呼び、比較的出資を受けやすい状況になるため、スタートダッシュは非常に重要です。
次に、我々は元々プラットフォームを運営したいと考えていたため、特定の会社の色が付くことを避けるため、同じ業種の中でなるべく複数社と業務提携するよう心がけていました。
例えば商社であれば、三菱商事・住友商事・双日・豊田通商等と提携させていただく、というイメージです。
また、弊社への出資意図はシナジー創出がメインとなるため、当時は「電力の新しい売買の仕組み」を積極的に開示したり、希望者どなたでも開発過程や要件定義の様子を見られるようにしたり、実際のデバイスを配布したりしていました。
このように、提携先に知見を溜めていただける、「R&D的に出資していただける仕組み作り」を意識していましたね。

ーー提携先から、カスタマイズなど個別のオーダーを受けることもありましたか?
上場前には60社の株主がいらっしゃり、数が多かったためそういったカスタマイズのご要望をいただくことは少なかったですね。
また、個別のニーズに細かく対応するリソースも無かったため、先方のオーダーに答えるというよりは、我々がやろうとしている実証に対して「興味がある方はいますか」とお声がけし、賛同いただいた方に集まっていただいたような流れでしたね。
ーー初期においては、スタートアップ側が「こういうことをやります。これに対して賛同してくれますか」というスタンスを取ってしまった方が進めやすいのかもしれませんね。
そうですね。
弊社には、大手株主はいらっしゃるのですが、いわゆるスタートアップの世界での「リード投資家」という役割の株主はおりません。
株主間契約や投資契約の作成から、資金調達や投資家との交渉まで、全て自分たちで行いました。
スタートアップ自身が主導して調達をすることで、大変ではありましたが、バランスが求められるプラットフォームビジネスをするには動きやすかったのではないかと思います。
ーー規制の影響を受けやすいエネルギー業界において、どのような点を意識して事業を組み立てられているのでしょうか。
私は、自社の事業によるオーガニックな成長に加えて、イノベーティブなものに一部投資することを意識しています。
例としては、核融合・水素・アンモニアなど一定認知されているものもあれば、「LDES(Long Duration Energy Storage)」という長時間エネルギーを貯蔵できる技術など様々です。
全ての技術に自分たちがゼロから取り組むことは厳しい一方、カバーすべき技術にはしっかり投資しておくことが、インオーガニックな成長に向けて重要だと考えています。
投資をすることは、最新技術の知識を得られることに加え、日本のエネルギーの規制を占う上でも非常に大切な知見になるんですよね。
規制自体は確かに予測しづらい部分がありますが、長く業界に身を置き、様々な知見を得ていくと、国が考える方向性、”文学”みたいなものが分かるようになります。
あとは小さなコツとして、最近は規制について動画で説明されているものも多いのですが、委員の方々の表情や言い回しから読み取れることも意外とあったりします。
このように最新の動向をキャッチアップしつつ、国の政策に対して提言することもあり、弊社にも国の政策に対して提案、提言する専門のチームがあります。
ロビイングの際には、「自社の利益ではなく日本社会を良くするための提案、提言をすること」を最も重視しつつ、既存プレーヤーとどのように住み分けるか・共存するかといった整理も求められるため、粘り強い議論が必要になります。
ーーロビイングの中で順調に進んだ実例や、その要因について感じたことがございましたら、お聞かせください。
「バグ出し」は歓迎されることが多いですね。新しい制度を作ることに伴う「想定外のバグや挙動」について指摘をすると、改善いただけることが多いです。
一方で、「大きな方向性」については、多数の関係者と共に検討が重ねられた結果となりますので、提言をしても変更いただくのはなかなか難しいです。
具体例としては、2022年にバーチャルPPA(再生可能エネルギー電力の物理的な供給は受けず、その「環境価値」のみを取引する仕組み)が開始し、FIPという補助制度が元々認められていなかったのですが、「バーチャルPPAに対してFIPが適用されるべきだ」ということで株主の方々にも署名をいただき、提言が認められた、などの経験はありますね。

ーー規制など外部要因に業績が左右されるビジネスモデルの中で、株主の方々やマーケットに説明する際のポイントをお伺いできますか。
ロビイングの話をしましたが、提言ばかりしているわけではなく、基本的に国の方針は守り、変えてもらうべきことのみ変えてもらうといった形で進めています。
実際、2020年にDGPをローンチしてから制度変更は幾度となくございました。
しかし、制度が決定してしまえば従うほかないため、大事なのはそれらをきちんとビジネスに落とし込むことです。
業績が変わらないよう、外部要因は受け入れて、我々のプロダクト自体をアップデートしていく。そのためにインハウスのエンジニアを抱えてソフトウェアの開発に注力しています。
外部に説明をする際には、過去5年間のトラックレコードがあるため、「実際にこうした制度変更がありましたが、それによって私達の業績に影響は出ていない」ことを実績として説明しています。
制度変更を受け入れつつ、順応してパフォーマンスをし続ける。これに尽きるかと思います。
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古家 広大
早稲田大学卒業後、三井住友信託銀行に入行。 広島にて個人向けFP業務を行った後、大阪にて法人RMを経験。非上場からプライム市場の企業まで担当し、融資や不動産など信託銀行の幅広いソリューション営業に従事。また、ESGやSDGsをはじめ、CGC改訂への対応支援も行い、グローバルで勝ち続ける企業への成長を非財務領域も含めてサポート。 2022年DIMENSIONに参画。LP出資者からの資金調達と国内スタートアップへの出資・上場に向けた経営支援を担う。
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