本物の情熱に対して、まっすぐに ユーザベース 梅田優祐社長(第1話)

企業・業界情報プラットフォーム「SPEEDA」やソーシャル経済メディア「NewsPicks」を提供している株式会社ユーザベース。「経済情報で、世界をかえる」をミッションとし、2008年創業でありながら、2013年に上海・香港・シンガポールに拠点を開設し、2016年にはスリランカにリサーチ拠点を開設した。翌2017年には「NewsPicks」の米国進出に伴い、Dow Jones社との合弁会社をニューヨークに設立するなど、グローバル展開にも力を入れている。今回は、同社の代表取締役・梅田優祐氏に起業家の素養や「NewsPicks」開発秘話などについて聞いた。(全6話) ※本記事は2018年4月現在の内容です

コンピュータが起業家になれない1つの理由

――起業家にとって必要な素養をお教えください。また、それがどのような経緯で梅田さんの中に育まれてきたかもお聞かせください。

この質問に対してパッと思い出したのは、落合陽一さんのお話です。

落合さんは、「コンピュータに負けないために持つべきなのは、根性やガッツではありません。コンピュータには無くて人間にあるのは、『モチベーション』です。コンピュータには『これがやりたい』という動機がありません。目的を与えれば人間には太刀打ちできないスピードと精度でそれを処理しますが、それは『やりたくてやっている』わけではないでしょう。いまのところ、人間社会をどうしたいか、何を実現したいかというモチベーションは、常に人間側にあるのです」(落合陽一著『これからの世界をつくる仲間たちへ』)とお話しされています。私も本当にそのとおりだと思っています。

起業家というのは、『モチベーション』が必要な最たる職業ですよね。

 

株式会社ユーザベース 代表取締役社長(共同経営者) 梅田優祐。1981年生まれ。戦略系コンサルティングファームのコーポレイトディレクション(CDI)、UBS証券投資銀行本部の東京支店を経て、2008年に新野良介・稲垣裕介と共にユーザベースを創業。ニューズピックス取締役、およびNewsPicks USA, LLC チェアマンも務める。

 

――モチベーションを高めるにはどうしたらよいのでしょうか?

モチベーションの源泉は情熱です。つまり、情熱に対してまっすぐな人が起業家に向いています。どこからか湧き出てくる、論理では片付けられない情熱に正直に行動できる人はモチベーションを高めていくことができます。

また、情熱に正直でいると、まわりに人が集まってきます。そして、モチベーションがあれば、意志を強く持つことができます。英語だと「Willingness」というのでしょうか。意志の強さがあれば、あとのことはどうにでもなるものです。

当然ながらコンピュータには意志がないので、起業家にはなれません。そういう意味で起業家にとって重要な素養は、情熱だと思うのです。

ただし、少し気をつけなければいけないことがあります。それは、「本物の情熱」と「偽物の情熱」があるということです。

 

情熱の「本物」と「偽物」の見極め方

――「本物の情熱」と「偽物の情熱」はどう違うのでしょうか?

「本物の情熱」は、寝ても覚めても頭にこびりついて、離れない情熱のことです。お風呂に入っている時も、寝ようとしている時も、歩いている時も、勝手に考えてしまう。無意識の中でも考えるようになっていることは「本物の情熱」といえます。

一方で、「偽物の情熱」は長続きしないものです。誰でも「ちょっとやってみたいな」という気持ちになることはありますよね。しかし、それだけでは長続きしません。

例えば、「新規事業を考えよう」と思いを巡らせてパッと閃くことがあるでしょう。ですが、それだけでは「偽物の情熱」です。どんなことがあっても持続する「本物の情熱」を見極めることが大切ですね。

 

――梅田さんは本物の情熱であるかどうかを、どう見極めていらっしゃいますか?

私はとにかく自問自答を繰り返します。歩いている時や通勤の時など、無意識に考えてしまっていることに対しては、「本物の情熱なのかもしれない」と思いを強めていくのです。私は、この”常に考えてしまう状態”のことを「無意識の中の意識」と呼んでいます。

人によっては、誰かとディスカッションする中で、「いろいろな人に反対されようが、何を言われようが、自分はこれをやりたいと思っているんだ」という思いに気づく人もいるでしょう。

私にとっては、「無意識の中の意識」が、本物の情熱かを見極めるリトマス試験紙になっていますね。

 

――梅田さんは、昔から情熱的なタイプだったんでしょうか?

学生時代は、何をやっても長続きしない、すぐに飽きてしまうタイプでした。情熱的とは程遠いタイプですね。

しかし、振り返ってみると、小学生の頃、野球にはとにかく情熱を傾けていたんです。仲間たちと一生懸命練習をして、試合で勝っても泣くし、負けても泣く。本当に純粋に熱中して、喜怒哀楽を表に出していました。

学生時代の私は、野球と同じぐらい没頭できる、心の底からワクワクできる対象をどこかでずっと探していました。そして、ようやく27歳の時に現在のSPEEDAの原案を考え、ユーザベースを創業しました。

だから、今情熱をもっていない人もいずれ本物の情熱に出会うことがあります。その瞬間に、情熱に正直になることを大切にしていけばよいと思います。

 

 

>第2話「新規事業の成否を分ける、情熱と論理のバランス」に続く

>ユーザベース公式HPはこちら

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DIMENSION 編集長

DIMENSION 編集長

「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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