
#インタビュー
「デザインの力を証明する」をミッションに掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)に欠かせないUI/UXデザインのリーディングカンパニーとして存在感を高め続けている株式会社グッドパッチ。2020年には東証マザーズ上場も果たした。そんな同社を牽引する代表取締役社長/CEO 土屋尚史氏に、起業家にとって重要な素養、成長事業の創り方などについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた(全5話)
ーー組織づくりについて工夫されていることをお聞かせください。
「天才に頼らない組織」というコンセプトがあります。
デザイン会社と聞くと、天才デザイナーが率いる個人事務所など、属人性の高い会社のイメージが強いと思います。確かにデザインの仕事から属人性をすべて排除することはできませんが、そのような天才に依存する組織には永続性がありません。
グッドパッチは「天才に頼らない」と決めて、創業の初期段階から社内の知見やノウハウをシェアする文化を徹底してきました。毎度“車輪の再発明”みたいな仕事をするのではなく、ナレッジ化できる部分は共有化して底上げをする努力をし続けてきたのです。
具体的には、創業初期からナレッジやプロセスをシェアする場を定例的に実施していますし、組織が100人を超えた頃からはドキュメントとして残すように仕組み化してきました。
すごく普通のことのように聞こえるかもしれませんが、クリエイティブ系の会社でこれを組織文化として根付かせることができている会社はほとんどありません。言語化しづらい、抽象的な領域の業務が多いせいで仕組み化を諦めてしまうからです。
その点、グッドパッチは会社の文化としてナレッジを共有する仕組みが根付いていて、それが組織の強みにもなっていると思います。
ーーどのようにしてその組織文化を築きあげていかれたのでしょうか?
経営者が強い気持ちを持ってやり切る。これに尽きると思います。
弊社は何十社ものクライアントワーク、さらには自社でのプロダクト開発が複数あり、また2015年からは初の海外拠点「Goodpatch Berlin」を開設するなど、様々な観点からビジネスに関わることのできる機会が揃っています。
これらのナレッジが有機的に繋がっていることがグッドパッチ最大の競争優位性であり、逆にナレッジが組織内で循環していないことは顧客に対して最大価値が出せていないことと同義である、と明言しています。
私は会社の最優先目標として社内でのナレッジ循環を掲げているほど、このことにこだわりを持ってコミットしています。組織文化は経営トップの強い覚悟無くして生まれることはありません。
ーー御社はデザインのクライアントワークのみならず、様々な自社プロダクトを開発されています。いわゆる「受託」と「自社プロダクト」を両立させる秘訣をお聞かせください。
グッドパッチは一つの事業だけでなく、事業ポートフォリオで勝つ会社にしたいと創業当初から考えていて、常に私の頭の中にはメイン事業以外の新規事業イメージがたくさんあります。結果として毎年一個は必ず新規事業を立ち上げてきました。
やはりクライアントから依頼された仕事だけをやっているのと、実際に自社で事業を立ち上げて運営をするのとでは得られる経験値が違います。相乗効果があると判断しているからこそ、複数事業を立ち上げているのです。
ーー新規事業を選定する際に気をつけているポイントがあればお聞かせください。
会社全体のビジョン・ミッションに繋がった事業であること。これが最も重要です。
極端な話をすると、いくら儲かるからと言って「タピオカ屋さんを始めます」という意思決定はしません(笑)。マーケットが大きい/儲かる、というロジックで意思決定をしないということです。
経済合理性だけを見ると意義が不明確だったとしても、社会的に見てグッドパッチがやる意義があると思えばやる。「デザインの力を証明する」というミッションに繋がるのであればやる。これが私のシンプルな意思決定ロジックです。
ーー新規事業をしっかり成功させる上で意識されていることは何でしょうか?
「誰にコミットさせるか」です。
よく大企業では新規事業立ち上げ時に外部人材を登用して責任者に据えるというパターンがあると思いますが、我々は絶対に社内人材から責任者を登用します。
今急成長しているGoodpatch Anywhere(フルリモートのデザインチーム)、ReDesigner(デザイナー向けキャリア支援)の責任者は、過去にあった組織崩壊の時にも逃げずに会社にコミットしてくれた古株社員です。
彼らは新規事業経験が豊富なわけでもないですが、彼らがコミットしてくれているからこそ事業が成長しています。
ーーなぜそこまで社内人材にこだわるのでしょうか?
「能力値よりもコミットメント」。
新規事業においてはこれが成功の絶対条件だからです。
表層的なテクニックは新規事業の成否にあまり関係がありません。これは起業も同じですが、テクニックよりも貪欲に学んで成長し続けられる人材、「諦めない」人材が最後は成功します。
逆に、テクニックがある人を外から招いたとしても、覚悟が決まっていない人だと苦しい状況になるとすぐに逃げ出してしまいます。
私自身、デザイナーとしての経験が無いのにも関わらず、UI/UXデザインの会社をここまで成長させることができました。実体験を伴って「能力値よりもコミットメント」が重要であると確信しています。
自分事として会社のことを考えられる人材。ちょっと苦しい状況になったとしても歯を食いしばって逃げない人材。
そんな人材を育て、責任者に抜擢するのが新規事業立ち上げのポイントだと考えています。
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著者 伊藤紀行
DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業。楽天、EdTechスタートアップを経て、株式会社ドリームインキュベータにて国内のスタートアップへの出資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。FinTech(金融 x IT)、D2C、メタバース、ドローンなど幅広い事業領域の企業への出資と並行して 、出資先の経営陣への経営支援を実施。 21年、株式会社ドリームインキュベータからのDIMENSIONファンドMBOに参画。 志高い起業家へのキャピタリストとしての支援を通じ、日本経済の活性化に取り組む。 出資支援先であるFinTechスタートアップ、株式会社400Fの社外取締役。ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当
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