澤田貴司代表が率いるロッテベンチャーズ・ジャパン が描く、スタートアップ・大企業連携の未来(第3話)

2022年4月から新たにWell-being 分野などを対象に国内外のシードからミドルステージのベンチャー企業へ投資活動・事業支援を行うロッテベンチャーズ・ジャパン(株式会社ロッテホールディングスの100%出資CVC)が業務開始。ファーストリテイリング副社長、リヴァンプ創業、ファミリーマート社長など華々しい起業・事業経営実績を持つ澤田貴司氏が同社代表に就任し、話題を集めている。今回は澤田氏が考える起業家の素養、事業経営のポイントなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた。(全3話)

スタートアップ・大企業連携の要諦

ーー今回、ロッテグループのCVCを立ち上げられました。スタートアップが資金調達や大企業連携する際に留意すべき点などがあればお聞かせください。

まず前提として、私自身の過去の資金調達の経験は今のスタートアップの方々にはあまり参考にならないように思います。

リヴァンプ創業間もない頃に1週間で9億円の増資を完了させることができました。私や共同代表であった玉塚さんを信用してくださった資産家の方々が短期間で9億円もの投資を決めてくださったのでした。しっかりとした事業計画資料や資金調達スキームなどは今思うと残念ながらありませんでした。そのような状況で資産家の方たちは投資をしてくださいました。

今の起業家の皆さんの参考になることをひとつだけあげるとすれば、投資をいただいた方たちからの「信用」こそが一番重要だということです。
今でもリヴァンプに投資をいただいた株主の皆様にはただただ感謝しかありません。

我々の過去の仕事をご評価いただき、有難いことに「澤田、玉塚なら信用出来る」とご判断いただいたものでした。

 

ーーベンチャー企業の大企業連携についてはいかがでしょうか。

大企業のトップのコミットメントをどのように引き出せるかが重要だと思います。
スタートアップ企業が大企業と連携する上でこのことが極めて大事なことのように思います。

そのためには経営レベルでベンチャー企業と大企業の利害が一致していることが重要です。

例えば私が社長をしていたときのファミリーマートの経営課題はある程度明確でした。具体的には既存店客数減少、少子高齢化、労働力不足、現場労働力の多様化、人件費ほか色々なコストの増加など。

まずは自社が抱える課題は何かを明確に設定することが重要だと思います。
この課題を明確化し解決が出来そうな企業にこちらからアプローチさせていただき連携していく。あるいは多くの場面で自社の課題をベンチャー企業に伝えアプローチいただくケースもあると思います。

現在ファミリーマートが積極的に取り組んでいる無人店舗システムを構築されたTOUCH TO GO様との資本業務提携や、店舗内リーチインでのドリンク補充ロボット導入をいただいたテレイグジスタンス様との取り組みは、ファミリーマートが直面する課題を双方が理解し何度も実店舗で試行錯誤し一緒になって課題解決をすることを前提とする業務提携となりました。

このケースは既存店舗で起こっている課題が明確で、仮にトップが変わったとしてもあるべき未来に向けて連携し続けることができるように思います。このように双方の企業のトップがコミットし一緒に課題解決することが極めて重要だと思います。

私は大企業とスタートアップ企業の連携がうまくいかないケースは多くの場合大企業側に責任があるように感じています。大企業は自社の課題を徹底的に理解し、その課題に取り組んでいただけるベンチャー起業家に敬意を払い、一緒になって課題解決を実行するという強い意思が必要だと思います。大企業の面々は大きく意識を変えていかないといけないと思います。
ロッテベンチャーズ・ジャパンの存在意義もこのような課題解決をベンチャー起業家の皆さんと実行するところにもあるように考えています。

 

アジアを見据え、謙虚に学び、挑戦し続ける

ーー改めて、ロッテベンチャーズ・ジャパン立ち上げ、代表就任の経緯についてお聞かせください。

私がロッテベンチャーズ・ジャパンの代表になる話を頂戴したのはロッテホールディングス代表である重光昭夫さんからです。

私と重光さんの出会いは2000年ごろのユニクロ韓国進出交渉にまで遡ります。

私がファーストリテイリングの副社長で、重光昭夫さんがロッテ側のご担当でした。最初は交渉相手として面会しました。そのご縁をきっかけに、私がユニクロ退社後も重光さんからはクリスピー・クリーム・ドーナツ共同創業やロッテリアの経営改革、ロッテ免税店創業など、ずっとチャンスをいただきました。

重光さんを私はとても尊敬しているのですが、彼のすごいところは「挑戦への貪欲さ」にあると思います。

韓国におけるロッテのプレゼンスは日本と比べるとはるかに大きく、流通、ケミカル、ホテル、エンタメ、金融などなど、さまざまな事業を展開しています。今日韓国においてこのようなコングロマリット企業が創造出来たのも重光さんの常に市場を見つめ、伸びて行くと判断した市場に経営資源を積極的に投下してきた貪欲さの賜物だと思っています。

一方で日本におけるロッテといえば「お菓子」のイメージ。そのブランドがあること自体は素晴らしいことですが、韓国の状況と比べると成長速度は遅いと感じています。

重光さんの「日本市場でもこのままの状況でとどまるつもりはない、もっと多様化・活性化し、素晴らしい社員とともに貪欲に新しい挑戦がしたい。韓国での成功を日本でもどんどん展開したい。」という想いに私は共感し、ご一緒することを決めました。

4月に着任したばかりなのでまだまだこれからではありますが、韓国の事例からも謙虚に徹底的に学び、新たな投資や協業をロッテベンチャーズ・ジャパン発信でどんどんと実施出来ればと考えています。

 

ーー投資対象の分野は食には限らないという理解でよろしいでしょうか?

人々の豊かなくらしを実現するため、Well-being分野へ積極的に投資していきます。

なので、人の健康、幸せ、食、ヘルステック、バイオテックという分野には強い興味がありますが、現段階ではそれらに限るつもりはありません。始めたばかりの会社なので、まずは色々な案件から謙虚に学び、組織の力もつけながら投資業務や投資後の企業へのバックアップなどを実現してゆきたいと思います。

これだけCVCが多数ある中でロッテベンチャーズとしての確固たるプレゼンスを作っていきたいという想いは強くあるので、特に投資先の方々の未来の成功のために出来うることを徹底的にさせていただきたいと願っています。

 

ーー今後の展望、チャレンジについてお聞かせください。

基本としては、ロッテ本体、韓国ロッテ、韓国ロッテベンチャーズと一丸になってやっていきます。

私は、様々な分野で韓国が日本よりかなり進んでいると思っています。なので、韓国から徹底的に学び、アジア・世界を見据えて挑戦していくロッテベンチャーズの色、ユニークな特徴をきっちり作っていきたいと思います。

また、私のような事業経営経験のある人間が代表に着任させていただいたわけなので、ベンチャー経営者の皆さんが事業で抱える悩みに伴走できるようなパートナーを目指したいと思っています。

 

ーー最後に読者の皆様にメッセージをお願いいたします。

私は今年で65歳になります。

大学卒業後伊藤忠に勤務し、ユニクロでは急成長も経験させていただきました。また自身でキアコンというファンド組成もし、畳み、リヴァンプを創業し、事業会社を何社も立ち上げ経営もしてきました。一番直近ではファミリーマートという大企業の社長の仕事もさせていただきました。このキャリアーの中で過去何度となく失敗もし、成功することもありました。このように、とにかく相当色々な経験をしている人間だと思います。

ですので、私でよければ、是非色々と相談に来ていただけるととても嬉しいです。喜んで皆さんの壁うち相手になりたいと願っています。きっと何らかの形でみなさんのお役に立てると自負しています。

3年間で総額75億円の投資を実行してゆきます。どんな内容でも良いのでぜひ気軽にロッテベンチャーズに相談に来ていただければとても嬉しく思います。一人でも多くの素晴らしい起業家の皆さんとお話させていただけることを心から楽しみにしています!

 

 

 

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著者 伊藤紀行

著者 伊藤紀行

DIMENSION Business Producer:早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。 株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、400F、グローバ、Brandit、他 全十数社。 ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。 著書に、「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」

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