DTx銘柄初の上場 投資家との向き合い方と組織づくり サスメド 上野太郎社長(第3話)

「SUStainable MEDicine」を冠した社名の通り、ICTの活⽤で「持続可能な医療」を⽬指すサスメド株式会社。デジタル医療プラットフォームを活⽤した「治療⽤アプリ開発」「臨床試験⽀援」を軸に急成長を遂げ、2021年には上場も果たした。同社の上野太郎(うえのたろう)代表取締役社長に、起業家の素養、事業成長のポイントなどについて聞いた。(全3話)

ディープテック・投資家との向き合い方

ーーファイナンスについて、過去を振り返って重要だったポイントがあればお聞かせください。

ディープテック企業ならではのポイントですが、足の長い事業をどうやって投資家に理解いただくかが重要です。

いわゆるSaaSのような事業KPI予測が精緻にできるビジネスモデルではありませんし、治験を実施するにはそれなりに赤字を掘っていく必要があります。

この事業構造において早期に収益化を求められてしまうと、本来狙うべき大きなマーケットにアクセスできなくなってしまいますので、いかに事前に長期的なビジョンに賛同いただけるかがポイントになります。

 

ーー定量的には示しづらい部分かと思います。

定量的に完全に証明しきれない以上、いかに定性的なロジックをクリアにできるかが重要です。

明確な課題があって、その課題がDTxという手段であれば解決できる、DTxでしか解決できないこと。

開発パイプラインの選び方とも通じますが、「Nice-to-haveではなくPainkillerであること」を示すことが、投資家にとっても判断基準になるのだと思います。

 

ーー出資後に、投資家とのコミュニケーションで気をつけられているポイントはありますか?

やはりDTxは新しい領域なので投資家の方々も関わり方を試行錯誤されている部分があります。

なので双方、色々とトライできる関係性が重要ですし、例えばエンジニアの紹介にしても、DTxや医療機器システムを作る上でどのようなエンジニアが適しているのかは、継続的にコミュニケーションさせていただきながら軌道修正してきました。

 

ーー上場後にIR面で変わったことがあればお聞かせください。

DTx銘柄としては私たちが初めての上場ケースであったこともあり、単なるコンシューマーアプリとして見られたり、非常にリスクの高いバイオベンチャーのように見られてしまったりと、そもそものDTxについての丁寧な事業説明が必要な状況でした。

単なるアプリではなく、医療のいちプロダクトであること。治験が完了して承認申請している医療手段であること。シンプルにこのことを繰り返しご説明してきました。

上場した後に市況全体が崩れてしまった影響で当社の企業価値も引きずられた部分はありましたが、上場から1年経ち、ようやく事業理解が進んできていることを実感しています。

 

ディープテック・組織づくり

ーー先ほどエンジニア採用について言及されましたが、いわゆるディープテック企業は赤字が続く中で採用に苦戦する会社も多いです。どのような点を意識して人材採用してこられましたか?

特にエンジニアであれば今は引く手あまたですので、やはり待遇面だけでは優秀な人材には来てもらえません。またすぐには結果が出にくい業態でもありますので、苦しい局面でも踏ん張れる人材であることが不可欠です。

そういった人材を採用する上で一番重要なのは、「社会課題を解決する」ことへの共感だと思っています。

私たちの場合は、医療業界の前例を疑い、時には省庁と連携して規制緩和まですることで治験や医療全体を変えていく。そんな桁違いの大きなインパクトの事業を一緒に作れることを訴求してきました。

ディープテックの価値は事業によって社会課題を解決できる所だと思いますので、「この社会課題は私たちじゃないと解決できない」という部分をしっかり訴求することに尽きるのではないかと思っています。

 

ーー組織づくりに関してお聞かせください。採用後、オンボーディングで意識されていることはありますか?

もちろん各部署でオンボーディングはしていますが、部署を超えた取り組みを進めていて、そこがメンバーにとっても面白いポイントかなと思います。

例えばエンジニアも、プロダクトを作ってユーザーが使って終わりではなく、それを臨床開発の試験メンバーや医療現場の先生方とコミュニケーションしながら実際に検証を進めていく部分を見せるようにしています。

部署を超えた連携の機会を見せることが、ひいては仕事の面白さに繋がってくると考えています。

 

ーーディープテック企業では短期的な業績などでは人事評価をしづらい側面があるかと思います。

当社も人事評価に関してはボードメンバーが直接しています。

おっしゃる通りディープテックは簡単に数字が作れるわけでもないし、成果が出てくるのに非常に時間がかかります。

そんな中でチャレンジを推奨していくためにはビジョン・ミッションや行動指針にフィットした行動が取れているかといった定性的目標を重視していくことが大切だと思っています。

 

「持続可能な医療」を目指して

ーー複数のパイプラインを少数精鋭でR&Dしていく組織づくりについてお聞かせください。

結論、社内完結だけでは難しいです。

不眠症の領域は私自身、スペシャリティがあるのである程度は出来ましたが、不眠症の病気ですら外部の先生方と協力しながら開発を進めてきました。

当然ながら、新分野でパイプラインを開発する際は外部の先生方、アカデミアの方々との連携が必要不可欠です。

ここで重要になってくるのは「患者に対して、何で貢献するのか」という共通観点を持つこと。サイエンスの細かな話はもちろん重要ですが、その大前提となる目的をすり合わせることがポイントだと思います。

 

ーー知財戦略で重要視されたことがあればお聞かせください。

知財はサービスを普及させるためのツールで、知財を確保することで事業としての普及を私たちが担わせていただくという感覚です。

この感覚をアカデミアの先生方にもご理解いただく必要があります。

もちろん研究観点では様々な思いや関心がそれぞれありますが、サービスを普及させて「患者に対して貢献する」「持続可能な医療をつくる」という共通ゴールを達成することが大切であり、このゴールを共有することが知財コミュニケーションにおいても重要だと思います。

 

ーー最後に今後の御社のビジョン、戦略についてお聞かせください。

私たちの目標はあくまで「持続可能な医療」です。

ビジョンを実現する上で、不眠症の治療用アプリもその一つのピースではありますが、それだけに止まらず医療全体にとってインフラを提供することが大きなチャレンジだと思っています。

プラットフォーム事業、個別のDTxと普及のためのマーケティング、そしてDTxで生まれるデータの利活用と治療最適化。

DTxだけでなく、医薬品開発の治験効率化とった医療全体にまたがるインフラを提供することで、「持続可能な医療」に貢献したいと思います。

 

 

 

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DIMENSION 編集長

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「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。

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