#志
「社会基盤の最適化」を目指し、生産や配船といった極めて複雑な運用計画に特化した計画最適化ソリューション『Optium(オプティウム)』を開発・提供している株式会社 ALGO ARTIS。株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)の中で AI を活用する新規事業としてスタートし、2021年7月にスピンオフし設立された。同社代表取締役社長 永田 健太郎氏に起業家の素養、スピンオフなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの家弓 昌也が聞いた。(全4話)
”ユニークさ”と”カオスな環境を楽しめる人材”の2軸
ーースタートアップにおいて優秀なメンバーの採用は重要な論点の一つかと思います。特にAIエンジニアの市場価値が高いことを考慮に入れると、優秀な人材の採用は難しいと思いますが、御社ではAIエンジニアをどのように採用しているのでしょうか。
優秀な人材を集めるためのポイントは、会社の中に優秀なメンバーがいること。それはAIエンジニアに限らないと思っています。
例えば、取締役である門脇は一緒にスピンオフしてきたメンバーですが、非常に優秀なだけでなくAIエンジニア界隈の有名人です。実際、彼に引き寄せられて入社した人たちも多い。
鶏と卵の問題にはなってしまいますが、「優秀な人と一緒に働きたい」という動機は強いので、特に最初の一人は非常に重要だと思います。
ーー優秀な人材の獲得にあたって、会社のポリシー等の訴求は必要と感じられるでしょうか。
それは絶対に必要だと思います。
どんなに優秀な人でも、その会社のポリシー、カルチャー、または目指すミッションに共感しなければ、自身の力を発揮できないと思います。
当然能力も大切で、この両方を兼ね備えた人材を獲得するのは難しいですが、そこで重要になるのは企業がユニークであることです。
もし同じような企業がある場合、よりイケてる企業を選びますので、競争は激しくなります。でも「こんな事をやっているのってこの会社だけだよね」となれば、その会社だけに好意を持ってくれる優秀な人材がいるはずです。
今、私たちはビジネスとエンジニアの両方で採用を強化していますが、「なぜこんなに優秀な人が私たちに興味を持ってくれたんだろう」と思うくらいの人材が応募してくれます。
その理由は、私たちの取り組みが唯一無二で、他に類を見ないと認識してくれるからだと思うのです。
ーーAtCoder社が発表した「競技プログラマー就職企業人気ランキング2023」の中で、御社はGoogleに次ぐ2位に輝かれました。それもユニークさがポイントなのでしょうか。
そうですね。
やはり門脇というタネがあって、その結果、多くの優秀な人材が集まり、雪だるま式に人気が高まっていったのだと思います。
ユニークさという意味ですと、元々の競技プログラミングの能力をそのまま活かし、それを社会の価値提供に繋げるという、ユニークな環境が我々にはあります。これが多くの方に刺さった。
また、我々はスターエンジニア自身が採用活動を行います。
優秀な人材を採用することは経営上非常に重要なポイントなので、私だけでなく、取締役の門脇や武藤も全力で活動しています。
ーー具体的にはどのような人材を求めていますか?
優秀な人材は欲しいですが、我々はただ優秀なだけでは採用しません。
カルチャーフィットを重視し、「顧客へ価値を提供することを真剣に考えられるか」、「組織としてパフォーマンスを発揮することを大切にしているか」、そして「正直にビジネスできるか」を注意深く見ています。
また、スタートアップ界隈は多種多様で、フェーズによってやるべきことや雰囲気は全く異なります。
我々の組織はまだ30人程度で、いわゆる組織の成長の壁に直面する前の段階です。これから様々なことが起きるでしょうけれど、逆に言えば、それに挑戦できる環境だと言えます。そこには、事業が素晴らしいかどうかとはまた別軸で、カオスな環境で働けるという面白さもあると思うんです。
正直大変な環境ではありますが、一方で間違いなく成長できる環境なので、そこに挑戦したいという気概がある人は、是非とも門戸を叩いて欲しいですね。
「顧客の価値に向かう」という共通認識
ーーテック系の事業をされていることから、エンジニアが多い組織だと理解しております。組織ではビジネス側の方とエンジニア側の方が対立することがよくありますが、両方が活躍できる環境を整備するために意識していることはございますか。
この点は先ほどのカルチャーの部分と一致しています。
ビジネスとエンジニアが対立する構造は、ビジネス側が「何を売りたいか」と、エンジニアが「何を作りたいか」が一致しない、という形が最も典型的です。
しかし、その対立は結局、顧客の価値に向かっていないことが原因だと思うんです。
顧客の価値に向かうセールス、そして顧客の価値に向かうモノ作りが重要です。我々はそれに合意し、それを追求したいと思う人を採用しています。また採用後も、そのカルチャーをみんなに伝え続けています。
お互いが同じ価値観でコミュニケーションを取ることが重要で、それが揃っているというのがポイントだと思います
ーー現在、ビジネスサイドの採用も進められているとのことですが、どのような人材を求めていますか?
ビジネス側の方に求めるマインドセットは先ほど述べた通りですが、結果として、比較的コンサルティングファーム出身者が多いです。
我々の場合、ドアノックして商品を売るようなライトなサービスではないため、コンサルティングに近い、提案型・課題解決型の営業が求められます。
また、顧客とチームを組んで1年かけて導入するようなソリューションを提供できるプロジェクトマネジメント能力も重要です。つまり、セールスとデリバリーの両方が求められるので、結果的にコンサルティングファームで培った能力が非常に役立ちます。
ちなみにコンサルティングファーム出身の方に私たちの会社に来た理由を尋ねると、「コンサルティングファームで知的な仕事を顧客のために行っているが、最後まで価値創出の実行を手がけられないというもどかしさを感じていたから」だそうです。こういう点も我々の事業の魅力になっているんですね。
一方で、製造業出身の方もいます。
例を挙げると、その方は前職で最近のDXの流れで社内のDXを推進しようとしてみたものの、先進的な技術を持ったエンジニアが社内に十分にいないなどの理由で、何かを成し遂げたくても手段がないという葛藤を抱えていたそうです。
そんな時に、優秀な人材が集まり、かつ強力な技術力を持つ我々の環境に魅力を感じ、入社いただくことになりました。
事業会社の現場を非常に詳しく知っており、コンサルティングファーム出身の人とはまた別の視点を持っているため、そういった人々も我々の会社で活躍する傾向があります。
「採用と組織づくり」についてまとめると、多様な人材を集めながらも、「顧客の価値に向かう」部分は共通させることが大切だと思っています。
(次回に続きます)
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家弓 昌也
名古屋大学大学院航空宇宙工学修了。三菱重工の総合研究所にて、大型ガスタービンエンジンの研究開発に従事。数億円規模の国家研究プロジェクトを複数リードした後、新機種のタービン翼設計を担当。並行して、社内の新規事業創出ワーキンググループに参加し、事業化に向けた研究の立ち上げを経験。 2022年、DIMENSIONにビジネスプロデューサーとして参画。趣味は、国内/海外旅行、漫画、お笑い、サーフィン。
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