#ファイナンス
「Supporting Doctors, Helping Patients.」をミッションに掲げ、国内医師の3人に1人が参加する医師専用コミュニティサイト「MedPeer」を運営するメドピア株式会社。現役の医師・医学博士でありながら、起業家として上場まで会社を導いた、同社の代表取締役社長 石見陽氏に、起業家として重要な素養や、コミュニティサービス立ち上げのポイントを聞いた。(全6話)
トップダウンとボトムアップを使い分けて理念を決める
——御社の場合、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」「クレド」を掲げられておりますが、それぞれの意味合いをお教えください。
それぞれ言葉を「ミッション=存在意義・スタート地点」、「ビジョン=作り上げたい姿・ゴール」、「バリュー=人や組織に対する考え方・価値観」、「クレド=どう行動していくか・約束」と定義しています。
その定義のもとで、「ミッション」と「ビジョン」はトップダウンで決めること、「バリュー」と「クレド」はトップダウンだと誰も納得しないので、しっかりボトムアップで考えることを意識しています。
——それぞれ、どのようなタイミングと方法で定義するのが良いのでしょうか?
「ミッション」は創業初期から必要です。「ミッション」は会社としてのスタート地点なので、これが無いとなんのために会社が存在しているのかわかりません。我々の場合、「Supporting Doctors, Helping Patients.(医師を支援すること。そして患者を救うこと)」がスタート地点です。
一方で「ビジョン」は時によって変わっていく可能性があるものだと思っています。スタート地点は変わらないけれど、ゴールは達成したら変わるし、事業をピボットしたら変わるかもしれないからです。
まとめると、「ミッション」「ビジョン」はいずれも経営陣がトップダウンで作るべきもので、「ミッション」は創業初期に必要、「ビジョン」はタイミングタイミングで変わるかもしれないものだと思います。
「バリュー」と「クレド」についてはトップダウンではなく、自分たちはどういう価値観を持った人が集まっていて、どういう人と働きたいと思っているかを棚卸しして、ボトムアップで作っていくほうがいいと思います。やり方はいろいろあるとは思いますが、社員を参加させながら決めていくほうが良いと思います。
数名の初期段階から「バリュー」や「クレド」を決めてもうまく機能するイメージはありません。弊社の場合も、「バリュー」は5年ほど前の社員が20名くらいのタイミングで定義しました。そこから、「クレド」と呼ぶ行動規範のようなものを作ったのが2年前のことです。
組織制度設計の際に、経営者が常に確認すべきこと
——組織制度設計をする上で意識的に取り組まれていることはありますでしょうか?
組織制度設計に関しては、「自分が医局にしか所属したことがなく、一般的な企業というものを知らない」という、自分が医師だからこそ損している部分だと認識しています。ですが、逆に経験が無いからこそ先入観なく組織を見ることもできるので、会社のステージに応じて柔軟に制度設計を変え続けてきました。
制度設計について議論する前提として、会社としての人に対する価値観や行動規範といった、会社の主軸を定義するのが先決です。なぜならば、人事制度といったものは、それらの会社の軸となる考え方が反映されたものであるべきだからです。
私は経営者として、定性的な「ミッション」「ビジョン」「バリュー」「クレド」が会社として芯がしっかり通っていて、その結果としての制度設計になっているかを常にチェックするよう意識しています。
——会社の主軸となる考え方を組織に浸透させるためには何が重要とお考えでしょうか?
経営者は自分の言うことが重要だと思い込んでいるため、一回言ったら皆わかるだろうと考えている人も多いのですが、それでは絶対に理解してもらえないと思います。むしろ、会社の価値観を浸透させていくのが経営者の仕事なので、何回でも同じことをひたすら伝えるし、いろんな事例を引用しながら伝えていくことが重要です。そして、経営層・ミドルマネジメント層が、同じことを伝え続けること。社長一人から言われるより、幹部が同じ発言をし続けることはとても重要です。
我々は人員規模が急成長しているタイミングなので、この部分は今も課題と考えています。価値観を伝える機会を工夫して設けていこうと思っております。
>第6話「医師を支援すること。そして患者を救うこと」に続く
>第4話「コミュニティサービス作りは「まるで子育て」」に戻る
>メドピア公式HPはこちら
DIMENSION 編集長
「人・事業・組織に向き合い、まっすぐな志が報われる社会を創る」をミッションに、真摯に経営に向き合う起業家に創業期から出資し、事業拡大・上場を支援する国内ベンチャーキャピタル。
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