先達に学ぶ ー第8回 ドリームインキュベータ創業者・堀さんからの学びー

「起業ノウハウ」について

皆様、こんにちは。

国内ベンチャー投資ファンド・DIMENSION(ディメンション)の代表取締役社長の宮宗(みやそう)と申します。私共の起業家向けメディアDIMENSION NOTE(ディメンション ノート)に目を通して頂き、ありがとうございます。

私自身2002年からスタートアップへの出資・支援を行うようになり、累計12社の上場/MBOに携わってきました。また、これまで様々な起業家や経営者と仕事をしてきましたが、経営はある事を行えば必ず成果が出るという単純なものではありません。一方、自分よりステージが上で上手く経営推進・事業拡大されている企業や起業家・経営者の方から「学び」、その内容の「具現化」を継続していれば、成果出しの確度は高められると、多くの起業家を見てきた専門家として確信しています。

2021年4月から、私共DIMENSIONメンバーが定期配信を始めた「起業ノウハウ」では、

  • 起業
  •  増資・融資
  • 組織作り
  • 経営推進・事業拡大
  • 上場

を中心に、取り上げていきます。

 

今回は、私が20年務めた前職、ドリームインキュベータ(DI)創業者・堀紘一さんについて。

堀さんは、外資系戦略コンサルティングファームのボストン・コンサルティング・グループの日本代表を11年間務められた後、2000年に55歳でベンチャーの育成支援を目的にDIを創業。5年4ヵ月で東証一部上場を達成されています。

私は第二新卒としてDIに転職後、幸運にも担当、マネジャー、オフィサーといずれの役職でも堀さんと仕事をご一緒することができ、戦略コンサルティング/出資・インキュベーション/リーダーシップ/営業/組織/経営・起業など、多くのことを学ばせていただきました。

今回は、堀さんとの仕事を通じて学んだ「本質を追求することの大切さ」、「リーダーとして大切な事」の一部をご紹介します。

 

嫌な事でも本質的な経営課題に迫り、顧客企業を変える

2007年春。業界大手企業の全社戦略策定プロジェクトを受注し、私がマネジャー、堀さんがオフィサーとして初めて上司・部下の関係でお客様と仕事をすることになりました。

1か月後、顧客企業の業界・競合・当該社の分析やインタビューが一定進み、抽出した戦略課題仮説をもとにお客様の経営陣と議論できる材料がそろった段階で、堀さんにプロジェクトの進捗報告をしたのですが、そこで堀さんは以下のように言われました。

  •  “君の分析やインタビュー内容、過去~現在のお客様の取り組みを俯瞰してみると、「実行」での目詰まりが目立つ。”
  •  “戦略策定をテーマに発注頂いたが、社長が真に悩んでいるのは、人事・組織じゃないのか?特に、社歴が長く重鎮の〇〇さんがその立場にいると、新たな取り組みをしようとしても、はぐらかされ何も進まないように見える。であれば、この状況でうちと一緒になって全社戦略を作ってもうわべだけで、ほとんど成果は得られない。”
  •  “すぐに社長にアポを取りなさい。組織の構造的課題をまとめた資料を1枚作り、それをもとに社長と議論する。”

 

すぐにお客様である社長と個別ミーティングになりました。その場での堀さんの説明や打ち手(案)の提示、相手の意見の引き出し方も見事だったのですが、もともとのテーマであった戦略策定とは関係なく、その社長は人事・組織を変える意思決定をされました。
社長が真に悩んでいたのは、「幹部人事・組織」>>「全社戦略」だったのです。

多くの企業にとってセンシティブなことの1つは人事・組織なのですが、当時の私はプロジェクトのスコープ外であったため意識が向かず、踏み込むこともしませんでした。
テーマとは関係ない事、相手企業にとって嫌な事であっても、本質的な経営課題に気づいたらズバッと切り込み、逃げず真剣にやりとりして組織行動を促し相手企業を変える。

戦略コンサルティングの仕事の醍醐味を知るとともに、堀さんのお客様との仕事の進め方を間近で体感することで「本質を追求することの大切さ」をしみじみ理解できる機会にもなりました。

ちなみに、そのお客様はプロジェクトの最終報告会で共有した全社戦略も取り入れ、業界で三本の指に入る大手企業として利益成長・事業拡大しています。
当時の社長や経営陣に感謝されたのは、言うまでもありません。

 

豪快な堀さん

もう一つ、堀さんのエピソードをご紹介します。

20年前の2002年。日韓のサッカー・ワールドカップが開催され、夜にオフィスにある大きなスクリーンで一緒に日本戦を観戦していた堀さんから、

  • “サッカーのことはよくわからないが、すごく盛り上がっているな。次の大会は2006年?だったら、それまでに会社で〇〇を達成したら、スタッフ全員で次のワールドカップがあるドイツに観戦に行く。費用は会社で出す。

との爆弾発言が飛び出しました。

その場で、「やったぁ!!」「頑張ります!!」と歓声があがりながらも、「(えっ、本当に行けるの?)」、「(まさか…??)」、「(目標が高すぎる。〇〇は、達成できるわけない…)」と内心思っていたメンバーも多くいたように感じます。

4年後の2006年。

難しいと思われていた会社として高い目標を達成。堀さんの宣言通りスタッフ全員でサッカーのドイツ・ワールドカップ、日本の初戦を現地スタジアムで観られる幸運に恵まれました。会場の熱気は今も覚えています。

 

創業者だからできることかもしれませんが、そうだとしても、まずやらないような大胆なことを打ち立て実現する。しかも、社員全員を喜ばせる形で(当時の経営陣や人事労務は、あまりに無茶なことの実行に、負担を感じハラハラしていたように思いますが…)。

堀さんは、昔ながらの創業社長の典型のような方で、仕事に非常に厳しいのですが、

  • 豪快で常識外、やんちゃな面を持ち合わせ、
  •  周囲・社員に還元する意識も持ち、
  • 相手を説得する力や、実行力が高い


が、リーダーとしての魅力の一つになっていたように思います。

 

私にとって前職で今も強く記憶に残っているのは、堀さんの発言がキッカケとなりスタッフ全員でドイツ・ワールドカップを現地スタジアムに観に行ったことです。

それから十数年たち、今は私も堀さんと同じ創業社長の立場になりました。会社・ファンドとして高い目標を達成したら、スタッフ全員で思い出に残ることを実現するのが私の夢の一つになっています。

 

起業ノウハウ「先達に学ぶ」第1回第2回第3回第4回第5回第6回第7回もご参考にしてみてください。

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