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鈴木修の『スタートアップ組織人事塾』〜メンタリング編〜 “組織の国語を科学する”、急成長するガラパゴス社をメンタリング 第3話

「真摯に経営に向き合う起業家」に向き合い、資金面以外にも多面的な経営支援を提供することを特徴とするDIMENSION。その支援の一つが、DIMENSIONのパートナーによる「組織構築メンタリング」です。 今回は、DIMENSION出資先である株式会社ガラパゴス中平健太 代表取締役CEOに対して、DIMENSION取締役の鈴木修が実際に行ったメンタリングを、御二方に振り返っていただきながら、ガラパゴスがどのように組織改善に取り組んでいるのか、スタートアップで発生する組織課題とその乗り越え方について語っていただきました。(全4話) 聞き手:ビジネスプロデューサー(ガラパゴス担当)中山航介

“組織の国語”とは

中平:
我々ガラパゴスの次の大きな組織テーマの一つは、おそらく「教育・人材育成」になってくるのかなと思っています。

拡大する組織全体の成長のためには、組織を率いるマネジメント層のレベルアップもそうですが、それだけですとかなりマネジメント層に負荷がかかってしまいますので、やはり教育体系をつくって仕組みでメンバーの底上げをしていかなければいけないと感じています。

 

鈴木:
ガラパゴスさんの組織サイズになると、「教育・人材育成」は必須のテーマになります。

その際、いきなり教育手法を議論するその一歩前に、「組織の国語」の領域を整理されてみることをおすすめします。

 

中平:
とても関心があります。「国語」とはどういうことになりますか?

 

鈴木:
社内には、全社会、部署会、複数部署での会、上司と部下の1on1などなど様々なコミュニケーションの場がありますが、それぞれの対話での伝え方や問い方や言葉づかい、そういったことの原則のことを指しています。

それら原則を組織内に伝播させ新たなメンバーにも伝承していかなければいけないと言う意味で「組織の国語」、と私は呼んでいます。

 

中平:
なるほど。「国語」、という単語がしっくりきますね。

 

鈴木:
教育、人材育成が必要になる理由の大きな一つは「求める人材レベルの期待値に対してレベルが到達していないから」ですよね。でもこの理由の根本には「期待値が正しく伝わっていないだけ」という上司から部下への期待値の伝え方の問題=組織の国語の問題、ということが結構あるのです。

スタートアップでフィットする人材は自ら目標を立てて自走できる人材でなければならないしそういった人材を採用すべき、成果を出す人材が多い会社は人材育成プログラムのレベルが高い、それは幻想ですね。

経営目標を達成するためには、経営目標を部署目標やチーム目標、そして個人目標に分解することで一人ひとりが明確に自分の目標を理解することが大切で、個人目標を達成する実行の中に自走的な創意工夫になります。さらには、その個人目標の完遂を前提として、プラスアルファで個人が目標を立てることはもちろんとても良いことです。

ですので、「期待はどんな言葉で表現するのか?」「期待をどんな言葉で伝えるのか?」「どういう言葉で叱るか/褒めるか?」といったような「国語」観点で明確に整理することがまずは大切です。

それにより、上司と部下の期待理解の一致度合いが高まり、それが実行にも影響し、結果として成果にもつながる、ということになります。

 

中平:
「国語」とおっしゃる意味が理解できました。

私なりに解釈してみたのですが、そもそもその「国語」が成立することで、マネジメントで解決できることが増え、教育すべきことは絞ることができるし、教育効率も高まる、ということで合っていますでしょうか?

 

鈴木:
まさに。「国語」が成立するとマネジメントやOJTや1on1が効果的に機能するようになるのです。教育はそれでは身につかないことのみにフォーカスすれば良くなります。

例えば1on1。今回は1on1のディテールは省きますが、たくさんの会社で広まっている1on1はそのスタイルや手法に注目されがちですが、それ以前に、組織に「国語」がしっかりと広まっている状態が必須になりますね。

 

中平:
どうしても体系だった教育プログラムをつくったり、1on1含めてスタイルや手法の策定がメインになったりしがちですが、「どうしてもそれが血肉化されないというか今いち機能しないなぁ」という感覚は、まさに「国語」の部分が成立していないからなのでしょうね。

とてもイメージが湧きました。

 

“組織の国語”で文化をつくる

鈴木:
例えば、ガラパゴスのバリューに「Fail & Grow ~早く失敗、早く成長~」がありますよね。

それを踏まえて1on1では、「最初の5分は直近の失敗を聴くことから始めよう」「メンバーは大小問わず失敗をオープンにありのまま伝えよう」「上司は失敗の何が良かったのかを具体的に褒めよう」「褒める時はこういう言葉を使おう」ということを原則にできると、失敗の言語化が組織のいたるところで行われ、結果的にそれが文化につながり、「早く失敗」というバリューが浸透していく。

それがさらに発展すると、ガラパゴスではどんな失敗を良しとするのか?どんな失敗は駄目なのか?どんな失敗がガラパゴスらしいのか?といった議論も起こるようになり、組織全体の失敗力が高まっていく。

端的に一例としてお話ししましたが、「組織の国語」が具体的に活かされるのはこのようなイメージですね。

 

中平:
わかりやすい。

言語が文化につながっていく。なるほど。

文化やバリューはキャッチーに作ったりしますが、それが仕事やマネジメントや人事評価などになかなかうまく機能しないのは、そもそも日々の中でその言葉が具体的に使われていないので浸透していないことが原因にありますよね。

 

鈴木:
その通りですね。

日々の対話の言葉を変えるといったレベルのことからスタートし、結果的に文化に導いていくという逆流的なに考え方が大切だと思っています。

 

6割が採用力、4割が“最適化力”

中平:
私は人が組織で活躍するための条件は「素質とスキル」に集約されると考えています。採用する時には、組織と近しい「素質」を先天的に持っているか?、必要な「スキル」をどれくらい身につけているか?後天的に今後さらに「スキル」を身につけられるか?といったことを見ていました。

そして、その2点を採用時に見極めさえできれば、あとは、「教育プログラム」があれば人は育つものだと考えてきました。

しかし今日の話をふまえると、人が育つためには、組織に土台として「組織の国語」が必要であるということですね。

 

鈴木:
その観点で少し話を進めますと、私が大切にしている人材活用の考え方の一つに「6割が採用力、4割が最適化力」ということがあります。

ターゲット人材を獲得する「採用力」と、採用した人材を戦力化する「最適化力」。

採用時に経験が豊富で高いスキルを持ったようないわゆる求める人材像とのマッチ度が高い人材を採用しても、なぜか入社後にパフォーマンスしない…ということが多々あります。

そうすると、人材像の見直しが必要だ、見極めのレベルを高めなければ、という論点になりがちです。

中平さんのご経験としては、いかがでしょうかね?

 

中平:
たしかに、離職などが出ると、採用ミスマッチを第一に考えますね。
人材像の明確化や、能力要件の明確化、面接プロセスの見直し、面接手法の向上、そういった点に意識がいきますし、人事にその点の改善のリクエストを出したりします。

 

鈴木:
さらには、経験豊富な人材は新しい環境にフィットしづらい、などの話しまで出てくることもあるのです。もちろん転職者側のアンラーニングの課題もあることは確かです。

ですが、採用した人材がパフォーマンスしなかった原因は、採用自体にあるのではなく、採用後の会社側の環境が原因であることが多いのが現実です。

採用力を強化し、優秀な人材を採用さえすれば、あとはその人材は優秀なんだからしっかりパフォーマンスしてくれる。それは幻想です。

いかに高い能力を保有し文化に合うキャラクターだとしても、その能力やキャラクターをしっかりと発揮させ活かすために、仕事や仲間や文化に溶け込ませるための努力を会社側はしなければなりません。

どれだけ採用でマッチング度合いを高めてもそれだけでは期待値に対して6割のパフォーマンスしかでない。それくらいの認識を持ち、採用後に会社に仕事や仲間や文化にフィットさせる=「最適化」を強化することが大切ですね。

 

中平:
「最適化力」のポイントにはどんなことがありますかね?

 

鈴木:
いわゆるオンボーディングのプロセス設計は各社様々な取り組みをされていていると思いますが、実は当たり前のようで疎かにされていたり曖昧にされていたりする大切なことがあります。

入社後の初期の期待値の伝達と、その後の実行へのフィードバックです。

期待値が明確に伝わり、良いところ悪いところが明確にフィードバックできていて、定期的に評価がなされている。この「期待・フィードバック・評価」、特に期待とフィードバックが明確にできていて、それを本人が明確に理解し合意がとれていれば、8割の人は目標達成してくれると考えています。

オンボーディングはそのプロセスにおける様々な施策に目がいきがちなのですが、実は大切なことは当たり前の「期待・フィードバック・評価」の対話にあるのです。

この「期待・フィードバック・評価」は、先ほどお伝えした「組織の国語」の観点でもありますね。

結果的に、「最適化力」を上げることは、採用できる人材の多様性を高めることにもつながりますし、振り切った言い方をしますと「凡人でも活躍できる会社」になるわけです。

「採用力と最適化力」、言い方を変えると、「マッチングとフィッティング」、これをセットにして人的資源の活用最大化を目指し強化していかなければいけません。

 

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